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どのRPAツールを選ぶか

ITスキルとしてのRPA」の続きです。今回はどのツールを選ぶかについて書きます。

結局はどれでも良い

結論から言えば、どのツールでも構わないと言えば構いません。有名どころの汎用ツールでは、今や、どのツールでもできることに大きな差はありません。案件が決まっていれば、それで採用しているツールを使えば良いだけですし、考え方さえ学べば、他のツールにも応用なんてすぐできます。大切なのはツールではなく、止まらないRPAの作り方です。

とは言え、まだ案件が決まってないし、将来的に必要かもしれないから一般知識として学びたいという時には、どれを選べば良いのだろうという疑問はあるでしょう。ですので、自分の知識の範囲内でありますが、簡単に各ツールを紹介します。

WinActor

現状、国内市場ではダントツの1位です。と言っても、危機感は感じていて、色々次のステップへの手は売っています。

ただ、正直1かの3点からお勧めしません。
・将来性がない
・機能の不足が多い
・学習環境がない

まず、将来性。今回紹介するツールはどれもグローバル企業の製品で、世界市場で販売されているものです。研究、開発に欠けるコストもNTTグループの一企業の手がけるツールと比べたら段違いです。残念ながら、これから格差は開くばかりでしょう。
唯一、登場当初は日本語対応が売りでしたが、それも大体のツールは一部怪しい翻訳があるものの、日常使うのに困ることはないです。ツールによってはドキュメントとかまだまだ日本語になってないものも多いですが、そこは日本法人が頑張ってくれるのを期待しましょう。
(代理店ではなくNTTグループの)営業さんは日本企業らしい細かいサポートというのを強調されるのですが、正直、元電電の頭の硬さがいまだに残ってます。
サーバ管理機能も後付けのツギハギなので、どこかで刷新しないと破綻するのが目に見えてます。

次に機能面。例えばWebシステムにログインする際、他のツールでは画面の情報を拾い、ソースを解析して要素をピックアップして、それを元にボタンとかテキストボックスを特定できる仕組みが普通についています。
一方、WinActorは画面イメージを画像認識するのがメインです。画像が変わったり、画面レイアウトが変わった場合に追随できず、手直しが必要です。他のツールでは画像認識は最後の手段です。
と言っても、実はWinActorでも画面の情報を認識して動作させることは可能です。が、基本手動ベースです。HTML等の知識があれば、そういうこともできますよというレベルです。

最後に学習環境。企業に所属していたり、派遣社員でも会社の方で有償ないし無償のライセンスを提供してもらえれば、WinActorを使えます。ただ、そういう立場にない場合に、個人として修得しようとすると、体験版の入手が難しいです。一部のWinActorのセミナーでトライアル版を提供してもらえるものもある様ですが、それにしても30日か60日です。基本的に買ってもらえそうなところしか見てない印象があります。

その様なわけで、私見ですがあまりお勧めはしません。とは言っても腐っても国産。中小企業を中心に、ジャパンブランドのイメージによる採用は続くとは思うので、損ではありません。まあ、そんなイメージに惑わされる会社とはあまり付き合いたくありませんけど。
ドキュメントも日本語が当然ですし、コミュニティもそれなりに活発なので、勿体無いところはあるのですが、他のツールを知っていると、手軽さくらいしか売りがないのが現状です。
会社員時代に色々お世話にもなっているので、あまりネガティブなことは言いたくはありませんが、やってみようかと思う方は、いろいろ調べて納得した上で試してみてください。

UiPath

現状、国内市場2位、世界でもそれなりのシェアを持つのがこちらです。当初、英語UIで引かれる部分もあったりとか、WinActorに比べるとコーディングっぽい部分が強いので敬遠される向きもあったかと思いますが、ドキュメントや動画の日本語化を進めて、WinActorを追い上げているツールです。
まあ、自分はメインはWinActorとあとで紹介するAutomation Anywhereなのであまり使ったことはないですけど。

会社員の場合は会社に用意させるとして、個人の場合に期間の制限なく無償で使える環境が提供されているのも強みです。デスクトップ型メインでサーバ管理機能はオプションですが、WinActorと違って最初から提供されているものなので、後付け感も少ないです。

日本語対応も海外勢の中では早期から取り組んでいたので、現状、言語の壁を感じることも少ないかと思います。

ただ、ポリシー的にだいぶプログラミング寄りではあるので、WinActorに比べると必要なスキルがやや高くなるかと思います。まあ、所詮はマクロ言語レベルなので大差ないですが、知らなくてもある程度使えるWinActorと、知っていた方が断然良いUiPathという違いでしょうか。
でも、お付き合いのあった会社で、一からUiPathを導入してちゃんと成果を上げているので、マクロを使いこなせる人なら問題ないでしょう。できることもWinActorより幅広いです。と言っても、WinActorもVBScriptを駆使すれば、いろいろ出来ますけど。あれ、すごく大雑把に言うとVBScriptランチャーなので。

個人でも学習しやすく、グローバル企業でもあるところで、とにかく何か始めたいけど決められない、という場合はUiPathを選んでおけば、潰しは効くかと思います。

Automation360(旧Automation Anywhere Enterprise)

国内市場では3番手、4番手といったところに甘んじてはいますが、グローバルでは1、2を争うトップメーカーです。

最初の頃はマクロ言語みたいなコードを書く様な画面がメインだったので、ライト層を中心に敬遠されていましたが、あれ、やってることはWinActorと変わらず、コマンドを組み立てパラメータを設定するだけです。見た目がフローチャートっぽいか、マクロっぽいかの違いだけで、逆にテキストベースでバリバリ書きたいと思っても出来ません。

その反省からかA2019という現行バージョン(現在はAutomation360と名称変更)ではフローチャートっぽい画面がデフォルトになりましたが、正直、前の画面に慣れている人には見通しが悪くなって不評です。リスト表示に切り替えもできますが、それでも以前より一度に見渡せる範囲が減っています。

そのA2019になって、クライアントベースからWebベースにしたり、上述のようにフローチャートっぽい画面にしたりと、大胆な刷新ができるのが強みではありますが、ユーザとしてはついていくのが大変です。

しかも、旧バージョンの提供の打ち切りが発表されており、新バージョンへの移行ツールも不完全、かつ、移行後の作業も少なくないというか、手直し必須なので、猛烈に抗議した経緯があります。

まあ、その刷新のおかげで、新バージョンからは自分で拡張できたり(要Javaプログラミング)とかメリットもありますし、流石にここまで変えたら当分ベースのアーキテクチャは変えないと信じたいところです。
理想は高く、ユーザにもそれを求める節があるので、ついていくのが大変というのは覚えておいてください。細かいコマンドレベルの突然の仕様変更とか普通にあって、そのせいで動かなくなったり、誤動作したりがたまにあります。そのせいか、コマンドレベルでバージョン管理できる様になりました。
ですので、正直、大企業しか使えないと思うし、あちらも中小企業や個人は考えてないでしょう。

その割には、Comunity Editionという無償で制限なく使えるクラウド環境があるので、学習環境は比較的充実しています。各種資料は英語がメインですが、一応、邦訳もあります。古いままだったりするし、昔のマイクロソフトみたいに180度意味が違う誤訳も見かけたことがあります。なので、資料は必ず英文も目を通しましょう。
グローバルスタンダードなので、日本的な商習慣は通用しません。ユーザも平気で切り捨てますから、その辺りを理解した上で付き合いましょう。いや、会社員時代に日本法人の方にも色々お世話になったので、あまりネガティブなことは書きたくないのですが、そういうところはずっと文句を言い続けましたから。

Blue Prism

営業を受けた経験しかないので、細かいことは書けません。国内市場では当初の売り方が悪かったというのは営業の方も認めるくらい。そのせいか、後手後手に回って国内でのシェアは低いですが、グローバルでは1、2を争うトップメーカーです。最近、脱RPA宣言したりしています。それは、Automation Anywhere社も表立って言わないだけで同様ですので、業界の流れでしょう。要は自動化は目的ではなく手段で、ツールを使って業務改革を進めるのが目的である、という考え方になります。

他のツールでは開発環境がおいくらで、テスト等の環境も含めたシナリオ実行環境も数だけ必要でおいくらで、合わせてうん百万円です、っていうライセンスの考え方ですが、Blue Prismでは本番環境として使うシナリオ実行環境の数だけがライセンスの対象になるという、懐に優しい考え方になっているのが特徴です。
例えば、シナリオを作る人が3人いて、テストと本番で2つのシナリオ実行環境を用意する場合でも、Blue Prismでは本番シナリオ実行環境の数だけがライセンス費用になります。なので、当初は3人で想定していたけど、ちょっと開発者の人数を増やしたい、でも、一時的なものなので追加購入はちょっとなぁ…みたいなことがありません。開発ライセンス1本しか買えないから、皆で使いまわして、みたいなこともありません。

そんなわけで、財布を持っている人には嬉しいのですが、如何せん国内市場での出遅れ感は否めず、ちょっと惜しい状況です。学習環境も確かないと思いますし、Automation Anywhere同様、大企業御用達感が強いので、中小規模のところでは導入しにくい面はあるかと思います。大規模導入する際には、かなりイケてると思うのですが。

PowerAutomate Desktop版

マイクロソフトが突如Windows10への無償提供を表明したことで一躍注目を浴びたPowerAutomate。なお、PowerAutomateにはFlowとDesktopがあり、名前は同じでも用途が全然違うので注意してください。
FlowはOffice365の一部エディションには無償で含まれているもので、主にマイクロソフト製品間の連携を行うものです。例えば、RSSやメールをトリガーにできるので、マイクロソフト製品に限定されるわけでもないですが、事実上、そういう使い方がメインになるかと思います。私見ですが、SPOやTeamsでワークフロー代わりに使う流れかと思います。IFTTT等をご存知なら、こちらに近いものです。

所謂RPAツールに当たるのはDesktopの方です。従来は有償でしたが、Windows10への無償バンドルが発表され、現在は無償でダウンロード可能になっていることで注目を浴びています。Windows10ユーザなら無料で使えるのでRPAのとっかかりの勉強はこれが一番良いか、と思います。ただ、そもそも、これじたいマイクロソフトが買収してから買収してから日も浅く、日本ではそれ程普及しているツールでもなかったので、資料が少ないと思います。

また、無償なのはあくまでWindows10の話であって、Windows Serverで使うには有償ライセンスが必要です。また、Officeと組み合わせて無人運用する場合、Officeもそれ用のライセンスが必要です。個人用のOffice365ライセンスを流用した運用はライセンス違反になるはずなので、注意してください。その辺りの考え方はコロコロ変わるので、ついていくのも大変ですけど。

そんなわけで、一気にシェアを奪いに来た感がありますが、個人が自分の責任の範疇で使う分には良いと思いますが、企業としてRPAツールとして導入するのはどうかな、というのが個人的な感想です。

個人利用についても、いろいろ厄介な問題が起こりそうだな、というのは以前に「パンドラの箱が開いた。MicrosoftがPowerAutomate DesktopをWindowsバンドルへ」に書いています。使いこなせば便利なRPAですが、下手な使い方をすればかえって問題になるのは、他のツールと同じです。

どれを選ぶべきか?

自分は今RPAをやるべきとか思ってないです。その上で、一般知識として知っておきたいならどれを選ぶのが良いか、という意味ではUiPathかPowerAutomate Desktopかと思います。

RPAツールは今後大規模向けと、手元の業務の効率化のためのマクロに毛が生えた様なものに二極化していくと思います。そのどちらを自分のターゲットにするかを決めれば、自ずとツールは絞られるかと思います。大規模向けは人間向けの画面を介した非効率なものから、APIベースに移行していくとも思います。画面ベースもなくなりはしないでしょうが、比率は低くなるでしょうから、今、大規模向けでは画面ベースのRPAを学ぶ必要はないというのが私見です。

いずれにしろ、Windowsユーザ限定の話です。なぜかMac OS系では標準のオートメーションがある程度で、どこのベンダも製品を出しませんから。そういう自分も長年使ってきたWindows環境から2回目のMacBook移行中で、今、RPAをやるつもりはありません。M1 MacBookなので、仮想環境でWindows動かす手も使えないです。Windows10のARM版が仮想環境で動きますが、RPA製品のARMバイナリがあるのか疑問ですし。そんなわけもあって、利害関係も無くなったので、色々と各ベンダに批判的なことも平気で書いています。

あと企業がこれからRPAを始めるならどのツールが良いか、という話ではないので、そこはあしからず。

拙い記事でございますが、サポートしてもよいよという方はよろしくお願いします。著者のやる気アップにつながります。