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テクスチャーというパラメーター Great Notion Brewing Ripe IPA

2017年に飲んだIPAの中で一番旨かったのがGreat Notion Brewing Ripe IPAでした。問答無用でこれ。ぶっちぎりです。ポートランドに行ったらGreat Notion Brewing(グレートノーション)には絶対に寄って下さい。後悔はさせません。

Great Notion Brewingは自家醸造を趣味とするオーナーたち3人が地元に立ち上げた若いブルワリーです。公式ウェブサイトのaboutのページにある通り、Hazy IPA、そして料理からインスパイされたサワーエールとスタウトばかり作っています。

We focus primarily on juicy, hazy IPA’s and culinary-inspired sours and stouts.

まぁ、随分とエッジの効いた液種ですね。ポートランドというブルワリー激戦区なので近隣との差別化として尖った液種ばかり作ることはままあることです。変化球なのかデッドボールなのか分からないものも結構ありますが、Great Notion Brewingに限ってはどれも抜群のクオリティです。現地でその日提供されていたものを片っ端から試したのですが、とにかく全部美味しい。その中でも今回挙げているRipe IPAは衝撃的な美味しさでした。ものすごい濁りのHazy IPAですが、雑味やホップの渋さはなくマンゴジュースを飲んでいると錯覚するほどのジューシーさで心の底から感動したことを今でも憶えています。現代クラフトビールシーンにおいて最も重要な位置を占めるHazy IPAの1つでしょう。満場一致でBest IPA of the yearです。

日本でもHazy IPAがここ数年たくさん作られていますが、Great Notion Brewingと比較した場合圧倒的に足りていないのが「マウスフィール」です。New England IPAやHazy IPAではホップ由来のフルーティな、特にトロピカルフルーツを思わせるアロマがあり、ふわふわと柔らかいソフトな口当たり、そして飲むと苦味のないジュースのような液体を私の中では理想としています。日本の多くのものはアロマはあるし、ジューシーさもそれなりにあるのですが、どうしてもボディが無くて水っぽく感じられてしまうのです。ホップの乗せ具合のバランスからそう感じられる場合もなくはないのですが、基本的にマウスフィールが足りなくてボディが弱い。意図せずシャープな感じになっているような気がします。インターネットで探せばクローンレシピがたくさん出てきますし、一部オーツや小麦を使用することはよく知られていて皆さんそうなさっているのですが、どうしてもあのマウスフィール、あのテクスチャーにならない。

そして、もう一点指摘しておきたいのは「大根おろしを思わせる、飲み込んだ時に感じるピリピリした辛味がないこと」です。もう少し研究しないと断言は出来ないのですが、外国で言われている”Hop Burn”(ホップバーン)というものなのだと思われます。国を問わずNEIPAには結構感じるもので個人的には本当に嫌いな風味です。Ripe IPAには一切ありませんでしたが、あれがあると本当に凹みます。飲む前のアロマで期待が膨らみ、飲んだ瞬間ジューシーさにうっとりするのですが、最後にあれがあるとあちゃー、やっちゃった・・・という感じでガッカリするのです。喉が焼けるような感じで、全く飲みきれない。しかし、SNS上ではあの大根おろし味も含めて高く評価している方もたくさんいらっしゃるようです。あの風味がデフォルトであると認識している人がそこそこいるのだと思うと何だかやるせない気持ちになるのです。ブルワーの皆様には一度Ripe IPAを召し上がって頂きたいと心の底から思います。

New England IPAやHazy IPAと呼ばれるIPAの一群はホップによるジューシーさを突き詰めていった結果生まれたスタイルですが、その前提に「柔らかいマウスフィール」というテクスチャーがあるからこそホップを受け止められるのだと考えています。テクスチャーというパラメーターが増えたことでIPAは新しい領域に入ったのかもしれません。あのテクスチャーが認識されたからこそ、New England IPAをより甘く重く寄せていったMilkshake IPAが成立したようにも思います。味覚、嗅覚だけでなく、触覚を意識させるIPAと表現したくなるのです。

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CRAFT DRINKS代表。craftdrinks.jpにてクラフトビールを中心に情報発信中。keykegの販売、米国Full Sail Brewing取扱い。日本初の樽生清酒やシードルを開発。東洋経済に寄稿したり、本書いたり。https://amzn.to/3gKGN1R

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コメント (2)
私もGreat Notionのヘイジーを飲んだ時の衝撃を今でも鮮明に覚えています。マンゴーラッシーを飲んでるかと錯覚しました。
おっしゃる通りホッピーなビールにたまに感じる辛味はGreat Notionには全くなかったと思います。国内のヘイジーの作り手にはこの辛味が結構感じられることが多く、これ原因についてはとても気になっています。
やはりホップの使い方や種類になにか違いがあるのでしょうか?
コメントありがとうございます。
あの辛みについては水質調整やドライホップの条件があると推察されます。時間と共に減退する気もするのですが、その分アロマは落ちるので判断が難しいところですね。
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