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恐縮ですが、育児中。 《8》 授業参観

息子が小学校に入学しました。

得体の知れないうめき声を漏らしながら布団に転がっているだけだった、あの肉塊のような生き物が、いつの間にか自走式となり、あまつさえ教室に座って先生の話を聞いてるなんて、正直ちょっと信じられません。

人間って成長するんだなあ。

……などと感慨にふけっていると、授業参観の通知が届きました。

学校行事というものは、おおむね平日の真っ昼間。「真っ当な勤め人がそんな日に行けるわけないだろ!」と常々ツッコミ続けていたのですが(当方が真っ当な勤め人かどうかは別として)。今回は幸い土曜日とのこと。学校での我が子をワッチする千載一遇のチャンス

さて当日。教室の後方から、そーっと入ってみます。

やってるやってる。国語の時間です。先生が一行読んでは児童が後を追いかけて読んでいく、昔ながらのあのスタイル。

ところが息子は、どうも真面目に聞いちゃいない気配をかもし出している。朗読もずいぶん投げやりな声に聞こえます。

わかるんです。毎日一緒に過ごしている父には、落ち着きなく左右にふらつく頭を後方から見ただけで、彼が授業内容に完全に飽きてしまっているのが、手にとるようにわかるのだ!

そのうち椅子をぷらぷらと後ろ斜めに傾け始めたりして。倒れて後頭部を強打する絵ヅラが目に浮かんでハラハラしてしまい、もう、なんというか心臓に良くない。

一方、前方の座席の女子などは姿勢良く座り、手を上げてハキハキ発言したりしていて、これが同じ一年生とは信じられません。これはもう、何かの事情で3歳ぐらい上の子が留年してるにちがいない。そうとしか考えられぬ!

落ち着きないのは、うちの子だけじゃないはず。うちよりもっとヒドい子はいないか? ダメな子はいねがぁ!? とナマハゲのような形相で「下の下」を探し出そうと血眼になったりして。

親というのは何ともあさましいものです。親っていうか当方だけか。

しかし考えてみれば、自分だって授業なんかすぐに飽きて、先生の話も聞かず教科書のずっと先を勝手に読んだり、ページの角にパラパラマンガを描いたり、偉人の肖像画にヒゲを落書きしてばかりだったなあ…… 

と、幼少期の記憶が突然フラッシュバック。

こういった自分の中のなんともトホホな生徒気質が、我が子にもしっかり遺伝しちゃってる事に、否応なく気づかされてしまいました。

ショッピングモールの回「子は親の鏡」と書きましたが、どうやら教室でも同じ事が言えそうです。

鏡にうつった自分自身の恥ずかしい姿を親が見に行く行事、それが授業参観なのかもしれません。

いやはや、まったく恐縮です!(先生に対して)


明和電機ジャーナル 第18期 第2号 (2011年7月15日発行) 所収, に加筆訂正

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