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“I’d love to see you” もう会えない弟たちに、伝えたかったこと。(ブライアンウィルソン『約束の旅路』を観て)

天才ブライアンウィルソンの素顔

じぶんの人生で影響を与えた人物は誰か?

そう聞かれたときに、ブライアンウィルソンの名前は絶対あがる。

中学生の時に「素敵じゃないか」と「アイゲットアラウンド」があまりにも好きで、1週間ずっと買ったばかりのiPodミニ(知っている人は、ほとんどいないかもしれない)でリピート再生していた。


人生の喜びを、美しいハーモニーで歌うビーチボーイズが、好きだった。

そのリーダーだったブライアンウィルソンが、彼の音楽がとにかく大好きだった。今もその気持ちは変わらない。

そんな彼のドキュメンタリーが、日本でも上映されると知って、早速前売り券を買った。

そして、先日日比谷の映画館でついに観ることができた。

その時に感じた事を書いてみたいと思う。

あふれる弟たちへの愛情

映画を見ている途中で気が付いた。

この映画は、ブライアンウィルソンの単なる自伝的映画ではない。

もちろん、ブルーススプリングスティーンも、エルトンジョンも、出てくる有名人たちは、ブライアンを天才と称して、これでもかというくらい「べた褒め」する。

ただ、そんな大きな賞賛とは裏腹に、ブライアンは、何度も兄弟について語る。

まずは、三男であるカールについて。
ブライアンは、ペットサウンズの頃から、情緒不安定な状態になる。

そんなブライアンがドラッグと酒でダメになった時に、三男であるカールがいかに前向きに物事に取り組んでいたのか。

そして、自らの意思で楽曲のプロデュースをはじめ、クオリティが高い音楽あを作れるようになったこと。

それをブライアンは、何度も「誇りに思う」と語った。

名盤『ホーランド』を制作する際に、カールはブライアンに「プロデュースをしたい」と言った。ブライアンは、「やってみなよ」と背中を押した。その結果、素晴らしいアルバムができた。大切な弟が結果を出した時の喜びはひと塩だったのかもしれない。

次男であるデニスについては、豪快な酒飲みで、何度も楽しい時間を過ごしたこと。

そして、ドラムがうまかったことをブライアンは語った。

そして、彼のソロアルバムを自宅で聴くと、本当にいい音楽だと感動していた。

映画では彼が亡くなったことについて語るインタビュー映像もあり、胸が痛かった。

(芸能人は、華やかさばかり目が行きがちだけど、こんな個人的なことまで、公で話さなきゃいけない難しさもある)

明るく切ないハーモニー

ブライアンの人生は、決して平坦なものではない。ビーチボーイズの成功から、リハビリの日々、カムバックしてからの日々。坂道下り坂、良いことと悪いことがぐるぐる回って、色とりどりの人生だ。

特に彼の人生で大切だった弟たちが、自分よりも早く亡くなったことは、胸が痛い。次男であるデニスは、39歳で亡くなった。三男であるカールは51歳で亡くなった。

ゴッホの悲劇的な人生を想い、人々が彼の作品に感動する。

それと同じように、ビーチボーイズの作品を聴くと、切なさを感じてしまう。

人生の喜びを明るいハーモニーで奏でる音楽と、喜びも苦しみも噛み締めて生きてきた彼らの人生。

その事を思うと、ビーチボーイズも、ブライアンの楽曲もより胸に沁みてくる。

ブライアンは、ビーチボーイズが愛された理由として、「シンプルに人生の喜びを歌ったこと」と語った。

どんなに苦しいことや悲しいことがあっても、ブライアンは今も音楽を作る。コンサートをする。人々に作品を届け続ける。

「素敵じゃないか」
1966年にこの曲がリリースされてから、半世紀以上。さまざまな経験を経て歌う姿をYouTubeで見つけた。彼の人生を知れば知るほど、以前にも増して、この楽曲が美しいと思うようになった。

最後に

『約束の旅路』を観て、なんで弟たちの話だと思ったのか、映画の中で感じた事は先に述べた。

家に帰って、タイトル曲である『約束の旅路』の作者を見て驚いた。

これは、ブライアンの作品ではないのだ。

カールとジョンリレイの共作だったのだ。

それを知って、改めて、弟たちへの愛がたっぷりの映画だったと思ったのだ。

I’d love to see you.と歌うブライアン、とても素敵でした。

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