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雪模様

死体がしくしく泣いていました
粉雪は大地をなぐさめ
冷気が記憶の末尾を凍結しています
彼女の血管 そこを幾たびも
親しい輪廻の脈動が
ここだよ、と笹舟の揺らめきを見せ
揺蕩っている
街角の希望売りは
こことはなんの縁もなく
すべすべしたほっぺを明かりに潤ませ
ろうそくの火を
ろうそくに移している

死体がしくしく泣いています
茫とした土の広がり
吐息 小石 影 ららら
彼女はもう「彼女」でもない
はるか空の遠く 白く真っ平らな空
銀色のスプーンでその一部をすくい
飲み下したい
しくしく しくしく
しずくの鏡
あなたはだあれ?
私は私 綺麗な私
まったくまったく私なの

粉雪がいつまでもいつまでも
降りそそいでいます

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