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【花はみんなをしあわせにする】変えていくものと変わらないもの

昭和平成そして次の時代、世の中の常識や個人の物事のとらえ方やなど周辺の環境がどんどん変化していきます。変化する時代に順応して変えていく部分と変えてはいけない部分をしっかり見極めながらの事業展開を迫られているなあと感じています。

その見極めとして、自分たちが大切にしている部分と得意な分野でお客様にサービスや商品を提供する方法すなわちプロダクトアウトの視点と、お客様の趣味嗜好や農園に対する愛着などニーズや期待を超えるようなサービスを提供するマーケットインの視点が必要だと考えています。この二つの考え方を完全に分けて考えるのではなく、時にはものづくりの視点から時にはサービスの視点からと一つの物事に対し両方の視点から考えていくとき自分たちの自信につながる、そしてお客様にとっても素晴らしい価値のあるものが出来上がると考えています。自分たちが大切に考えていてさらには得意としている部分で勝負するのにも競合や買ってくれるお客様はそこを大事に思っているのだろうかという外からの視点も必要ですし、逆に、そこに見えているお客様の今だけを考えるのではなく自らの強みをとことん伸ばすことで、まだはっきりとは見えてないお客様を強烈なファンにしていく未充足のニーズを満たす個性の際立つものづくりが出来たりするのです。

 こういった内から外から見て自分たちは何者なのかを定めて宣言しながら運営すること、これをポジショニングと呼びます。プロダクトアウト・マーケットインから組み立てる自分の立ち位置としてのポジショニング。自らつくり育て、そして自らが売るという観光農園のスタイルはまさに企業としても面白みのある職業だと感じています。

ものや情報のインプットが多く飽和しているこの時代に、私たちはお客様に何を提供し、そして何を感じてもらうのか…。最近では直売やこだわりの通信販売、またはSNS等あらゆるチャネルで生産者が直接消費者とつながり自分たちのメッセージを発信できるようになってきました。しかし依然として産業全体で言うと高齢化や生産地と消費地の情報の格差や所得の格差など壁はまだまだあるなあと感じています。そういった意味で、農業という産業は自分たちが作ったものを食べてくれる人たちの顔を思い浮かべることはなかなか難しい産業だなと感じることが多いかもしれません。私も観光農園で新しいチャレンジをするときにはいつも考えます。そんな時にたくさん同じようなものがある中で自分たちを選んでもらえるような理由を考えて物事に取り組んでみることが大事だと考えています。いつでもどこでも誰からでも手に入るようなものなら、わざわざあなたのところから買おうとは思いません。観光農園としてそういった理由、すなわち付加価値を高めるための戦略が必要だなと考えています。

これまでのテーマパークなどにはなかった季節営業の考え方とそれによって他社が実現できなかった、異なる季節に違った花で丘を埋め尽くすという、予想を裏切り期待を超えるスケールの花畑を創り出そうというスタイルが広島の山の中に観光客を呼び込む大きなフックとなりました。さらに他の地域では咲かせることのできない行楽シーズンに花を咲かせることができる冷涼な気候風土を活かせたおかげで、このエリアの花観光の競争優位性が保たれていると考えています。

花観光を始めて25年目のシーズンが終わりました。今季が過去最高の観光客数と売り上げになりました。代表として伸びしろを創れたことは自分に自信につながるとともに、今年も喜んで頂けただろうか、来年につながるだろうかと反省にもつながっています。地域の他業種の人たちとの食の活性化のコラボや、山陰と山陽をつなぐ無料高速道路のアクセスを活用した花の観光施設との協業もだんだんと熱を帯びるようになってきました。観光の持つ地域活性のポテンシャルを意識した観光農園の在り方を模索していくことも、この人口減少、レジャーの飽きやすさといった、逆風といえる世の中の流れに対してのカウンターになりうると考えています。どういうアクションを起こすことが、お客様に親しまれこの地域に足を運んでもらえる理由になるのか。そういう思考で考えるクセを付けてものづくりやことづくりに向かっていきたいものです。その考えをもとにしたアクションこそ、お客様にとって、今だけ、ここだけ、あなただけ、を引き起こすスイッチになる可能性があるのです。

 12月もあと半分で終わります。令和元年もあっという間に過ぎ去っていきました。新しい春がやってこようとしています。地域と農業と観光という様々な環境要因が重なる業態で、もがきながら自分の思いを少しずつではありますがかたちにしてこれたかなと思っています。最初のアクションは小さくても、あきらめずに挑戦を繰り返すことでやがて大きく成長し夢をかなえることができます。その過程での学びや経験も含めて自分の血や肉そして宝になっています。

 私が就農を決意した当時の思いは今も全く変わっていません。自分が住んでいる地域をほめてもらえるような仕事がしたい。そしてその思いは私個人の思いから企業としての農場のミッションへとかたちを変え、観光農園を前に進めていくための原動力となっています。

 【花はみんなをしあわせにする】世羅高原農場の企業理念であるこのフレーズが私は大好きです。世羅の気候風土とロケーションを活かした感動の花畑を創り出すことで、まちにお越しいただくお客様、農場を取り巻くまちの内外の人たち、農場の従業員とその家族、そしてまちの経済やイメージ文化といった見えない資産などすべてにおいて心情的にも経済的にもしあわせにするといった意味を込めています。まちの魅力を個性や強みに変えて物語とともにお客様にお届けすることで、自分たちの仕事に対する自信や誇り、まちに対する愛着、シビックプライドといったものを熟成させることにもつながっていると考えています。

 一昔前、もしかしたら現在も蔓延しているかもしれませんが、ここには何もない、田舎はつまらない、農業なんか儲からないからやるもんじゃない、そういったネガティブから抜け出し、観光農園の取り組みをあらゆる意味で魅力的な産業に育てて、文字通り地域の花形産業にしていきたい。そして若い人たちがあこがれるような場所にしていきたいと考えています。

 新しい春、花いっぱいの世羅高原でお待ちしています。

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