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シリコン製の山を下る悪魔

 何か報われない夢を見て、なんとなくやるせない気持ちになった。こぼした牛乳をぞうきんでふき取り、それを飲む夢だったんだ。しかもそれは、誰かに強制されたものでなく、夢の中の自分が自発的にやったんだ。
 どうしようもない、そんな言葉が似合う状況だったね。朝起きた時には、涙なんか流して、これはなんだって思ったもんだよ。

「シリコン製の山を下る悪魔は、雑草に恋をした」

 夢を見ているとき、誰かにそうささやかれたような気がした。ぼくはドキドキしながら目を開くのだけど、目に映るのはいつもの平凡な光景で、なんてこともない穏やかな朝なんだ。目が覚めたら世界がまるきり書き換えられていたなんてことは望まないけれど、書き換えられたと思った世界が本当は何も変わっていなかったって知ることも望んでないんだな。
 どうせなら、面白い夢を見たかったものだ。機織りをする像が、ギター弾きのラマと友達になるようなやつとかさ。うんと暴力的なものと、怖いものに関しても構わないんだ。ただ、そういうものを見てしまったとき、ぼくは目を覚ますけどね。構わない、本当に構わないんだけどね。



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