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育児・介護休業法の改正から3年 男性育休の「今」を探る①

こんにちは。ワークシフト研究所の広報担当です。

前回こちらの記事では、育休取得を希望する男性、実際に取得する男性がそれぞれ増えていることをご紹介しました。

育休は、育児・介護休業法で定められる両立支援のための制度です。配偶者が専業主婦(夫)である従業員も取得できることがポイントです。(詳しくは厚生労働省の両立支援のひろばをどうぞ)

取得は男女ともに任意で、定められた期間内に各家庭の事情に応じて取得できます。

男性が育休を取得する場合、例えば妻の産褥期(出産から6~8週間ほど)に合わせたり、妻が職場復帰をするタイミング、あるいは専業主婦の妻が再就職をするタイミングに合わせて取得することで、妻の負荷が高くなる時期を夫が支えることができます。

なぜ近年、男性の育休取得が推進される状況になっているのでしょうか。

なぜ男性育休が推進されるのか?

厚生労働省の調査(2021年)によると、夫が家事や育児に割く時間が長いほど、妻が仕事を続けたり、子どもを2人以上迎える割合が高くなることが分かっています。

男性の育児参加と女性の活躍は表裏一体となっていますが、実際のところは無意識の性別役割意識により、女性のほうが労働時間を調整し、より多くの時間を家事や育児に費やしています。

例えば、栃木県の調査によると、夫婦の家事分担は、自身が7割以上を負担しているという女性の回答が全体の8割近くを占め、男性より女性の方が家事分担に不公平感を覚えています。

総務省の調査によると、6歳未満の子どもがいる共働き世帯では、1日平均の家事・育児時間は女性が6時間32分で男性の1時間57分の3.4倍に達しています。

前回もご紹介したように、あらゆる方向から、男性も育休を取得することが後押しされているように見えます。が、最新(2022年度)の厚生労働省のデータでは男性の育休取得率は17%。何が男性育休の取得を阻んでいるのでしょうか。

男性育休を阻む要因

男性が育休を取得しない理由を調べてみました。

「たまひよ妊娠・出産白書2024」によると、父親が育休を取得しない理由の上位に「仕事の代替要員がいない」、「職場の雰囲気が休みにくい」、「業務量が調整できない」といった理由がありました。

他にも、同僚に業務を引き継ぐことに抵抗がある職場に迷惑をかけるといった理由や、収入減、キャリアが中断してしまう出世レースから外れてしまう、という不安もあるようです。

「男性も育休を取得する時代」――ですが、この流れについていけない企業、全社的に意識が浸透していない企業もまだまだ多いようです。

育休を取りたい、と言った社員にこんな言葉を投げかけていませんか?

(図1)男性部下が「育休を取りたい」と言ったら?上司によるNGワードの例


育休をきっかけに働き方を変える男性が増えている。
あなたの会社は大丈夫?

公益財団法人21世紀職業財団の「男女正社員対象 ダイバーシティ&インクルージョン推進状況調査(2022)」によると、20代では83.2%、30代では77.4%と多くの男性が育休取得を希望しています。

こちらのNHKの記事で紹介されている転職支援サービス会社では、転職を望む父親からの相談が最近特に増えているそうです。

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ここで、上であげた「男性育休を阻む要因」を大まかに整理してみます。

すると、男性育休を阻む要因は、会社が仕組みとして解決すべき問題個人が考え方を変えることで解決できそうな問題におおむね二分することができました。なお、収入減への不安については、こども未来戦略方針により、育児休業手当金の支給額が、現在の67%から全額相当まで引き上げられる見込みです。

(図2)男性育休を阻む主な要因

あなたの職場では、会社(マネジメント)が解決すべき問題をそのままにはしていないでしょうか。仕事と育児を両立させたいと思っている優秀な人材が、変わらない職場に見切りをつけて静かに退職の道を選んでいないでしょうか。

2025年度からは、従業員が300名を越える企業に育休の取得状況を公表することが義務付けられます(従業員数1,000名以上の企業は2023年度から実施済み)。結果いかんでは、特に若い世代の採用にマイナスの影響が出ることが容易に想像できます。

少子化で人手不足が声高に叫ばれる昨今、男女を問わず、仕事と育児を両立させたいと考えている従業員への理解を深め、組織にダイバーシティの意識を根付かせることが急務となっています。

厚生労働省のイクメンプロジェクト推進委員会で委員を務めている弊社 所長の国保祥子は次のように説明しています。

「男性育休は職場に業務効率化、人材育成の機会をもたらします。
育休取得者の不在を気合で乗り切るのではなく、
職場改革のきっかけであると捉えて対応することが大事です」

男性育休者・管理職版 育休プチMBA動画講座より

これまで「働きやすさ」や「仕事と家庭の両立」といったテーマは女性を中心に語られてきましたが、女性が両立しにくい組織は、そのままだと若い男性もいなくなります。会社を選べる優秀な層は、両立しやすい環境を整えているなど、働きやすい会社を選んでいきます。優秀な人材を採用したければ、両立できる会社をつくるのがまずは着手ポイントとなります。

岐阜県の「男女共同参画フォーラム2022」より

男性育休の「今」。次の記事では、男性育休に対する企業や自治体の取り組みをご紹介します。


ワークシフト研究所からのお知らせ

育休プチMBA 父の日スペシャル回を実施します

弊社が運営する育休者向けのセミナー「育休プチMBA®」にて「男性育休あるある」を考える父の日スペシャル回を6月29日(土)に開催します。
男性育休を取りたい当事者の方も、男性育休に備えたい企業の方も、どなたさまもぜひご参加ください。

男性育休にまつわる皆さまの声をお聞かせください

ワークシフト研究所では、男性育休に関するアンケートを実施しています。育休と仕事と家事・育児の両立についてなど、皆さまのご意見をお聞かせください。

こちらのフォームから回答いただけます。


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