#8 自己理解を促進する「メタファー」の力
ワークショップデザイナーの相内洋輔です。数日前、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム(WSD)を受講したばかりの同僚と1時間ほどワークショップ談義をしました!
「自己理解のワークショップを提供していきたい!」という気持ちが高まっているとのことだったので、私が過去に実施してきたワークショップを10個ほどご紹介させていただきました。
例を挙げるとこのような感じです。
お互いコーチングのバックボーンを持っているどうしだったので、話が大いに盛り上がり、とても楽しい時間でした!
中でも同僚が一番興味を持ってくれたのが「あなたの時間はいま何時!?」という時間のメタファーを活用した自己理解ワークショップでした。
そう。メタファーって、自己理解を深める切り口にぴったりなんですよ!
時間の概念をお借りしたセルフチェック
「あなたの時間はいま何時!?」は現在のコンディションをセルフチェックしていただくために作ったワークショップです。
時間という概念をお借りして自分を表してみることを通じて、現在地を明確にし、望ましい未来を実現するためには何が必要か? をシンプルに考え整理する
というコンセプトでデザインしました。
簡単に流れをご説明します。
例えば、大きなプロジェクトのローンチを控えていて、準備を重ねてきた人がいたとします。
そこから「大イベントが始まる前なので、時間で表すとしたら朝7:00かな?」と連想したとしましょう。
数時間後のGoodシナリオは、円滑にプロジェクトが進行すること。Badシナリオは、トラブルの多発でうまくいかないことでしょうか。
とすると、「丁寧な最終確認や、関係各所との緊密な状況共有などが必要だ」というポイントが見えてきて、理想の未来の実現へ、より強く意識を向けることができるようになるわけです。
だいぶ端折って書きましたが、大まかに言えば、こうした手順で自己内省を深めていただくイメージです。
自己理解は具体と抽象の行き来から深まる
突き詰めると自己理解のワークショップは、濃淡や表現の差はあれ、
① 今の状況ってどうですか?
② 未来ではどうなっていたいですか?
③ そのために何をしますか?
の3点セットを中心に構成されることが多いと思います。
ですが、これらの質問は抽象度が高すぎるので、よほど準備が整っている人以外には、そのまま投げかけてもなかなかうまくいかないんですよ。
私は、ワークショップで参加者に自己理解を深めていただくには、思考のトリガーとなる切り口をご提供して、具体的な思考と、抽象的な思考とを行ったり来たりできるようにデザインすることが、とても大事だと思っています。
例えば「今の状況ってどう?」と問う代わりに、「最近の状況を色で表すとしたら何色?」と問うてみる。
こうすると人は、① まず最近の出来事(具体)をサーチし始めるんですよね。
それから、② 最近の出来事を束ねると、どんな自己評価になるか(抽象)を包括的に考え、
③ 色が持っているイメージ(抽象)と、最近の状況の自己評価を重ね合わせていきます。
最近の出来事という具体的な事象から始まり、次第に思考の抽象度が上がっていく様子、お感じいただけるでしょうか。
当日のテーマに沿って、こうした仕掛けを無数にデザインできると、参加者にとって優しく、かつ有益なワークショップになりやすいと思うのです。
自己理解・自己開示の強要はNG
ところが残念なことに、中には乱暴な自己理解ワークショップを企画・運営する人も少なくないんですよね。
私は以前、とある教育関係者の方が、学生の方々に向けた自己理解ワークショップを提供する場にご一緒させていただいたことがあります。
その方は「学生なんて自分のことを表現できないんだから、胃の中までぐいっと手を突っ込んで、思っていることを引っ張り出させないとダメだよ」と自信満々に仰っていて…。
私はけっこうショックで、開いた口が塞がりませんでした。
確かに、個々人が普段なんとなく思っていることや、胸の中にしまっていることを短時間のうちに表現してもらうのは、そう簡単ではないです。ましてや直線的な問いーーー「今の状況ってどうですか?」「 未来ではどうなっていたいですか?」等の場合は尚更です。
でも、「主体的な参加者どうしが、他者との協働を通じて学び合う場」というのがワークショップの理念ですから、無理やり自己開示を強制するのはプロとしてのあり方ではないと思うのですよね。
触れた瞬間に「面白いことが起こりそうな気がする」「何か新しい発見が生まれるかもしれない」と思えるメタファーや仕掛けがあれば、参加者は探究の旅を自然と楽しんでくださるものです。
メタファーは人生観
ここまで書いてきたこととの親和性がとても高いので、最後にご紹介させていただきたい一冊があります。
瀬戸賢一さんの『日本語のレトリック 文章表現の技法』です。
「日本国民は全員読んだ方が良い!」と思うくらい、私はこの本の大ファンなんですけれど、今日ご紹介するのは「隠喩・・・類似点を見つける」の章。つまりメタファーのことです。
いかがでしょう?
まず「人生観とは、隠喩観です」という表現の切れ味が凄まじいですよね。
そのうえで、この文章を味わっていただけばいただくほど、隠喩(メタファー)がいかに実態を捉えづらい抽象的な観点を、自分ごととして手触りのある形に引き寄せる力を持っているかを、感覚的にご理解いただけるのではなかろうかと思うのです。
そして、自分を表すメタファーを発見できた時には、自然とパラダイムシフトが起こり、新しい世界の扉が開くことを!
まとめ
ということで、今日は自己理解を促進する「メタファー」の力というタイトルで記事を書かせていただきました。
私はこういうワークショップを世の中にたくさん届けたいし、こういうワークショップをデザインできるワークショップデザイナーが増えることに貢献していきたいんですよ!
なので、この記事が読んでくださったあなたのヒントになれば幸いです。
ワークショップデザイナー
相内 洋輔
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