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六甲山の木材は使えるか

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林業の存在しない六甲山の森の木をどうやって流通させ、森林として循環させていくことができるかの無謀な取組み
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人の名前と木の名前

先日、某女子大の学生が木を使った研究をやりたいとのことでゼミの先生と一緒に僕の工房であるMAR_Uを訪れてくれて打ち合わせをした。 大学生女子ばかりが5人、ひとりひとり自己紹介をしてくれたのだけど、メモでも取ればそらいいのかもだけど、どうしても覚えられない。まあ覚える気がないと言われればそれまでだけど、年のせいにはしたくはないが覚えられない。 数日経って、今後の進行などお礼も兼ねて先生の方にメールを送ろうとして、学生の全員の名前でも覚えていて書き込んだりすれば先生も「すごい

人はなぜ木に憧れるのか

 先日、YAMAPの春山さんにお話しを聞く機会があって、どれも面白い話だったんだけどその中でも「巡礼」の話がとても印象に残っていた。  『人間の最たる特徴は何かと考えた時に、「巡礼」というものが人間の特徴をよく表していて、その特徴には長距離を二足歩行できる「歩く」ということと、もうひとつは誰かを想うとか自分の存在を超えて何かを願うとか「祈る」ということができる存在て人間の特徴だなと思って、「巡礼」を追っていくことで人間とは何かとかを考えるきっかけになると想う』と。  その

地域材で椅子をつくるということ

安藤忠雄さんの「こども本の森 神戸」の椅子を地域材でつくりました。 僕は、海外の輸入建材の商社から2013年に独立し、地域資源としての木材をものづくりを通して活用し、地域の経済の中で循環するような木材流通の仕組みを作ろうと、様々な活動をしてきました。 事業所を構える神戸には六甲山という山系があり、全国的にも知られている山ではありますが、林業としての位置づけは過去の歴史にはなく、元々防災上の観点で明治後半に広葉樹を中心に植林された樹々で覆われています。そんな六甲山も明治の植

本当のトレーサビリティてなんだろう

 「里山からコナラスツール」が完成しました。約半年間をかけてみんなで作業してきました、里山広葉樹活用プロジェクトの一つの成果として、「顔の見えるプロダクト」のプロトタイプが完成しました。  今回のプロダクトは、デザイン及び製作を馬場田くんと池内くんのMAR_Uのメンバーが担当してくれました。  馬場田くんは、コナラのペーパーコードスツール。コナラの特性である強度と粘りを活かして、出来る限りフォルムを細くしたスッキリしたデザインになっています。またコナラの表情の重厚感を軽快にす

神戸市灘区春日神社の樹齢600年の大楠をレスキューして、ご近所のカフェのテーブルやベンチになった話。

「森とか木とかが、点と点で繋がって人が集まる場になった。」 ずっとこういう仕事がしたいと思ってやってきたことができた仕事でした。設計をされた三木 夕渚さん、ありがとうございました。 (2021/8月のフェイスブック記事から) 樹齢600年とも言われる灘区春日神社の神前の大クスの大枝をレスキューしました。知り合いを通じて兵庫県樹木医会の河合会長からご相談を受けまして今回引き受けました。 県内一の大クス(県指定天然記念物)で大木が故に様々な難局を乗り越えて現在に君臨され、

山とまちはどう繋がるのか

神戸市市立名谷図書館の内装デザインにまつわる什器や家具、インスタレーション的なものを含め、六甲山材を使った制作を担当させていただきました。 きっかけは2020年5月。デザイナーの石丸耕平さんからご連絡をいただいた。石丸さんとは前職時代からのお付き合いだったのだけど、久しぶりの再会だった。 インフィクスという関西ではかなり有名は設計デザイン事務所から独立されて、現在はBLURRYという設計事務所を主宰されていて、新しい物件での木材のご相談だった。僕が六甲山材などを活用した活

台湾×神戸×楠

台湾にSHARE WOODSとして渡来したのは必然だったんだなあという話。 初日の誠品生活でのオープニングでは本当にたくさんのメディアが来てくれて六甲山鉛筆だけで輸出した1/3くらいが売れてしまった。2日目は、元ヤフーの社員で台湾人のpeter氏が創業したアジア最大級のクリエイティブマーケット pinkoi の本社ツアーや刺激的なスケジュールが目白押しだったんだけれど、その中での商談の一コマ。 神戸市の街路樹から採り出したクスノキのウッドチップ「KOBE CHIP」の話を

木材価値の源泉...

最近、講義や座談会などにお声掛けいただくことが増えて、僕などの何者でもない人間が恐れ多いとは思うのだけれど、できる限り引き受けようと思っているのは、人前で話したり又は話すための準備をすると、自分の中の自分は何者であるかを少しの間だけ整理できる気がしているからで。 特に僕なんかは、人からは何をやっている人かよく分からないと言われることが多く、それについて自分でも明確に説明できないことがよくあるので、自分が残して来た足跡と今後の道筋について少なからず整理できるのだ。 自分で自

六甲山の開祖 アーサー・ヘスケス・グルームさんのこと

六甲山を開いた開祖、英国人アーサー・ヘスケス・グルームさんの娘である岸りうさんの手記を六甲山観光の小林さんからいただき、六甲山の歴史がより興味深く感じています。 ブルームさんが六甲山を開いたのは、狩猟好きが高じて開山したと言われていたそうですが、実際には、狩猟を辞めてから六甲山に移り住んたそうで、それが明治28年6月のこと。当時、狩猟好きの父ブルームさんに対し、日本人の母は殺生するとこを嫌い「鳥の家族も我々の家族も同じで、その中の一羽が欠けてもその家族の嘆きを考えると狩猟は

神戸大学農学部で除伐されたエノキ材の救助プロジェクト

SHARE WOODS が、「六甲山」の山の手入れで発生した樹木を有効に活用するための活動団体「KOBEもりの木プロジェクト」の活動を続ける中で、「山」に限らず「街」においても、樹木の有効活用についての課題があることがわかりました。  例えば、都市公園の樹木や街路樹が大木化してしまったことによって伐採せざる得ない樹木の活用方法や、台風などによって倒木した木の活用など、通常であればそのまま廃棄処分されている木材について、循環の方法を考えれば有効に活用できるのではないかと考えてい

裏六甲 上唐櫃地区の間伐について

2017年12月16日〜17日の二日間に渡り、神戸市北区の上唐櫃地区の山林の年1回の間伐が行われました。いわゆる裏六甲です。 僕たちがこの地区の皆さんと関わり始めたのが丁度今から3年前。神戸市の市有林の手入れによる木材活用の仕事をし始めてから数ヶ月のこと。元々、市の仕事はほぼボランティアみたいなもので持ち出しばかりだからと、当時の神戸市公園緑化協会の青木さんや神戸市防災課の松岡さんや尾添さん、田村さんなどが気遣ってくれて紹介していただいた民有林。 民有林と言っても、上唐櫃地区

3年経過して。

六甲山という森林と、仕事を通じて関わるようになって3年が経過しようとしている。 思い起こせば、神戸で木材の仕事をしているにも関わらず、また国産材の活用なんてことをやりたいと思っていたにも関わらず、地元の山を資源として目を向けたこともなければ、そこ(六甲山)にどんな樹木がどれだけあってどんな人が関わりどんな課題があるのかなんていうことを考えたこともなかった3年前。 一つのきっかけで「とりあえずそこ(再度山 二本松林道)に伐採された丸太があって、それを持ち帰って何ができるかを考え