現職地方女性議員の選挙と妊娠<中野区議会議員・中村延子さんのケース #2>
こんにちは!台東区議会議員の本目(ほんめ)さよです。「届きづらい女性の声を政治につなぎ、一つずつ実現していく」ことをミッションとした団体・WOMAN SHIFTの代表も務めております。
WOMAN SHIFTでは選挙や任期を理由に議員に妊娠・出産を諦めてほしくない、という思いのもと、現職議員の「妊娠・出産」について発信をしています。私・本目自身も選挙3か月前に第二子を出産した経験があります。
選挙前に出産をした本目のケースとは別に、選挙後の出産を選択された中野区議会議員・中村延子さんにお話を伺っている第二弾の企画。
第一回の記事はこちら👇
第二回となる今回は本目との対談形式で、延子さんが産休に入られた妊娠37週(2024年3月)の記録です。
妊娠中や産休中のフォロー体制を構築するための「味方を作るコツ」についてや、のぶこさんの産休前の一日のスケジュールについて、現職女性議員の「選挙と妊娠」についてお話を伺うことができました。
■中野区議会議員・中村延子さんインタビュー
(本目)今はもう産休に入ったんだよね。お腹重いでしょ?
(中村)超重い。いまはもう産休です。産前7週で取りました。
(本目)そっか7週で取ってるのか。
(中村)一人目が36週と1日で生まれてきたのもあって、予算の議決まで行くと36週になっちゃって危険だなと思ったので本会議が終わってきりがいいところで取りました。
(本目)産前、私の場合は自分の意思でギリギリまで出ることにしちゃったんだけど、休みたい気持ちもやっぱりあって。でも休んでると気になる、みたいなジレンマがあったな。
(中村)うんうん。私も産休中の今めっちゃ気になってるし、なんなら資料は読めるから読んで遠隔でお願いしたりしてる。
(本目)それって産休とはいえ、休めてないよね?
(中村)まぁでも休めてるかな。休み始めた当初1〜2週間はわちゃわちゃあったけど、今はもうほぼないから。
(本目)わちゃわちゃっていうのは、電話がかかってくるとか?
(中村)ううん、会派のLINEとか個別の連絡とか。私自身も事前に連絡をお願いしてたのもあったからね。とはいえ産休前と比べると時間はあるよね。
(本目)本会議や委員会は中継あるんだっけ?
(中村)ないのよ。でもそれはそれで良いかなと思って。やってたら見ちゃうから
(本目)そうそう、まさに私見ちゃってて。産後も気になるから、BGMみたいになるべくかけてたり。「あとで倍速で聞かなきゃ、キャッチアップしなきゃ」みたいな焦りがすごくあったんだよね。
(中村)わかるわかる。
(本目)中継や録画がなかったらそれも物理的にできないもんね。議事録見るしかない。
■休み中の仕事の線引きどうしてる?
(本目)それ以外にも、産休中の議会との関係や議員活動ってどんな感じ?地元活動との関係みたいなのすごく難しいなと思っていて。
のぶちゃんの場合議会は休んで、でもX(旧Twitter)はわりと更新してるよね?
(中村)「産休入ってます」っていうのは公表した上で、気になることがあったら投稿はしてるかな。
(本目)リポストとか?
(中村)リポストもしつつ、あと代わりに質問してもらった予算の件で答弁が出てきたものは投稿した。HPVの接種率とか。
他にも書きたいことはいっぱいあるんだけど、一応休み中だし最低限にして、私じゃないと書かないことでいろんな人が知りたいだろうなと思ったことを投稿してる。
(本目)なるほど。産休入ったからといって、なかなか離れられる仕事じゃないよね。仕事的に生活とも密接につながってるし。
(中村)そう。自分が生活する中で区政について感じることもたくさんあるから、「これはどうなんだろう」と疑問に思うと、つい問い合わせたくなってくるんだよね。
(本目)問い合わせって、電話もするの?
(中村)今回一件気になることがあったんだけど、電話はしないでおいた。人づてに確認してもらって。
(本目)なるほど。産休中は役所の人になるべく電話をしないっていうのが自分の中での線引きなんだ。
(中村)そこまで厳密に考えていたわけではないけど、一応自分からはあんまりしないようにはしてるかな。
(本目)なるほどね。そこは私違ったな、気にしてなかったな。そういうふうに線引きをするんだっていう一例として、聞いていておもしろい。
(中村)私は産休って公表してるしね。
(本目)私は公表してなくて。議会には出産直前に届けたかな?
なるべく休みたいって、届けを出したけど、議決的なところがあって出ざるを得なくって。休むって届け出してるけど出てるみたいな、よくわからない状況だった。
(中村)そういうのもあるよね。私は産前より産後の休みを大事にしたくて。
実は第一子の産後に嫌な思いをしたので、もう二度とあんな思いをしたくないから、産前だったらある程度なら連絡してくれていいよとは言ってたけど、「産後はダメですからね」っていうのは念を押して会派のメンバーにも伝えてた。「産後は音信不通になりますから」って。
(本目)なるほど、そうよね。
(中村)そういう環境は作ってきた。
■味方を作るコツ
(本目)今の話を聞いていると、のぶちゃんは他の議員とも「味方になる」というか、うまく関係を築けてる気がするんだけど、なんかその辺のコツはある?
他の議員の話を聞いていると、後輩が年上でうまくいかないみたいなことを言ってり。もちろん、個人の性格やキャラクターもあるとは思うんだけど。
特に同じ女性との信頼関係を築くために、妊娠・出産においてフォローしてもらうみたいなのも含めてどういうことを心がけてた?
(中村)まずすごいさかのぼると公認の時からこの人たちと一緒にやっていけるかっていうのはすごい見てるよね。
あと後輩が産んだときに私は全力で守った、っていうのはあって。
(本目)後輩は同じ党?
(中村)ううん、無所属。その後輩が妊娠中の時に、私が出産経験者だから他の人から質問されることも多くて、その質問が的を外れていたりすると全力で守ったり。
さっきもちょっと話したけど、自分も一人目の出産後に嫌な思いをしたんだよね。で、やっぱりああいう思いだけは絶対したくないし、他の人にもしてほしくないと強く思って。
そんな中第二子を希望してた時も、私が幹事長を引き受けざるを得ない状況の中で引き受けたことを女性陣が特に買ってくれてる、というのはあって。
子どもが一歳から三歳ぐらいまでの間の大変な時期に、一番激務を引き受けたっていうところに理解してくれて、信頼関係が築けたかな。
そうした事情もあって、幹事長を勤め上げた後は「次はもう絶対妊活しますから」みたいに宣言してて、もちろん会派の仕事はやるけど、妊娠第一でいきますっていう意志をみんなにちゃんと理解してもらいながら不妊治療を再開できたかな、というのはあります。実際に妊娠できたときもすっごいみんな喜んでくれたし。
そこはありがたく、そういう状況が作れたかなとは思います。
(本目)しかものぶちゃんの会派は比較的年齢層若いよね。そういう意味でも話が通じやすい環境はある気がする。
(中村)そうだね。お互いにフォローし合う、補い合うみたいな雰囲気の会派にはなってると思う。
(本目)妊娠中って、会派会議は基本役所に行ってやってた?
(中村)基本役所に行くけど、うちはオンラインも可能だよ。
(本目)体調とか、どう判断してオンラインかオフライン参加か決めていた?
議会自体は基本リアルじゃないと委員会とかに参加できないし、役人との会話も基本はリアルか最悪電話になると思うんだけど、会派会議はメンバーによってはオンラインが可能だったりするよね。のぶちゃんの場合はどんな感じだった?
(中村)初期の頃は若干体調悪い時もあったけど、まだ妊娠を伝えてない時はちょっと言いづらくて、私はオンラインにしてもらったことはほぼなくて。
(本目)ああ、そうなんだ。
(中村)でも子どもが熱出したとか、どうしてもこの日の午前中だけはちょっと厳しいとかでオンラインにしてもらうっていうのはあったよ。うちは割と会派の中ではそこは柔軟で。
(本目)他の人がオンラインで参加することもあった?
(中村)あったあった。
(本目)なるほどね。でものぶちゃんは、オンラインでできても結構役所に行ってたんだね。
(中村)ずっと行ってる。ほ産休入るまではほぼ毎日。たぶん会派の中で一番行ってたんじゃないかな。
(本目)頑張りすぎじゃないでしょうか?
(中村)そうだね(笑)役所とのやり取りも全部綺麗に終わらせてきてるから、今回は結構すっきり産休に入れた感じ。
■調整業務の忙しさと妊娠
(本目)話を聞いてて妊娠中もすごい忙しそうだと思ったのだけど、産休前は夜も働いてた?日中、保育園預けてる間だけでやれてた?
(中村)基本は保育園預けている間だけかな。でも原稿書きたい時とかは、集中しないとできない人だから、朝早く起きたりすることもあったけど、やっぱちょっと妊娠中はちょっときつくて。みんなが視察行ってる間はすごい静かだから、控室で一人でカタカタやったり。
(本目)なるほど。たしかに、それなりに年数重ねてると議会が始まった時点で、いろんな情報や調整事項や相談事項が入ってきてバタバタするよね。でも幹事長じゃなくなったから少しはまし?
(中村)幹事長じゃなくなったけど、いろいろ受けたりはしてたかな。産休に入る直前の1〜2月くらいまで、会派がバタついてたのもあって。
(本目)だいぶお腹も重い頃だよね。そういう調整も最後の最後やって、妊娠後期も忙しかったと。
(中村)さすがにやばいと思ったけど、もうしょうがないよねって。控室いるときに要所要所で「私、後期妊婦なんですけど」って冗談みたいに言ってた(笑)
(本目)妊婦と育児と仕事の三立みたいな話を、前回からずっとしてたけれど。今の話を聞いてると、会派の調整も含めていろいろ入ってくる調整業務って、保育園に預けてる時間内で終わらすって結構ハードな気がしていて。
調整だけで終わって自分の政策的なところが追いやられる気がするんだけど、その辺のバランスはどうしてた?
完璧に全部詰め込んで産休に入っているように聞こえるのね。
(中村)政策的なところでは、なんていうのかな、私としては日常的に考えていることだから、まとめて時間を取らなくても良いというか。スキマ時間に人と話したり、考えていることをパパっと原稿に起こして言語化したりっていう感じかな。
でもこれは幹事長をやってあまりの激務に慣れちゃってるだけかもしれない。スキマ時間にいろいろやることを覚えたのかも。
■産休前の一日のスケジュール
(本目)産休前の一日のスケジュールについて。日によって違うとは思うけど、例えばでいいので、朝起きてからのスケジュールを教えてほしいです。
(中村)まず朝6時半ぐらいに起きて、保育園は9時からだから、子供を起こす8時までは自分の支度は全部終わらせる。
でも原稿書く必要があるときは、その一時間ぐらい前に起きて。
(本目)5時半に起きて。
(中村)6時ぐらいから原稿書き始めて、7時10分ぐらいから準備を始めて、8時には自分が整ってる状態を作って。
で、子供起こして準備して8時50分ぐらいかな。うちは朝の送りは基本的に旦那が行くので「よろしく!」って送り出して、だいたい9時ぐらい。その後家の片付けとか乾燥機回すとか家事をパパっと。そして9時15分ぐらいに家を出て、9時半過ぎに控室に着くみたいなのが日常かな。
(本目)役所までバスで行く?
(中村)基本はバス。でも妊娠前は自転車で行ったりもしてた。
(本目)じゃあ妊娠してからバスになって、バスの中では仕事する?
(中村)携帯はずっと見てる。Xのポストしたり。
(本目)そこで情報収集したりもするよね。Xとかニュースで、あー今麻疹流行ってるんだとかがわかったり。
で、バスで役所に着いたら、9時半ぐらいから調整も含めた仕事時間に。
(中村)そうだね、電話かけたり。10時前くらいからは来客がブワーって来る時もあるし。でも何もないときもあって、そういうときは片付けしたり。
(本目)役所には何もアポがなくても行くの?
(中村)行くことが多いかな。本っ当に何もない日は行かないけど、週に3回は確実に行ってたね。なんか不安になっちゃうんだよね。
(本目)何が不安?情報が得られないこと?
(中村)そうそう、いると全部情報入ってくるから。
(本目)そうなんだよね。でも、私はしんどくて妊娠後期は基本家にいたかな。会派会議もオンラインにしてもらって、委員会も中継してくれるし、家で聞いてたことが多かったかな。でもたしかに、それだと新規の情報は入りづらいんだよね。
(中村)うんうん。あと何かしら1個2個役所じゃないとできない予定があったり、どうしても幹事長と調整しなきゃいけないとか、今日のうちに議長に話しとかなきゃダメとかになると「結局行くか」ってなる。
(本目)そういうときは議長や幹事長にあらかじめアポ取っとくの?
(中村)取らない取らない!役所行って「今いいですか?」みたいな感じで話しかけてる。
(本目)なるほどね。のぶちゃんの場合はやっぱり実績を重ねてるからこその「役所行っとかなきゃ」みたいなのがある気がする。例えば新人さんの立場だったら、役所に行ったところでその情報が全部入ってくるかはわからないよね。
(中村)そうだね。だからこそ情報収集のカバーをするためにも行っておいた方がいいという思いで意識的に行ってたかな。あとは議会の前後は予めのアポが無くても、何かがある可能性が高いし。その辺は勘だよね。
(本目)そうだよね。その「なんとなく」でのぶちゃんは動けてるけど、明文化されてないし、ふわっとしてるところはあるよね。
そんな感じで忙しく仕事をして、一日の終わり、帰りは何時くらい?
(中村)帰りは5時半ぐらい。マックス5時40分かな。じゃないとお迎え間に合わない。
(本目)じゃあお迎えはノブちゃんなんだ。
(中村)基本的には。
(本目)お迎え行って、買い物が必要なら買い物して。
(中村)そうだね。だいたい6時半ぐらいに家について、夕飯かな。
(本目)あとはご飯食べさせて、寝かしつけ?
(中村)ご飯食べさせて風呂入れて。寝かしつけはうちの子寝ないからすごい時間かかるんだよね。だから子どもが遊んでる間にまたちょこちょこ人と連絡取ったり、本当に忙しい時は電話で話したりもするかな。
■出産と産後の予定
(本目)いま37週ということだけど、いつ産むかは決まったんだっけ?
(中村)今日この後病院行って入院日が決定するけど、38週でとは言われている。
(本目)とりあえず今までなんとかお腹にいてくれてよかった。体のトラブルはどう?足がつったりとか。
(中村)途中あったけど、今は大丈夫かな。だけど肌がすごく痒い。お腹大きくなりすぎてるんだと思うんだけど。
一人目が36週と1日で生まれてるから37週は未知の領域なのよ(笑)花粉症も相まっててどっちかわかんないんだけど、一日3回ぐらい保湿しててそれでも痒い。
(本目)出産後は産後二ヶ月で復帰予定?
(中村)一応。だけど庁舎の引っ越しがあるので、一ヶ月検診が終わったぐらいで1回顔出そうかなとは思ってるところ。
(本目)保育園はどうするの?
(中村)保育園は上の子と同じとこに6月から入れるつもり。空いてるから入れるんじゃないかなと。
(本目)空きがあるんだ。
(中村)大丈夫だと思う。ベビーシッターという手も考えてるけど。
(本目)そういえば前回は逆子だったって話してたよね?それはどう?
(中村)これが笑えるんだけど、28週で逆子で32週で治って、また34週で逆子になって36週に戻った(笑)
(本目)ゴロゴロやってるねー。じゃあ戻ったから、計画の無痛分娩の予定っていう感じだ。
また無事に生まれてから状況も含めてお話聞けたらいいな。無事の出産をお祈りしてます
(中村)怖いけど、がんばるね!ありがとう。
■次回予告
以上が、のぶこさんが産前休業中の妊娠37週(2024年3月)の記録となりました。
次回はのぶこさんが産後1か月を過ぎた頃の、2024年5月の記録をお届けします。私たちの記録が後進のみなさまの参考になれれば幸いです。
また、不妊治療と議員の仕事に関しては、中村延子さんのHPのブログでも経緯や決断の背景が詳しく書かれております。そちらもぜひご覧ください。
📕現職地方女性議員の「選挙と妊娠」 シリーズ一覧はこちら
https://note.com/womanshift/m/m51f15f71b7ac
編集:平理沙子(WOMAN SHIFTプロボノメンバー)
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