天保10年3月19日(桑名日記 現代語訳)

朝方、雨でその後は晴れた。

おきくが6時くらいに女の子を出産した。
ところで、鐐之助は昨日も「かか、かか」と言って、母(おきく)の顔をみると「おっぱい飲ませて*1」と言っていた。朝も寝かせたあとに目が覚めて「かか、かか」と言うから大変困った。昨夜夕方、バァバにおんぶされ「もう泣かない」と言って、じきに寝て0時すぎに本当に寝た。
今朝の出生の声を聞いて「あれは何?」と言うから「あれはネンネの声だよ」と言うと
「猫様だねぇ*2」と言う。
ずいぶんおとなしくなり、それからは母に近づかず、何でもバァバ、バァバと言っていた。心配していたことと違って良かったと皆喜んだ。

おきくも、この前と違って産後に居直り、7時ころに3,4回目眩(たら付)したので、大変驚いた。20時くらいには落ち着いて、皆安心した。

御蔵に出る前に、御勘定奉行当番の駒のへ、出産届けを出した。

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*1 `御乳ぼうぼう`
*2 日本庶民生活史料集成15では「さうだねへ」となっている


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