ことばの発達を支える基盤 4)社会的相互作用

今回は社会的相互作用についてお話したいと思います。

なんだか難しい「社会的相互作用」ということば、みなさんはどのような意味をイメージしますか?

Wikipediaには、

人々が状況に意味を持たせ、他者が意味しているものを解釈し、それに応じて反応する事象

とあります。

なんだか難しく書かれていますが、いわゆる「対人関係」や「コミュニケーション」をイメージすると馴染みやすいかもしれません。

ただ隣に座っているだけ、道ですれ違っただけでは相互作用は生じません。お互いの働きかけがありお互いに影響しあうのが対人関係でありコミュニケーションです。

対人関係やコミュニケーションというとことばを使ったやりとりを想像しがちですが、まだことばを話す前の段階の子どもでもジェスチャーや指さし、表情などを使って豊かなコミュニケーションを成立させ対人関係を構築しています。

例をあげて考えてみましょう。生後9ヶ月くらいになると指さしがみられるようになります。子どもの指さしに対して、私達はどのような反応をするでしょうか?子どもが手の届かないところにあるおやつを指さしているのを見たら、おやつをとってあげるの人がほとんどだと思います。

なぜ私達は子どもの指にそのものに注意を向けないのでしょう。それは、子どもはおやつが食べたいから指さしているのだろうと子どもの行為の意図を推測しているからです。指さしという子どもの行為が意味しているものを解釈し、それに応じて反応しているのです。

このような場面の中で、大人は「おやつ」「食べたいの?」「取ってあげるね」「どうぞ」などの様々なことばかけを子どもに対して行うでしょう。子どもはやりとりを通じて、大人からかけられたことばと事物や行為とを結びつけことばを学習していきます。

このように、社会的相互作用はことばの発達とも深く関連しているのです。

社会的相互作用に障害が認められるのが、自閉症スペクトラム障害(ASD)です。他者と関わろうとしないという印象が一般的には広がっていますが、やりとりしたがるものの相手の意図の読み取りがずれてしまう場合や、適切な行動を選択できない場合も社会的相互作用の障害に含まれます。

ASDのお子さんは、大人と場面や注意を共有しにくくことばを学習する機会が少ないことや、他者とコミュニケーションを取りたがらないことなどが影響し、ことばの発達が遅れてしまうことが多いようです。

ことばを教え込もうとせずに、まずは大人と一緒に遊ぶことが楽しいと気づいたり、遊びや日常生活の中で気持ちを共有したり、やりとりのベースになるものを育てていけるとよいですね。


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