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ひつじにからまって

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ひつじにからまっているものがたりたち
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#木陰

手を伸ばしても

手を伸ばしても

手が伸びて掴めたら嬉しく思う。
けれど、ぼくの足元は日陰ばかりで何もない。石くらいなら掴めるだろうけど、今までできてなかったから難しいのだろう。きっとできないかもしれない。

水を飲むことはできるけど、水をすくうことはできない。楽しい時間も、子供達がぼくの足元で歌って踊るばかりだ。それどころか、たまにぼくに何かを投げつけたり、祭りになれば痛めつけたりする時もある。

「あったかいね」

小さな女の

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木陰にて、歌詞のように

木陰にて、歌詞のように

汗の書き方に失敗なんかないって、ぼくらは太陽に身をさらした。
どっちが先に言い始めたのかなんて覚えてないけれど、疲れたときは一緒だったね。

ぼくの服がおろしたてと知っていながら、君は木陰に座ろうだなんて言い始めるんだ。まいったよ。きっと君がにやついているんだってわかっていたけど、ぼくは拒めなかったな。

「あんまり日焼けしているのだから、気にすることもないでしょ」

日に焼けるといけないからって

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