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14/16インチMacBookProは現代のラップトップ

日本時間2021年10月19日午前2時からのイベントでMacBook Proの上位版が発表されました。これに合わせてMacBookProのIntel版がストアから消えて、Appleのいう2年でIntelからApple Siliconへの移行の 1年目を締め括りました。おそらく、来年には残るiMacやデスクトップもIntelからApple Siliconに移行して完了する見込みかと思います。

そんなApple Silicon版上位MacBook Proについてつらつら書いてみます。

ノートPCカテゴリでも性格が全く違う

昨年のM1搭載の13インチMacBookProと、今回の14/16インチMacBookProは同じノートPCのカテゴリの製品ですが、性格が全く異なります。13インチはモバイル向けで、14/16インチは非モバイル向けです。ここではラップトップと称することにします。元々モニタからキーボードから一体になっている可搬型コンピュータがラップトップ型であり、それが小型化して楽に持ち運べるようになったのがノート型です。某バブル時代をネタにした芸人さんが、現在の携帯電話やスマホの先祖であるショルダーホンをネタにしていますが、あんな感じです。
持ち運びができないこともないのがラップトップ型で、バンバン持ち運ぶのがノート型と入っても良いかと思います。

この辺りは搭載しているM1とM1 PRO/MAXの違いからもわかります。詳しい説明は以下の記事がわかりやすかったのでそちらを参照してもらうとして、M1は処理能力の高さもよく言われていますが基礎は低消費電力重視の設計ですし、今回のPRO/MAXは消費電力は意識しつつもパフォーマンス重視です。

13インチと14/16インチは価格や性能が違いますが、そもそもターゲットが違うというのは重要です。プロ向けとそうでない人向けという説明をされる方もいますが、自分の考えは違います。そもそもプロって何ですか?って感じますので。

M1搭載13インチは持ち運んで気軽に使うモバイルパソコンです。Web閲覧、動画再生といったものから事務作業まで、多くの作業はこれだけで済んでしまいます。
一方、14/16インチは持ち運んだり簡単に片付けることができるデスクトップコンピュータに近いパソコンです。iMacとかデスクトップ型のMacにモニタつけたりしたものは決まった場所に据え置きで使うことになりますが、そういう決まったスペースがなくても、普段はどこかにしまっておいて使いたい時に使う、けどモバイル向けよりは大きな画面とかパフォーマンスが欲しい、という人向けです。

なまじM1自体の性能が良いのと、M1 PRO/MAXでグラフィック面をだいぶ強化したために、14/16インチは一部で「これはクリエイター向けだ」、「一般人にはオーバースペックなプロ向けだ」とかいう声が上がっているようです。
でも、それはApple社のマーケティングの都合であって、本質はそこじゃないよね?というのが自分の意見です。そこは先代のIntel版上位MacBookProから変わってないと思います。
そもそも、本気のプロのクリエイターはMacBookProじゃなくてデスクトップ使うでしょ?今回のMacBookProは化け物だ!みたいなことを言う人がいますが、それはあくまでノート型(ラップトップ型)カテゴリの中での話です。本気のプロ向けユースになんか力不足です。

心配な点

昨年のM1搭載MacBook Air/Proは「Appleの初物だからなぁ」と言う心配の声をよそにわりかし好調なスタートを切ったと思います。もちろん、本気のプロ向けとしては力不足だし、必須の機能が抜けてたりして移行できん!という方が多かったでしょうが、普通の人が使うには十分だったし、深刻な問題もなかったかと思います。

ただ、今回はパフォーマンスを上げてきたので心配な部分がいくつもあります。

多くの声があるのが冷却問題です。M1搭載MacBook Airはファンレスでも十分使えましたし、MacBook Proは通常使用ではファンが回ることは少ないです。少ないものの、重い処理をすればファンが回るし、特に充電しながらだと夏場はそれなりにホットになります。触れないほどではないですけど。自分も13インチMacBook Proを使っていますのでそこはわかります。

今回のM1 PRO/MAXは発熱要素てんこ盛りです。
CPU部分で言えばコア数だけ見ればM1の8コアから10コアになって2しか増えてないように見えますが、発熱の大きい高性能コアが4から8になり、発熱の少ない高能率コアが4から2になっています。真偽不明ですが高性能コアの消費電力は高能率コアの10倍とかいう話もあったので、高能率コア1個の消費電力を1とすると、M1の44から82に倍ちかく増えることになります(大雑把な単純計算なので目安です)。
一方でGPUも8コアからPROで16、MAXで32とそれぞれ2倍、4倍となっています。GPUコア自体はM1と同じものと言われているので消費電力もGPU部分だけで2倍と4倍です。
メモリのバス幅も増えているのでそこも消費電力増加要因になるし、メディアエンジンというものも増えています。
Appleは詳細値を公表していないですが、TDPと言う設計上の熱量の数値があります。M1は10〜15Wと言われていますが、M1MAXは35〜45Wなんて話もあるので、3倍くらい発熱することを想定して設計していることになります。

上にも書いたように持ち歩きを想定していないと思われるこのクラスで薄さにこだわるよりも余裕を持たせた方が良いように思いますが、デザインにこだわりがあるApple社はどうしても冒険しがちです。過去にそれで何度も問題を起こしているのですが。

M1 PRO/MAXは生産性低そう

イベントでM1/PRO/MAXのダイサイズの比較写真が出てきた時にはちょっと驚くとともに笑ってしまいました。M1 PROはM1の倍くらいあるし、MAXはさらにその倍です。厳密にはM1とM1 MAXは3.5倍らしいです。これ見て、思わず歩留まり悪そう、と思ってしまいまいた。

半導体チップを生産するシリコンの円盤のサイズは決まっているので、そこに多数のパターンを書き込んで切り出してチップを製造します。M1の倍のサイズのあるPROは 1枚のシリコンウェハーから半分しか取れないし、MAXは1/4しか取れません。しかも、製造時の不具合等で切り出したチップの全てが正常品にはならないので、サイズが大きいPRO/MAXの不良品率はどうしても上がります。これを歩留と言います。一般にサイズが大きければ歩留まりは悪化します。
同じ数だけ作るには原材料が増えるのでコストアップするし、不良品率が増えればそれもコストアップ要因です。複雑なものなので検査工程もコストアップ。さらに今の半導体不足でコストアップ。もうコストアップの塊です。

それでも、 1チップに何もかも詰め込めば性能的には有利になります。コストをかけてでもそこは妥協したくはなかったのでしょうと推測できます。そう言う点では確かにプロ仕様なのかもしれません。
実際、単にパソコンが欲しいのであればMac自体がオーバースペックなので、今更14/16インチMacBookProを殊更にプロ向けだとかオーバースペックだとか論うのはおかしいと思います。M1搭載MacBook Air/Proがなまじコスパもパフォーマンス自体も良かったが故に誤解を与えてしまった面もあるのかと感じました。

まとめ

なんやかやと騒がれる14/16インチMacBook Proですが、別にそんなに騒ぐほど化け物とかプロ向けとかオーバースペックなんてことはないですよ、Macとして見れば、というのが自分の結論です。

・下位版のIntel→M1のパフォーマンス差を考えれば、今回のIntel→M1 PRO/MAXのそれは順当(所詮はラップトップ型の範疇から踏み出すものではない)
・オーバースペック云々言い出したらそもそもMac自体がオーバースペック
・発熱増に伴う冷却性能があるのか、チップの生産性の低さが影響しないかは不安要素
・マーケティング優先のスペック盛り盛りの高コスト化はAppleらしいがお財布に厳しい

拙い記事でございますが、サポートしてもよいよという方はよろしくお願いします。著者のやる気アップにつながります。