ありがとう
AOCにまつわる話は色々とある。愉快な処では、この世で一番美味しいアリゴテを造ると言われるシャブリのアリス エ オリヴィエ ドゥ モールが、2007年にAOCから落とされた時の逸話がある。AOCから落ちれば、ラベルにアリゴテの名は表記できない。そこでアリスとオリヴィエは考えた。そして、新たなラベルを作成した。そのラベルには、グラスに縄がかかったデザインが施され「A 〝LIGOTER〟」と記されていた。因にLICOTERとは「縄で縛る、束縛する」といった意味だ。つまり、AOCに束縛されて「ALIGOTE」と表記できない、と皮肉ったわけだ。正に、オーレ!。
ところが、話はそこで終らなかった。2008年に再びAOCを落とすと、今度は「A 〝LIGOTER〟」から「A 〝L〟IGATO-O」へ変更。意味はもろに「ありがとう」だ。そして裏ラベルに名前入りでの協力者への謝意(MERCI)を表明、忌々しい国フランスに対する最大限の皮肉を込め、「ALIGOTO-O」は日本語の「ARIGATO」の発音に最も近いフランス語表記だ、とやらかした。ブラボー!が、オリヴィエたちの輸入元は「これはまずい(って何が?)」と、ラベルを張り替えてしまった。心算無視の営利優先、ああ嫌だ、情けない。
私は、日本語の「ありがとう」の啓蒙運動をしている。日本人が日本語で「ありがとう」と謝意を表して何が悪い。THANK YOUなどと言う必要など、どこにもない。それに「ありがとう」の認知度はすでに結構高いし、「ありがとう」と言われて嫌がる人はいない。勿論、私たちは自分のいる場所次第で、「メルシ」、「グラシア」、「グラーツェ」、「オブリガード」、「フヴァーラ」、「エフカリスト」、「マドゥロバ」等々、各国の言葉は使い分けるけど、英語は極力避けている。そもそも、何故英語を使うんだ?私たちは英語圏にいるわけじゃないんだ。
公私で世界中を駆け巡り、後々私たちを自然派へ導くことになるルカの三つの原則、
「人生は美しい」
「問題ありません」
「ありがとう」
この三つを現地の言葉で言えば、何処でも誰とでもうまくいく、というのが彼の信条だ。全くその通りだと思う。口先のLOVEなんて誰も必要としていない。
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