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なにを作っているかいまいちわからない工場の工場見学を開催してみたら感動のラストがあった

どうも、恵那市笠置町の佐藤あやみです。

先日、息子ともどもお世話になっているロボットプログラミング教室のリンベルの先生と共催というかたちで工場見学を企画してみました。

子供向けの工場見学イベントということだったのですが、結果的に大人も子供も楽しく身になる体験だったと思います。

工場見学を企画するということもなかなか無いと思うので、どのように工場見学企画をしていったか・どんな流れで工場見学したか・どんな気付きがあったかというのを中心に書いていきます。

このnoteではアフリカ一人旅、登山用具店勤務などを経て、現在はECサイト経営をしつつ恵那市笠置町にUターンし里山暮らしをしているわたし(佐藤あやみ)が、子育てのことや自然のこと、学んだこと、経験したことをアウトプットしています。テーマは「ともに生きる」。どうやったらともに生きるコミュニティを形成できるのか?ということを考えながら活動しています。

なぜ工場見学イベントをやってみたか

そもそも、なぜ工場見学を企画したかと言うと、去年のことになりますが探究学舎さんで「きみの仕事編」というのがありました。

これは、こどもたちがこれから社会に出ていくにあたって、仕事ってどんなもの?とかどんなふうに仕事をしている人がいるの?なんのために仕事をするの?という「仕事観」の種を撒くための授業でした。

薪ストーブ作家さんや、オルタナティヴスクールの校長先生、養豚農家さんなどさまざまな職業の方のインタビュー、深堀りをみることができました。

そのなかにはなんとわれらが恵那市の映画ふるさとがえりを撮影した林監督もいらっしゃいました。林監督は探究学舎さんとご縁があるそうでびっくり。

それで、その後息子と、恵那市の農家さんが図書館の軒先に集まる「食べとるマルシェ」に行った際に知り合いの農家さんらそれぞれに「あなたの仕事について教えてください。」と突撃インタビューしたことがありました。

その際に出てくる仕事観は、

・人と出会うための名刺だと思っている(トマト農家さん)
・はたらく、とは相互作用(有機農家さん)
・はたらくときは誰かと一緒に同じ目標に向かってがんばってる(図書館サポーターさん)

などなど、ほんとうに多様だなあ…と思い。

息子の今後のために…ということもありますが、私自身が「はたらく」ということに対して多様な人々が多様な価値観で向き合うようすを知りたい、という思いがむくむくしてきました。

そこで、たまたまロボットプログラミング塾の先生と話していた時に


「小学校の職業見学ってこのへんだとだいたいトヨタになるんですよ、それでもいいんですけど、もっといろんな職種ー例えば事務とかでもいい。銀行とか、身体を使う仕事でもいいけれど、いろんな仕事を子供たちに見せてあげたいんですよねえ。

例えば事務だったら、じっと座ってなきゃいけない場面が多いし、数値を打ち込む作業が多かったりとか。子供たちからしたら、じっと座って仕事しているってだけでもびっくりするだろうし、こういう仕事があるのか~と思えると思うんですよね。

これ!って決めるんじゃなくて、とにかくいろんな大人の姿を見せてあげたいなと。」


とおっしゃっていて。

とても共感したので、これは良い機会だと思い、友人が勤めている工場にコンタクトを取り、工場見学をさせていただくことになりました。

工場見学のチラシをつくる

工場見学ちらし

こんなかんじでチラシを作りました。

当たり前ではあるのですが、子供向けイベントに何回か参加するうちに、子供たちは(大人もそうですが)

しみじみすることよりも、わくわく楽しそうな方が好き

ってことがわかってきました。

大人は例えば「秋の夜長を楽しむジャズ講座」とかでも受けたくなるかもしれないのですが、子供はより「遊び」に特化したイメージを見せたほうがわくわくしてくれます。

見学→探検 と言い換えて、楽しそうな演出をしてみました。

しかしながら、ただ単に言い換えをして、実際の工場見学がわくわく楽しくなかったら、がっかりすぎますよね。

ですので、どうやったら工場見学が楽しくなるんだろう?と頭をひねることになりました。これについてはまた後で。

そもそもその工場で何をつくっているのか、わたしにはわからない。

わかる人にはわかるモノだと思うのですが、友人の勤める工場では「エンドミル」なるものを作っていました。

エンドミルってなんぞや。

工業に疎いわたしにはさっぱりわかりません。説明を聞いてもさっぱりです。

しかしこれでは子供たちをアテンドできないので、調べました。

エンドミルとは…

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Ralphs_FotosによるPixabayからの画像

こういったもの。

見ても、わかりません。ドリルじゃないの?

謎解きゲームを作ってみた。

さて、エンドミルの謎はいったん置いておいて、子どもたちに楽しんでもらうためにこんなものを作ってみました。

簡単なものなのですが、いろいろ出回っている謎解きゲームからヒントを得て、頑張って作りました。

この謎を解いていくと、エンドミルと工業の一端がわかるようになっています。

簡単ではあるのですがそれぞれのABCDの部分のひらがなの穴埋めをしていくと最後の謎が解ける、というものです。

今回参加者が1年生から6年生までと幅広かったので、1年生でも難しすぎないように構成しました。(いや、1年生には正直難しいです。でも1年生さんは親御さんがヘルプに入るだろうという想定で作っています。全部理解はできなくても、ふんわりおもろいと思ってもらえればいいな、くらいで作っています。)

謎解き2022528工場見学

エンドミルと工業について学ぶ

さて、当日。工場内は狭くて危険なので、3組ほどが最適とのことで、結局3組+αのこどもたちが集まってくれました。

最初に「エンドミルとはなんぞや」ということを学びます。

この工場に勤める友人のTくんが、打合せもそこそこだったのにとてもうまいこと授業をしてくれました。

Tくん「硬い金属って、なにがあるかわかる?」

こどもたち「ダイヤモンド!」「鉄!」「タングステン!」

Tくん「わ~、なんでタングステンなんて知ってるの?みんなよく知ってるね。
そう、実はこのエンドミルはタングステンが含まれた金属を使って作られてます。タングステンってめっちゃ硬いんだよね。

で、このエンドミルは、車などの機械を作るときの『金型』のかたちを作るときに使われる刃物です。金型に鉄を流し込んで車の形にしていったりするんだよ。

ドリルに見えますが、ドリルのように穴を開けるものではなく、水平方向にずらして金属などを削っていく『刃物』です。これは刃物なので、けっこう切れます。気を付けよう。

車で言うと、車を作るためのパーツがあって、そのパーツを作るための金型があって、その金型を作るためのエンドミルというのを僕たちが作っているわけなので、おおもとだよね。

この工場では、いろいろな金型を作る会社から依頼を受けて、オーダーメイドでこのエンドミルを作ってます。」

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真剣に話を聞く子どもたち。

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さて、こういったエンドミルを作るのに必要なのが「工作機械」。

ここではコンピューター制御の工作機械を使っています。
最新の工作機械はロボットアームがうい~んと動いて滑らかにエンドミルを作っていきます。

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めっちゃ古い工作機械はWindows98が使われていました。現役で動いています。

Tくん「こうしてできたエンドミルは、1本1本検品されます。顕微鏡を使って、ものすごい細かい単位で誤差がないか測り、依頼した会社へ届けます。少しの誤差で金型の出来が違うので、けっこう大変です。」

1本1本マイクロミリ単位で検品するとは、さすが日本の工業です。

他の従業員さんも働いていらっしゃったのですが、子どもたちは要所要所で従業員さんに質問をしたりしていました。

自分でエンドミルを調べても、いまいちなんのための道具なのか理解できなかったのですが、こうして実際にモノを見ながら説明を受けるとスッと腑に落ちました。

車や家電などの機械ができるまでに、金型が必要で、金型のためにエンドミルが必要…工業関係の方には当たり前なのかもしれないのですが、そんな当たり前のことを初めて知り、何かを作るのには何千人、何万人の人が関わっているんだなと思いました。

中津川は中京工業地帯の一応一部。

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さて、謎解きの後半部。

今回の謎解きゲームを作るにあたり、念頭に置いていたのが「地理的要素」でした。

作っているモノのことだけでなく、地理的なものとか、地域の文化的背景も「面」でとらえることができたらいいなと考えていました。

この工場のある(恵那市の隣の)中津川市は、工業団地といって、工場が集まる地域があったり、そこでなくても市内にたくさんの工場が集まっています。

恵那市にはそこまで大きな工業団地はありません。

なぜ?

これは地理的要素があるのではないか?と下調べしてみました。

以前探究学舎さんで「地理ミステリー編」というのがあって、わたしはそれが大好きだったんですが、そのなかで「土の下がわかると、そこにできる街のこともわかる。土壌によって街がきまるんだ」という説明があって、へ~!知らなかった、と思い地質学も気になり始めました。

地質学まで行かなくても、気候条件などで街のつくりや文化は変わるはず。

というわけで母の探究です。

中津川のライジング

中津川市には、工業団地が多くあり、恵那市のほうが規模が小さい。
名古屋からは恵那市のほうが近い。人口も中津川市のほうが多い。

これはなんでなんだろう?と常々思っていました。

中津川の工業について調べてみると、中津川のライジングになんと、次期新札の「渋沢栄一」が関係していることがわかりました。

まず、そもそもなぜ中津川のファースト工場はなんなのか?ということですが、これが「製紙工場」だったわけです。

明治時代の中津川市(当時は中津町)の有志は、豊富な針葉樹林と水源を利用して、これから拡大するであろう紙の需要に応えるべく製紙工場を作ろうと考えました。(針葉樹は紙の原料・パルプになる。)
そして当時王子製紙の社長であった渋沢栄一に相談し、渋沢栄一氏の後援の下、明治41年に製紙工場ができたということでした。

中津川は恵那市よりも木曽路に近く、特に裏木曽と呼ばれる付知地区・川上地区・加子母地区あたりからの木材の市場が昔から中津川には栄えていたそう。

木曽から木材を出し、町へ売るハブとして中津川は機能していたのです。

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↑囲まれている部分が木曾地域。北西ングのチャンスが巡ってきました。

三菱電機の名古屋工場を中津川に疎開させようという話が持ち上がったのです。

これは、疎開先を探していた三菱に中津川側が持ちかけた話のようです。

その後、この波に乗ってさまざまな工場が中津川へやってきました。

鉄道や中央道の開通などの後押しがありながら、どんどん中津川が工業の町として発展していったのでした。

恵那と中津川の違いはここにあったわけです。

工業とは何か?の問い

さて、謎解きも佳境に入りました。

全部の謎を解くと、

「こうぎょう」という答えが出ます。

工業って、なんでしょう?とTくんに訊ねました。

Tくんは高専を出て、その後エンジンの設計もやっていたことがある筋金入りの工業マンです。

Tくんは、

「いい問いだ」と言って、素晴らしいことを言ってくれました。

Tくん「工業とは、無益なものから、人間にとって有益なものを作り出すこと。

無益っていうのは、人間にとっていらないもの、価値のないものってこと。
たとえば、鉄鉱石って石のままだと、別にいらないじゃん。

でも、加工して、機械にすればすごく役に立つよね。

自然界にある一見いらないものを、人間の手によって、人間に必要なものに変えていくのが工業なんだよ。」

これには保護者一同「ほ~~~!」と感嘆。

なるほど、そのままではいらないものを、人間の手で、人間のために必要なものに作り替える。

工業って、よくわからん…と感じていた私が、工業って魔法みたい…と、生まれて初めて思ったのでした。

最後にパシャリ。

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謎解きできた子には謎解き証明キーホルダーを

これも完全に探究学舎さんの真似なのですが、100均にあるキーホルダーセット(セリア)を使って、謎解き証明書のようなものを作ってみました。

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こういうのは子どもは喜びますし、しばらくは「あんなこと学んだな~」と思いだしてもらえます。

楽しい思い出のひとつになるといいなと思って、プロのデザイナーさんには全く及びませんが私なりにけっこう本気で作りました。

ちなみにデザイン画は実寸サイズで作るのが簡単と聞いたので、ワードで作成。

シリーズ化したら、デザインをどんどん変えてコンプリートしたくなるように作っていこうと思います。

感想を子どもたちに聞いてみると、「ロボットアームの動きがめちゃくちゃ滑らかでおもしろかった」「エンドミルっていうのがあると知った。」「工業の意味を知った。」など、低学年の子も何かしら思うところがあったよう。

最後はみんな工場外の水場で仲良く遊んでいたので、知的好奇心のある子たちの横のつながりができてよかったな~とも思いました。

まとめ:工場見学してみないとわからないことがある。

今回、日常を生きていると通り過ぎてしまいそうな「エンドミル工場」にお邪魔して、その実際のお仕事や背景を知ることができました。

あとから保護者さんに「普通に暮らしていたら、絶対入ることのない、知ることのない工場に入って、さらにお話も聞けて。最後の工業とは?という問いには考えさせられたし、とても良かったです!」と素敵なメッセージをいただくことができました。

今回は仕事内容が主な探究内容でしたが、次回は「なぜここで働いているの?」ということとか「あなたの仕事観は?」という「人」に焦点を当ててお仕事見学しても楽しそうだなと思いました。

とにかく、子供たちにもいろんな人が生きてていろんな仕事があるよってことは知ってほしいですし、大人も理解する楽しみがあります。そして世界がぐんと広がります。

またこのシリーズ、続けていきたいと思います。



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