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ONE PIECE FILM REDはアニメ邦画最高レベルのクオリティ【ネタバレ】

はじめに

私はONE PIECEは、読切作品のROMANCE DAWNから魚人島まで毎話欠かさず週刊少年ジャンプで読んでいました。
(その後ジャンプ卒業と同時に読んでいません)
ですからビッグマム海賊団とか、ジンベエの能力とか、その辺りの事前知識がありません。ありませんが、それでも困る事なく楽しみました😊

Amazon Prime Videoに最新作がやって来たという事で視聴。これが人生初めての劇場版ONEPIECEです。

以上を踏まえてお読み頂ければと思います。

ミュージカル映画風の構成

冒頭見てすぐに思った事は、この映画は最初にAdoさんありきで考えられたんだなと。劇中歌は、4曲も5曲も歌われる。その時々のウタの心情に合わせたもの。ただそれがミュージカル風である事は、歌をがっつり聞かせるわけではなく、歌の中にセリフらしきものがあるわけでもなく、あくまでも物語の中で開催されるライブで歌っていたり、BGMになっていたりすると言う状態にとどめられています。

パラレルワールドだから世界観が現代っぽくってもセーフ。ONE PIECEの、中世のような時代設定とはかけ離れた、我々現代の文明に近いようなウタの世界も、異世界という設定なら許されるということかと思いました。

ストーリーは冒頭とは意外な方向で収まる

物語が中盤に進むにつれ、思い始めた事は、「仮想現実に逃避する事への道徳を問うのか?
辛い事があったって、人生は素晴らしいと
ルフィが叫ぶのか?」などでしたが、そういった観念的な事には一切触れず、最後はただただ悲しい運命の少女と父親の絆、他の一部のメンバーについても、離れていても絆は繋がっているということが作品の演出を通して伝えられました。道徳的なテーマをどう処理するのかばかり気になっていましたが、ONE PIECEが得意とする分野である、人と人との絆を丁寧に描いており、仮想現実へのハッキリとした否定はしなかった(ずっと仮想現実じゃ困る人もいるという描写だけ)のは賢明だったように思います。

この映画と全く関係ないのですが、仮想現実を舞台としながらリスペクトもなく、児童虐待という重いテーマを最後に露呈しながら乱暴に片づけた映画がありまして…私はその作品を機に、この映画の監督作品は不快だから2度と見たくないと固く決意したくらいです。そういった作品もある中で、踏み込まないのは賢いと思いました。

考察

新種の伝電虫はYouTube

ウタが全世界に知られるきっかけとなったのは、新種の映像伝電虫です。
根拠はありませんが、これはYouTubeのことのように思えます。Adoさんがそうでしたから。

引き寄せられてしまった悲しき運命
ウタとトットムジカ

物語の舞台の島の名前がエレジアという時点で
勘のいい大人はこの島には100%何かあると察知します。英語でelegyは哀歌という意味です。

エレジアにトットムジカの覚醒条件が伝承されていなかったのは理由があると用意に想像出来ます。悪用の禁止です。方法を知らなければ誰も覚醒させる事は出来ないのです。

ウタがどのタイミングで(生まれて間もなく?しばらくして?)ウタウタの実を食べたのか分かりませんが、赤ん坊の時にはすでに能力者だった方が説明が付きます。何者かウタウタの実の恐ろしい能力(トットムジカの話を抜きにしても、かなり恐ろしく強い能力です)を知っている者が、世界の平和のためにと断腸の思いで赤ん坊を宝箱に置いて行った事もONE PIECEの世界では想像に難くありません。

しかし、ウタは偶然にも赤髪海賊団によって命拾いし、偶然にもエレジアに巡り会ってしまいます。これはもう悲しき運命としか言いようがありません。

この真実を知っていたエレジア国王ゴードンの苦しみも涙を誘います。トットムジカの発動条件の事を知っていながら、音楽家としてその素晴らしい楽譜を捨てる事ができず、ウタが知らなければ良いと、問題を先送りにしたツケが回って来たのです。これもなかなかリアルな経緯で、ONE PIECEならではの、大変人間らしいドラマです。

幸せな世界は、皆殺しの罪滅ぼし

ゴードンの思いとは裏腹に、ウタは伝電虫によって真実を既に知っていました。ウタの世界の中で天竜人のお付きが殺されると、ウタは鬼の形相で必死に手当をします。もう自分のせいで誰も死なせたくないのです。その想いは誰も哀しい思いをしない世界=ウタの世界に繋がっています。

力の入り加減・抜き加減が激しかった
アニメ表現

・バトル描写は最高の力作

流石はONE PIECE!テレビアニメなどですでに培われて来たバトルシーンの迫力ある描写を、何度も堪能できて幸せでした。これはスクリーンで見るべきでした。

・ラピュタのロボット兵

エレジアの遺跡にはトットムジカを守るためか、古代の殺戮ロボットが攻撃を仕掛けて来ますが、これがラピュタを見た事あるならば、もうロボット兵にしか見えません。姿はもちろんのこと、頭からレーザーを放ちすぐさま周辺を破壊する描写が、もうそのままです。

ラスボスのまどかマギカ感

トットムジカの描かれ方は、まどかマギカの魔女のようなファンタジックなものでした。実線でなく、クレヨンで描いた落書きのような描き方は、ONE PIECEらしくはありませんでした。ダークで、ファンタジーなウタの世界には釣り合っているとは思いますが、少々掛け離れ過ぎた気がしました。

・トレース疑惑

コビーの顔がルフィとまるまる同じように見えたのですが、いつもこうなんでしょうか?いくら似てるとはいえ、ルフィの顔を写して髪型を載せ替えただけに見えてしまいました。彼には顔に個性はないのでしょうか?

ハート海賊団の熊さん(ベポ)のガチヲタ演出が寒すぎて凍りついた

ベポがウタのガチヲタで、背中にピカピカの電飾を纏っており、それが時々陽気なジングルと共に意図しない場面で開く…というくだりを何度かやりますが、これが実に寒い。シリアスにならないといけない場面でこれが突如テロの如く割り込んでくる。そして面白くないのでした。

歌はもう文句のつけどころがない

Adoさんの表現力には脱帽するばかり。
クレイジーな雰囲気、ダークな雰囲気の曲はもちろん、エンディングのバラードもただただ素晴らしい。誰かと思いきや秦基博さん作曲。さすがです…!豪華な作曲陣にも脱帽。

グッときたセリフ

"オレ達の娘" …赤髪海賊団のセリフ。
俺の、ではなく俺たちの娘という言葉自体が
なんだかとても長い間聞かなかったセリフで、
社会全体で子育てするみたいな感動を覚えました。これは、完全にワーママの立場だからですね。

ビジネス

流石はONE PIECE。予算の次元が違うと思いました。これは映画館で1800円出しても後悔しないと思いました。スタジオジブリとか、新海誠監督とか、エヴァのカラーとかの次に規模がでかいのでは。なんたって最後の最後で麦わら海賊団のなかなか手の込んだ衣装チェンジ。そのままバトル。とにかくバトルシーンに全身全霊をかけていて、力の入れどころが分かっているというのがまた評価できる。日本の映画でこれだけのクオリティはなかなか無いので、貴重です。

総合評価:4.5

一部アニメーターの誇り・プライドを疑うようなマイナス点もありましたが、メインストーリーの良さ、バトル描写の迫力、歌の素晴らしさで補って余りある作品でした。ONE PIECEからしばらく離れちゃってる人でも、ライトな気持ちで見られます。

今年はテレビの代わりに沢山の映画を見ようと思っています。
お読み頂きありがとうございました。

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