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マンガ感想文「【推しの子】」

色々なところで推されている「推しの子」なので今更ですが、最初に読んだ時は衝撃でした。現在、1話から3話までと31話以降を無料で読めますので、興味のある方は見てみるとよいかと思います。人を選ぶ部分もあるので、百聞は一見に如かずです。

きっかけ

ちょうど1年くらい前からヤングジャンプで連載されているマンガです。原作は赤坂アカさん、マンガは横槍メンゴさんです。

「鬼滅の刃」のヒットで一躍時の人になったLiSAさんが何かのTV番組のインタビューで最近ハマっているものといった感じの話で紹介されたのが【推しの子】でした。

別にLiSAさんのファンではないし、普段は特に有名人のおすすめとか気にしないのですが「言えないことが多いのですが…」ということで内容はほとんど分からなかったのが逆に気になって、ヤングジャンプのサイトで無料お試しで見たのがきっかけです。

昔はAmazon等の電子書店でのお試しなんて頭から数ページしか見られず、それも表紙と白紙、目次があってからなので実質的には2、3ページしか見られず、そんなもので判断なんかできませんでした。今は、丸々1話とか、場合によっては丸々1巻試しで読めるのでありがたいです。

今回も、そんな数ページのお試しだったら多分そのまま「ふーん」で終わったでしょう。

アイドルとは

色々書くとネタバレになるので支障のないと思われる範囲で書きます。

この物語は「アイ」という身寄りのない一人のアイドルを巡る話です。物語の冒頭から「この世の大抵はフィクションである」、「捏造して、誇張して、都合の悪い部分はきれいに隠す」つまりであると言い切っています。まあ、これは登場人物の一人であるゴローの見解ですけど。別の人物もアイドルの世界を嘘の世界と言っていますし、この作品自体のテーマでもあるかと思います。嘘も方便です。

このアイが父親不明の双子を産むというところから物語が始まります。古くは排便しないとか、最近では恋愛禁止とか、アイドルやっていくのも色々大変かとは思いますが、まあ、そんなことが事実だと思っている人は少ないでしょう。アイドルとは偶像とはよくいったもので、アイはこの他にも多くの秘密(嘘)を抱えています。

芸能界の裏を描く(知らないけど)

現在、連載は41話(4/29時点)、単行本は3巻まで発売されています。大きく分けて、4つの章に分かれており、それぞれテーマがあります。

連載の方は4章が終わり5章に入るところです。1章が乳児編、2章が双子が芸能界に関わり、3章では一時期大いに話題になった恋愛リアリティショーを取り上げています。単行本1巻が1章になっているので、単行本になっているのは3章までです。3話まで無料で見ることができるので、気に入ったら単行本を買ってみて、続きを無料で見ることもできます。自分も単行本を買いつつ、連載を追いかけています。

これらの表にあるキラキラした部分の裏側をかなり突っ込んでいく内容になっています。まあ、実際のところがどうなのかは一般人にはわかりませんし、この作品を連載するにあたってどこまで芸能界を取材しているのかまで知りません。ですので、ここで描かれている世界が捏造され、誇張され、都合の悪い部分がきれいに隠されているのかは想像するしかありません。それを「リアル」と思うのか、所詮はマンガの世界と思うかは読者の自由です。

そういう意味ではこの作品を自分は「リアルっぽい」と思います。リアルっぽいと思ったのは、最初にエヴァンゲリオンを見た時以来でしょうか。リアルではなく、リアルっぽい。現実を理解した上で、面白くするためにあえて現実的ではないことを描くが、それが現実より面白い。マンガで出てくるジト線とか怒った時の記号とか、擬音の表現とか。そんな感覚がありました。

人物描写が素晴らしい

ラノベやコミックを見て、アニメを見ている人ならば、ラノベやコミックのアニメ化、実写化について、色々複雑な思いがあるかと思います。

この原作を動いている絵で見てみたい。でも、それはそれで怖い。原作がちゃんと期待通りの動画に仕上がるかはギャンブルです。自分の生殺与奪を他人のサイコロに全て握られているかの様で、自分は一切何もできずに結果を受け入れるだけです。ま、最近はクラウドファウンディングとかで支援というのもあるかもしれませんけど。

この作品はアイドルものですので、キラキラした部分も描かれますが、当然、それだけではありません。そんな普通や落ち込んだ状態から、キラキラした状態に覚醒する瞬間というべきシーンが何回か出てきます。そこがゾクゾクしてきます。

この作品ではそういうオーラとかカリスマ性みたいなものの表現として瞳の中のホシで表現しているかと思います。アイは両目がホシですし、双子の子はそれぞれ片方がホシです。とある登場人物も瞳にホシを宿すシーンがありますが、不覚にもヤラレました。

才能だけでも努力だけでも成功できない

正直なところ、この作品の主要な登場人物たちは、概ね才能溢れる子達です。そういう点では現実離れしている気もします。

別にアイドルや芸能界に限った話ではないですが、才能だけでも努力だけでも運だけでも、成功はできないことが多いですね。では、どうしたら成功できるのか。もちろん、想いの強さも必要でしょうが、それだけでも現実にならない。作中ではコミュ力が必要という話もありました。最初からコネもあり容姿も良くて、情熱もあったらどうなるのか、ということは物語冒頭でも触れられています。

また、この作品ではアイドル、芸能界を描きつつ、アイの相手であり双子の父親は誰なのかというミステリー要素もあり、その謎にどうやって迫って行くかという部分も見所になっています。

一つだけ疑問が…

noteの他の方の記事で【推しの子】関連を見つけましたが、そこで子供たちが星野姓なのはおかしいのではないかという指摘がありました。確かに、作中でもアイの所属事務所の斎藤社長夫婦に戸籍を移したとされています。でも、学校でも現場でも「星野」として認識されているのです。

移したということは、少なくとも当初は戸籍上アイの子となっていた時期があったはずで、それって隠し通せるのかって気はしますが、そこはまあ、深く突っ込むところではないのかもしれません。

野暮を承知で現実の日本の法制度を参照するといくつか特殊な事例はあるものの、養子縁組した親子の姓は同一でなければならないようで、そこからすると、「戸籍を移した」が養子縁組であれば、双子の姓は養親の斎藤であるはずです。ま、野暮ですね。

情熱を失ったあなたに

作中の登場人物たちは、夢のため、あるいは自分の野望のため、それぞれが想いを抱えて足掻いています。そんな子達をついつい応援したくなってしまいます。

ドラマ「捜査一課長」でも推しを応援できるのは素晴らしい旨の台詞がありました。あなたも【推しの子】を見つけてみては。

そんな自分は昔はお気に入りキャラがいましたが、最近は特定のキャラに入れ込むこともなくなりました。【推しの子】を推しても【推しの子】のキャラに推しの子は居ないのですよね…


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