神戸市灘区春日神社の樹齢600年の大楠をレスキューして、ご近所のカフェのテーブルやベンチになった話。
「森とか木とかが、点と点で繋がって人が集まる場になった。」
ずっとこういう仕事がしたいと思ってやってきたことができた仕事でした。設計をされた三木 夕渚さん、ありがとうございました。
(2021/8月のフェイスブック記事から)
樹齢600年とも言われる灘区春日神社の神前の大クスの大枝をレスキューしました。知り合いを通じて兵庫県樹木医会の河合会長からご相談を受けまして今回引き受けました。
県内一の大クス(県指定天然記念物)で大木が故に様々な難局を乗り越えて現在に君臨され、その一部である枝(枝と言っても直径60cm超え)が近隣住宅に影響を及ぼしてやむを得ず伐り落とされて約2年。
昭和10年に材木業者に立木を現在の価格で約570万円で売却されたのですが、それを知った村民450名のうち360名もの人が買い戻す運動を起こし神木保存会ができ、約1000万円で買い戻されたそう。そんな住民に愛されたクスではありますが、今回の大枝、伐り落とされて2年、引き取り手がなくなぜが僕のほうに相談が。
いつもお忙しいですねと言われますが、だいたいこのようなことに東奔西走していることが多く、僕をレスキューして欲しいくらいですが楽しくはやっています。このような相談はほぼボランティアですので…
大枝が2本合わせて900kgという超大物で、芯は空洞の可能性があります。まずは、公的な施設や博物館、ホテル等オブジェ的にできる限りそのままに近いお姿で展示していただけるところがあれば紹介して欲しいです。しばらく待って良い情報がなければ製材して形を変えて使えるものにしたいなと考えています。
昭和2年の六甲小学校の朝礼写真や大正7年の写真が河合さんからみせてもらったのですが、凄い歴史的資産であると思います。やむを得ず落とされた大枝ではありますが何か良い方法で残してあげたいです。
(2021年12月のフェイスブック記事から)
そもそも8月に元神戸市職員で樹木医の和田さんからご連絡いただき、阪急六甲駅近くの春日神社に樹齢500年を超えるクスの大木(県天然記念物)の大枝が折れて、しばらく保管していたのだが引き取り手がなく有効に活用していただけないでしょうか、という相談でした。
その様な貴重なものをお受けするのは恐れ多いとも思ったのですが、引き取り手がなければ神社さんで処分されるというので一旦うちが引き取ることにさせていただき倉庫に置いていました。
その後、色々な使い道のアイデアもいただいてはいたのですが、しばらく塩漬けにしてじっと来るべき時期を待っていました。
そんな時にゼロ工房設計室の三木さんから木材の相談。お名前は存じ上げていましたが会うのは実は初めて。今回、TAOKA COFFEEさんの4店舗目の内装を設計しており、地域材(六甲山材)を使ったデザインを考えているとのことで、北区にあるうちの倉庫で打ち合わせすることになって、カウンターの腰板や壁材を六甲山のすぎ等で色々話が進みました。
一通り打ち合わせも終わり帰り間際、あそう言えばと思い「入口のところに樹齢500年以上といわれる春日神社のクスの大枝があるんですけど何かに使えないですかね」とご案内しました。
すごい迫力のある直径60cmを超える枝でもあり、オブジェでなんか使えないかとか思ってるんですと話したところ、「実はベンチとセンターテーブルも考えてるんです」と。それは面白そうだと思い、「この枝は六甲駅の近くにある春日神社という古くから地域に親しまれている神社さんで、、」と説明すると。。なんと今回のTAOKA COFFEEさんの新店舗の現場が春日神社から東にまっすぐ300mほどの場所だとか。
鳥肌が立ちました。オーナーの田岡さんもそういう縁を大事にされる方でぜひ使いたいということになり、とにかく何かに使うことに。実際には、ここからが大変で、まずどの様に加工するのか製材するのか、乾燥はどうするのか、御神木級の原木をどの様に扱うべきか、等々、様々な課題をクリアしていき「ベンチ」と「センターテーブル」に加工しました。
最初は、生命力あふれる原木の雰囲気をそのまま活かしかたいとか思ってはいたのですが、それすら人間のエゴであるかの様に、製材してみると見事に息吹を吹き返し「木」として生まれ変わってくれた様に感じました。木(樹)て二度生きるて言いますが、本当にすごいと思います。
設計の三木さんは、本当に素材を大事にしつつ、その時の流れや空気も大事にしながらその場を作っていってる感じで、素晴らしい空間を作ってくれました。
オーナーの田岡英之さんとはほとんど会話してませんが、オープン前々日のギリギリの夜、クスのベンチ納品した時にスタッフさん達と常に笑顔でワイワイ言いながらオープンの準備をしていたのが印象的でした。楽しく皆が働けるお店って流行るし理想ですよね。
全てに置いて楽しい、こうありたいと思わせてくれた現場でした。チーズケーキが最高に美味しいらしいので行ってみます。
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