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じいちゃんの水車小屋【絵本原作】

①(水車小屋でじいちゃんとおしゃべり)

 

 ぼくの好きな場所。

 それはね、じいちゃんの水車小屋。
 
 川の水がなくなって、今は動いていないけど、昔は元気に動いていたんだって。

 じいちゃんと水車小屋で、おしゃべりするのが、ぼくは大好きなんだ。

 

 

 

②(水車小屋をこわそうとするパパとママ。反対するぼく)

 

 でも、ある日、じいちゃんはお星様になった。

 パパとママは水車小屋をこわす、と言ったから、ぼくは大反対。

「水車小屋は、まだまだ元気だよ。ぼくが居場所を見つけるよ」

 ぼくは水車小屋と旅にでることにしたんだ。

 

 

 

③(水車小屋にもうひとつ水車をつけている)

 

 パパとママは心配したけど、

・勉強すること

・手紙を書くこと

・困っている人がいたら助けてあげること

を守るかわりにゆるしてくれた。

 そうと決まれば、準備をしなきゃ。

 反対側に、もうひとつ水車をつけて、タイヤみたいにした。

 よしっ! 出発だぁ!

あれ? 力いっぱいひっぱっても、水車小屋が動かない。

 

 

④(みんなが後ろから水車小屋をおしてくれる)

 

「おーい」

 あ! たっくんにじゅんちゃん、それにみんな!

 みんなが見送りにきてくれて、水車小屋を押してくれたよ。

 大きな川に浮かべると、水車小屋も大喜び。

 スイスイ、シャッシャッ

 水車が回る。

「いってきまーす」

 

 

 

⑤(雨。水上本屋さんにおおきな傘をわたす)

 

 川を下っていると、ぽつりぽつりと、雨がふってきた。

 前からやってきたのは、水上本屋さん。
 
「わー、大変だ。本が濡れて風邪をひいてしまうよ」

 だから、ぼくは、パパからもらった大きな傘をあげたんだ。

「おおきな傘だね。ありがとう。お礼に好きな本をあげるよ」

 ぼくは、勉強の本をもらったよ。

 

 

 

⑥(海。漁師さんにおにぎりをあげて、たくさんの魚をもらう)

 

 ここから先は海だ。

 スイスイスイスイ、シャッシャッシャッシャッ

 初めての海に水車もはしゃいで、よく回る。

 ぎゅうごろごろぐー

 変な音がきこえるぞ。

「あー、お腹がペコペコだよ」

 お腹を空かせた漁師さんたちだ。

 だから、ぼくは、ママが作ってくれたおにぎりをあげたんだ。

「おいしいおにぎりだね。ありがとう。お礼に魚をどうぞ」

 ぼくは、たくさんのお魚とさばき方を教えてもらったよ。

 

 

 

⑦(屋根の上。かもめに手紙をわたす)

 

 今日あったことを手紙にかこう。

 かもめを呼んで、お魚と一緒にくちばしにくわえさせて。

 パパとママから早く返事がこないかなぁ。

 

 

 

⑧(海にもぐって、水車小屋を修理。大きくなったぼく)

 

 ズズズズ、ジジジジ

 こないだの嵐で、水車小屋はケガをしたみたい。

 大きくなったぼくは、海にもぐって、修理だってできるよ。

 ついでに、海にもぐれるように改造しちゃえ。

 

 

 

⑨(海にもぐる水車小屋。大きな穴を発見)

 

 ブクブクブクブク、スイスイ、シャッシャッ

 わぁ、潜水艦みたい。

 おや? あの穴はなんだろう? よしっ、探検してみよう。

 ずっとずっと進んでいくと、光が見えた。

 どこに出るんだろう?

 

 

 

⑩(公園の噴水にでた水車小屋)

 

 ばっしゃーん

 公園の噴水に出たよ。

「あー、お気に入りのお洋服が」

 女の子に水がかかっちゃった。

「ごめんなさい。なんでもお願いをきくからゆるして」

 ぼくが謝ると、女の子は笑って言ったよ。

「その水車小屋に、私も乗せて」

 

 

 

⑪(海をドライブする水車小屋)

 

 だから、ぼくは、女の子を乗せて、海の中をドライブしたよ。

 カラフルな魚の群れとかけっこしたり、岩場のアスレチックをくぐり抜けたり。

 毎日、女の子と遊びに出かけたよ。

「ドライブ、楽しかったよ。ありがとう。お礼に、あなたのお嫁さんになってもいいですか?」

 

 

 

⑫(海の上のチャペルでの結婚式)

 

 女の子は、ぼくの奥さんになってくれたよ。

 海の上のチャペルでの結婚式。

 パパやママや、大きくなったたっくんやじゅんちゃんも来てくれたんだ。

 じいちゃんにも見せてあげたかったなぁ。

 

 

 

⑬(にぎやかな水車小屋)

 

 オギャオギャ、スイスイ、シャッシャッ

 こどもも生まれて、にぎやかになった水車小屋。

 こどもが泣くと、波が揺りかごになってくれて。

 もう少し大きくなると、イルカののり方も覚えて。

 こどもは、あっという間に大きくなって、結婚して、自分の船で旅にでたよ。

 少し静かになった水車小屋。

 

 

 

⑭(列車のような水車小屋)

 

 スースー、シャーシャー

 水車小屋もぼくも奥さんもだんだんと歳をとった。

 ぼくの水車小屋には、同じように水車小屋で旅をする仲間が集まってきた。

「あなたのお話をきかせてほしい」

 だから、ぼくは、今までの旅のお話をたっぷりと話したんだ。

「すごく勇気のわくお話ですね。ありがとう。お礼に水車小屋をつなげて、途中まで旅をしましょう」

 スイシャッ、スイシャッ、スイシャッシャッ

 まだまだ、楽しいことはいっぱいあるね。

 

 

 

⑮(泣いているぼく。ただよう水車小屋)

 

 すごくまんまるのお月様がでた夜。

 ぼくの奥さんもお星様になった。

 海よりもしょっぱいしょっぱい涙。

 水車ももう動きません。

 ただただ、海を何日も漂流しました。

 

 うとうとしていたぼくは、扉をたたく音で目を覚ました。

 扉をあけて、驚きました。

 

⑯(星の川のほとりの水車小屋)

 

 訪ねてきたのは、じいちゃんでした。

「ここまで運んできてくれたんだね。ありがとう」

 窓の外をみると、きらきらと光る星の川のほとりに水車小屋はとまっていました。

 パパやママやたっくんやじゅんちゃんに、ぼくの奥さんもいます。

「そうだよ。あのね、じいちゃんに話したいお話、いっぱいあるんだよ」

 いつの間にか、こどもにもどったぼくは、一番はじめからこのお話をみんなにきかせました。

 スイスイ、シャッシャッ

 水車はいつまでも回り続けました。

※ ( )内は見開きの絵のイメージです。

(了)

 読んでいただきありがとうございます。
 そるとばたあ@ことばの遊び人です。普段は400字のショートショートを中心にLIVE形式のnoteを書いています。
 今週末の土日にかけてはそちらをお休みにして、過去に書いた作品や未発表の作品をnoteにupしていきたいと思います。

 今日28日(土)は、DAY1 Moon Stage

 5本の作品をupします。
 このお話は、Moon Stageの3本目。短い時間ですが楽しんでいただけたらなと思います。


(↑Moon Stage①兆候【ショートショート】)

(↑Moon Stage②カンガール【ショートショート】)

文章や物語ならではの、エンターテインメントに挑戦しています! 読んだ方をとにかくワクワクさせる言葉や、表現を探しています!