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メガソーラーは本当に環境に優しいのか

熱海で土石流災害が発生しました。被害に遭われた方にかける言葉もありません。
その一方で三浦半島でも逗子の横浜横須賀道路の土砂崩れが報じられましたが、他にも何箇所かで小規模な土砂崩れが起きていたようです。その中の1箇所がメガソーラー建設予定地とのこと。熱海でもメガソーラーとの関連が取り沙汰されている最中ですが、今のメガソーラー開発はちょっと考えさせられるものなのを知ってしまいました。

環境に優しいといいつつ、環境破壊

先に断っておきますが、熱海の土石流災害がメガソーラーに起因しているという話をしたいわけではありません。その件については、これから調査されるかと思いますので、その結果を持って議論すべきことかと思います。

話を戻して。
新年に近くの山に登って三浦半島を一望するのが恒例でしたが、ここ数年はなんとなくサボっていました。その最後に行った数年前も、山を削って宅地開発しているな、と感じていました。
ご存知の方もいるかもしれませんが、横須賀市は市として人口流出No.1という不名誉?な記録も打ち立てたことがあるくらい、人口が減っており、空き家が増えている状況です。その中で、宅地開発なんかしてどうするのだろうという疑問を感じていました。

山を切り開いた不便なところに人は来てくれないのを察したのか、最近は宅地開発をやめてメガソーラーという流れがあるようです。
その流れかどうかは知りませんが、すでにいくつか市内にメガソーラーができていますし、これから建設予定のところもあります。

その一例がこちらです。

横須賀市の西岸の山を削ってソーラーパネルを並べたところです。そのホームページの謳い文句はこのようになっています。

地球の、そして地域のこれからのために。
環境にやさしい太陽光発電をいつまでも。

美しい海とともに、この空も、永遠に美しいままであってほしい。佐島が丘メガソーラプラントは、そんな自然環境に対する思いから、湘南サニーサイドマリーナがオープンした太陽光発電所です。民間資本100%(総事業費約12億円、補助金無し)によりつくられたこの施設は、神奈川県内で最大規模を誇ります。
地球温暖化を招く二酸化炭素をまったく出さないクリーンなエネルギーを地球の多くの人々へ。そして、果てしない青い空と海が続く未来へ。
一日365日、ずっとずっと送り続けていきます。

Googleマップによる現在の衛星写真がこちらになります。

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そして、これが2007年当時のその辺りの航空写真です。こちらは国土地理院の空中写真サービスから切り取ったものになります。

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現在の写真の右下の「佐島の丘」という文字があるあたりにトラック状の道路がありますが、2007年写真右下の部分がそこになります。
現在、ソーラーパネルが並んでいるところが森であったことがわかるかと思います。「美しい海とともに、この空も、永遠に美しいままであってほしい」としながら、その海を豊かにし、二酸化炭素を吸収して酸素を生み出す山や森を切り崩してソーラーパネルを並べることが「自然環境に対する思い」なのでしょうか。

ただ、そこは流石に反論を考えてあり、以下のように記載されています。

削減効果と同じ量の炭素を吸収するのに、東京ドームの約93倍、当発電所パネル設置面積の約217倍の広大な森林が必要となります

つまり、この会社が試算したソーラーパネルが生み出す電力を生み出すために必要な火力発電所か何かの生み出す二酸化炭素を吸収するには、この切り崩した山の面積の217倍が必要なのだから、大したことないと主張しているようです。

この佐島の丘あたりにはいくつか大規模な開発が行われています。Googleマップを見れば大きなマンションがありますし、京急が横浜YCATまでのリムジンバスを運行しています。確認していませんが、ここも宅地開発ではうまくいかないので事業転換したのかもしれません。

単に二酸化炭素の処理量の比較だけで良いのか?

朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」は気象をテーマとしています。その劇中でも、海と山は繋がっている、というセリフがありました。気仙沼で牡蠣の養殖をしている主人公の祖父は、気仙沼から離れた登米の植樹に参加したりと、登米の人たちと交流を持っています。その理由を問われて、海と山は繋がっている、という話だったかと思います。

山は山、海は海ではなく、山で樹が育ち、その山や樹が水の流れを整え、ミネラルといった栄養分が水に染み出し、その水は川を流れやがて海へと流れ込み、そこに住む生物の栄養となるわけです。

単純に二酸化炭素削減量が217倍だから、そこにある森を伐採してソーラーパネルを並べて良い、その方が効率的だという主張には疑問を感じます。

谷戸を埋めてソーラーパネルを建設予定

単に山を切り開くだけではありません。横須賀で現在進行中(本当に進行中なのかよくわからないのですが)のメガソーラーとして、湘南田浦メガソーラー事業というものがあります。

その資料は横須賀市が公開しています。ここは一部で有名な廃村があったところだそうで、元々は宅地開発が予定されていました。しかし、諸処の事情で頓挫した挙句、メガソーラーに形を変えました。
そのメガソーラーは上記の佐島のメガソーラーの倍の面積に2.6倍のパネルを並べる計画になっています。そのために、横須賀の特徴的な地形である谷戸の山を崩して谷を埋め、平坦な土地にする計画です。

谷戸については、横浜市のサイトが詳しいです。横浜、鎌倉、逗子、横須賀等に点在する地形です。こういう発信ができないところも横須賀市らしいところです。


計画が再三変更されているようで、以前に言われていた稼働時期をすでに過ぎていますが、公開資料の中では以下のような図面が掲載されています。

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地図を切り抜いた上端部分に右端から左の方へほぼ水平に横須賀線の線路があります。右が田浦駅で、左のトンネルを抜けた先が東逗子になります。
余談ですが、そのトンネルの逗子市側出口のそばに横浜横須賀道路の逗子ICがあります。
地図の等高線を見ると起伏に富んだ地形で丘陵部と谷が複雑に入り組んでいるのがわかるかと思います。Googleマップで見てみましょう。
真ん中のJR田浦変電所や、右側の田浦小学校が共通しているので、比較できるかと思います。この凸凹の土地の高い部分を削って谷の部分を埋めるので、残土は出ないという計画になっています。

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横浜市の谷戸の説明を見ていただけばわかる通り、この谷筋は川筋の跡になります。熱海の土石流でも谷筋を埋めた盛り土が流出したと考えられるという報告が出ています。当然、盛った部分には擁壁を作るなど対策をするのでしょうが、異なる地層の接合部分は弱くなるかと思います。

神奈川県の断層マップによると、この辺りは泥岩層みたいです。活断層直上ではないですが、近くではあります。泥岩層なので塊になっている部分はそれなりに強度はあるでしょうが、谷の稜線とかは風化が進んでいそうです。

横須賀でも土砂災害

土砂災害警戒情報は横須賀市でも出ていたのですが、市は避難指示を出しませんでした。ただ、上記の田浦メガソーラー工事地区で土砂崩れがあり、そのために自主避難の要望があり、一時的に田浦行政センターに自主避難所が開設されました。ただ、結局避難希望者がおらず、閉鎖されたとの情報がありました。

こういう谷戸の縁の部分は土砂崩れが起きやすく、昨年の大雨でも繁華街のすぐ裏の山で土砂崩れが起きています。

ハザードマップによれば、田浦メガソーラー予定地は崖崩れや土石流の警戒地域になっています。線路側に点在している薄い黄色が崖崩れの警戒区域、薄いオレンジが特別警戒区域、黄色の斜線網掛け部分が土石流の警戒区域です。この谷筋を埋めてソーラーパネルを設置する計画です。

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なお、このハザードマップを見れば横須賀市内のかなりの範囲が崖崩れの警戒区域や特別警戒区域になっています。そして、土砂災害警戒情報が出ており、大雨警報も3日間発令されては解除され、また発令されというのを何度も繰り返しました。その中で、横須賀市は一度も避難指示を出しませんでした。
幸い、何箇所か土砂崩れがありましたが、被害はなかったようです。結果論ですが。

簡単に山を切り開いて良いものか

広島市の土石流の時に、川筋を宅地開発した部分の危険性が話題になりました。それなのに、予算がないからと放置されているところは日本各地にたくさんあります。
熱海の土石流についても、メガソーラーやその手前の宅地開発のためと報道されている盛り土部分(実際に土石流の起点になったとされている)が土石流の発生、ないし、被害の拡大に影響したのではないかと言われています。
※現時点での因果関係は不明です。念のため。

その真偽は不明ですが、専門家によればあのあたりは元々火砕流の後で土砂災害が起こることは想定されていたとのこと。そんな場所を切り開いてメガソーラーを建設し、それをもって二酸化炭素を発生しないから環境に優しいというのは、本当なのでしょうか?

荒地や耕作放棄地などの有効活用というのならばまだわかるのですが、今ある森を開き、山を崩し、谷を埋めて地球環境に優しいという理屈は、自分にはあまり理解できないです。

以前に飛行機によく乗っていた頃、羽田に向かう際に房総半島上空を通りました。その緑の山々の所々にゴルフ場があり、大地に対する爪痕のようでした。それが今はメガソーラー。電気は生むが雇用は生まないと思われるメガソーラー。しかも、外資系も多いメガソーラー。東電等が買った電力の費用で外資が儲けるという現代のプランテーション。
経年劣化でいつかは交換が必要だし、台風、大雨の災害がどんどんひどくなる状況で、メンテナンスをしていくことができるのか。売電価格は一時国策で吊り上げましたが下がる一方なのにどうするのか。破綻したメガソーラーを誰が維持ないし解体するのか。横須賀市民なら誰でも知っている塩害についてもどこまで対策しているのか。

色々と疑問は尽きません。

拙い記事でございますが、サポートしてもよいよという方はよろしくお願いします。著者のやる気アップにつながります。