放棄茶畑2-min

作り手の想い、汗と努力の結晶を伝えたい

Twitterでもつぶやいていましたが、以前支援したクラウドファンディングの企画「茶畑オーナーになろう!一坪から購入可能放棄された茶畑を再生する【放棄茶畑分譲プロジェクト】」の茶畑に見学に行きました!


事前に本企画の発起人である川村翠香園の川村さんに「見学に行きたいんですけど〜」と、問い合わせたら新茶で忙しい時期にも関わらず快諾して頂き、茶農家の大石さんも同席で茶園の案内をして頂くことになりました!

現場に行って直接お話を伺うことで得られた学びが沢山ありました。


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放棄茶畑の問題と実状

放棄茶畑とは、文字通り、持ち主に手放され整備されなくなった茶畑のこと。
茶畑を手放す理由は、持ち主である農家さんの高齢化や後継者不足、近年のお茶の価格低下など様々。。。

機械が入ることが出来ず、管理が大変な急斜地の茶畑を中心に放棄茶畑が増えています。


見学させて頂いた茶畑のすぐ隣にも放置された畑がありました。

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数年放置された茶畑は、↑このように整備された綺麗な畑ではなく、
↓こちらのようになってしまいます。

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こうなってしまうと、お茶の樹の根っこから取り除き、樹を植え直さないと元通りにはなりません。
再び植えてから製品になるお茶が栽培出来るまで4-5年はかかります。もちろんその間は1円にもお金に変えられず、肥料や人件費などの生産コストがかかるだけ。

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放置茶畑の問題は、お茶の生産量が下がるだけではありません

放置茶畑は、害虫や病疫、野生のイノシシの住処となり近隣の畑や農家さんの身にも影響を及ぼします。
また、茶園でよく見られる防霜ファン(上空の温かい空気を送り込んで霜の被害を防ぐ送風機)は、共同で管理している為、隣の農家が茶畑を放棄すると周辺農家はその分、多く管理費用を負担せざるを得ません。

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このような「放棄茶畑問題」をなんとかしたい。そんな川村さんの思いに共感した茶農家の大石さんが名乗りをあげる形でこの企画が立ち上がりました。


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「大石さんは本当にお茶作りに熱心な方なんです」

川村さんがそう語るのも納得出来る、お茶対して真っ直ぐな方でした。


茶農家の大石さんも、近年のお茶の価格低下や高齢化に伴い増えていく放置茶畑の現状を前に一度は茶農家を辞める事を考えたんだそう。

そもそも、なぜお茶の価格が低下したのか。放置茶畑が増えている根本的な原因についてお話をして頂きました。


今から20年ほど前、茶栽培に使われる化成肥料の(特に)窒素成分が水質汚染を引き起こしている。と問題視されました。

土壌から流出した窒素成分が近くの池を真っ青に変えたらしい。

それに対し県は、施肥量の基準値を引き下げました。窒素成分は従来の約半分に…。

環境に良いから農家はみんな良いことをしてる!という意識だったんですよね…

県の定めた基準値は水耕栽培によるもので、実際の土壌環境で起こる降雨による肥料成分の流出や揮発量が考慮されていませんでした。

基準値通りに肥料を与えても、実際に吸収される成分は基準値以下になる。

窒素成分は日本茶特有の「うま味」に影響する重要な成分です。

窒素成分が半減したお茶の樹は栄養不足になり、年々お茶の質が低下していき徐々に安値で取引されるようになりました。


茶価が低下し経営が行き詰まると生産コストを抑えるしかない。

そうなると、さらに単価が下がり、良いお茶が作れなくなる。どんどん悪循環に。。。

お茶が美味しくなくなった」というお客さんからの声も聞こえてくる。

ペットボトルのお茶の普及の影響で、茶葉(リーフ)のお茶の需要が低下したことに伴う、お茶の取引価格低下も多大に影響し、管理コストの高い急斜面の茶畑を中心に、自分の茶畑を手放す農家も増え、気付けばここにも、あそこにも放置茶畑が…。

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静岡県の茶畑面積は昭和63 年ピーク時から3割ほど減少対前年度では 2.3%減少。(農林水産省大臣官房 統計部 平成 28 年茶栽培面積データより)

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「お茶は真面目に作りさえすれば、もっと美味しくなる」

大石さんはコストを抑えることを優先した肥培計画を見直し、農協任せではなく、一から全てを自ら計画しました。

コストも手間もかかるけど、有機質肥料の魚粕(鰹節)を積極的に使って施肥回数も増やして丁寧な茶園管理に徹した。

以前は自分も肥料も上から撒くだけの時もあったけど、手を抜いた分お茶の質も下がる。逆に手間をかければ絶対に良いお茶になる。サボっていた分まだまだ頑張らないと

「美味しいお茶を作りたい」と純粋に思えるから頑張れるのだそう。

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作り手の想い、汗と努力の結晶を伝えたい

夏の暑い日も、冬の寒い日も、お茶作りに休みはない。

4月、5月に栽培される新茶は、まさに作り手の想いが詰まった汗と努力の結晶である。

茶畑を後にして少し離れた場所に車を停め、綺麗に仕立てられた茶畑が作る美しい風景を眺めていると、このプロジェクト携わっている方の想いをたくさんの人に伝えていきたいという気持ちが湧いてきました。

もしかしたら、この綺麗な茶畑もあと何十年かしたら放置茶畑になってしまうかもしれないという危機感もある。

そうさせないためにも、より良い日本茶業の未来のために今できることから動いてみよう。

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最後まで読んで頂きましてありがとうございました!