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『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』を秋の夜長に

海外映画やドラマ、特にアメリカのものを観ていると、カウンセラーという存在が日本に比べてかなりカジュアルに出てくる印象があります。
それもそのはず、ちょっとググってみるだけでも、どうやらアメリカはカウンセリングの利用率が30-40%以上らしい。アメリカの人10人いたら3-4人ぐらいは利用経験があるってことか。でも極め付けはこれだな、保険適用されるらしい。日本だと、大抵の場合自費みたい。それもなかなかの高額。そりゃ利用率に雲泥の差が出るわけだわ。

というわけで、映画やドラマでは超お馴染みのカウンセリングだけれど、日本でのそれって実際どんな風に進められるのかとか、どういう効果が期待できるのかとか、カウンセラーって実際のところどんなことを考えているのかとか、結構未知というか、ブラックボックスみたいなところがあると思う。

東畑さんの本を読むのは2冊目。1冊目は、ちょっとしたきっかけで読んだ
『居るのはつらいよ』

この時は、心理士の資格を取って間もない駆け出しの頃の、著者の困惑、葛藤ぶりが主体で書かれていたのが印象的でした。臨床心理士さんって、カウンセラーとも呼ばれる人って、こんな風に育っていくのね!?と、へえぇと思いながら読みました。

今回はたまたま書店で平積みされていたのが目に入り(だいたい私の読むきっかけはたまたまだな笑)、何となく読んでみることに(そしてだいたい何となく読み始めるな笑)。

『なんでも見つかる夜に、心だけが見つからない』- 著者: 東畑開人さん

1冊目の時にあんなに右も左も分からないままモヤモヤしたり奮闘したりしていた東畑さんは、もうそこには居ませんでした。本書の前書きでも後書きでもご自身の描写として出てくる通り、どうやら今や立派な「中堅」になられたようです。

なので、成熟したカウンセリングの実際というのが、どのような考えの下に、どのように構成されていくのか、というところが、より安定感を持って解説されていました。専門的な概念をとても噛み砕いて順序立てながら提示されているので、わかりやすい。

カウンセリングルームってたぶん、長めに座っていても疲れにくいちょっといい椅子と、小さなテーブルが間にあるだけなんだろうな、とイメージしていたら、本当にそのようでした。そんなシンプルな小部屋で繰り広げられる諸々を垣間見せて頂きつつ、ちょっとだけ読者も本物のカウンセリングというものを体験させてもらえているような、物事の色んな視点や考え方を気づかせてもらえるような、とても読みやすくも心の財産になるような本でした。いや、財産かもしれないし、人と場合によっては武器だったり、防具だったり、羅針盤だったりもするかも知れない。

それにしても、人の心の不調に毎日毎日根気よく寄り添い続けるお仕事ってすごいなぁ、尊いなぁ、と、ますます思いました。タイトルも夜だし、読んでる間の風景もずっと夜だし、秋の夜長にオススメです。

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