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円筒型の宇宙

兄から半ば押し付けられた帽子には、油っぽいにおいとツンとする汗のにおいがした。どうせ押しつけるなら洗濯してからくれたらいいのに。
断りはしたのだけど、「値打ちもんだぞ」だなんて嘘に騙されるわけもなく、勢いのまま受け取らざるを得なかった。

でも、ちょっとだけ気に入っているところもある。それは円筒型の内側を覗けば現れてくるんだ。真昼だろうと、分厚い布地の破けた穴が星がチラチラと瞬いて、ぼくはその円筒型の宇宙を見つけたときにすごく気に入ってしまったんだな。

「からだわるいの?」
「いや、星を見ているだけなんだ。見るかい?」

小さな女の子が、興味深く帽子を覗く。それは兄弟や親にからかわれ、見上げる顔に帽子を被せられているみたいでおもしろかった。それになんだか、無垢な遊びを見ているようで可愛らしくもあった。

「いい」
「星は見えなかった?」
「くさい」

それだけ言うと、女の子は走り去っていった。すこし悪いことをしちゃったかもしれない。それになにより、自分がくさいと言われたようですこし悲しくなっちゃった。

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