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旅の思い出

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旅の記録のつめあわせ
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#パレルモ

シチリアの結婚式-ゴッドファーザー-

モンレアーレは、盆地の肌にはりつくように築かれた、小ぢんまりとした田舎町である。 この町のハイライトは12世紀に建てられたというノルマン様式のドゥオーモ。 「回廊付き中庭」と訳されるキオストロは静まり返って柱の影を落とし、一組の熟年夫婦が寄り添って歩く姿が絵になっていた。 ガイドブックによれば、モンレアーレのもう一つの見どころはクローチフィッソという名の巨大なマヨルカ焼の壁画。 本には正式な名前さえも載らない、教会の外壁に描かれているらしい。 もてあますほど時間があったの

マンジャーレ!-シェフとギャルソン、リストランテの夜-

午前中の散歩から帰って、キーボードを叩いた。 もう少し経ったらランチに行こう。 今日は街には出ないと決めたから、ホテルの中で済ますつもり・・・ とロビーにて、ランチは予約のみとの表示が目に入る。 なんということだろう、しかたがない。 確か少し歩けば、幾つかレストランがあったはずだ。 本とデジカメと財布を持って、再度、外に出た。 あいかわらず眩しい光。 今度は坂道をしばし下る。 オレンジの車体の路線バスとすれ違う。 道いっぱいを走るので、ぎりぎりまで身をよける。 右側に

含み笑いを介して-あのころ-

ここ数日、パレルモは冴えない天気が続いていたが、今日は朝からすこぶる機嫌のいい空の色だ。 天気予報によれば、本日のパレルモは最高気温17度。 北イタリアはBIANCO NATALE(ホワイトクリスマス)と報じられているのだから、その差たるや大きい。 朝食を済ませた後、本を一冊持って散歩がてら坂道を上ってみることにした。 CONCA D'ORO盆地の山肌に、オレンジ色の屋根の家々が連なっている。 開放感に満ちた空と大地の様相に、自然と心も足取りも軽くなる。 双方向の車がすれ

サバ読む年頃-25年目のキス-

どこのどんな街に行っても、必ず出くわすのが校外学習中の子どもたちだ。 数えると16カ国になったが、過去に行ったあらゆる国のあらゆる街で、この類の一行に出くわした。 今回もご多分に漏れず、である。 パレルモの旧市街に雄然と構えるカテドラルで、私は、この建築物にまつわる「歴史的説明」をガイドブックの記述に求めようとしていた。 音のよく響く、遥か高い天井の下で、さきほどから金切り声さえ混じった賑やかさを示すのは、やんちゃざかりの小学生たちである。 3、4年生くらいだろうか。 どう