ニール・ヤングの入門編用に10曲選ぼうとして色々悩んだ結果、選ばれた12曲!
【まえがき】
ニール・ヤングという名前を聞いて、名前は知ってるけど、どんなミュージシャンか知らない、どんな曲があったっけ。。。なんていう方も多いのではないでしょうか?
キャリア57年を誇る“ロック・シーン孤高のレジェンド”、“ロック・シーンのゴッド・ファーザー”などなど、ニール・ヤングを表現する言葉はどれも怖くて少々威圧感があるのかもしれません。平和・反戦・環境問題をテーマにした曲も多く、同世代のみならずフォロワーのミュージシャンからもリスペクトされているのです。
「ローリング・ストーン誌が選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」において第37位、「ローリング・ストーン誌が選ぶ歴史上最も偉大な100組のアーティスト」において第34位に選ばれ、1995年には“ロックの殿堂”入りを果たしています。
でもそこまで取っ付きにくい人ではないのです(実はお茶目で可愛い一面もあったりするのです)。
今回はライターの大鷹俊一さんに、初心者の方にも分かりやすく、教えて頂こうと思います!
(実は入門用に10曲を選ぼうとしたのですが、喧々諤々しまして、結果的に12曲になりました。他にも紹介したい曲がたくさんあるので、また別の機会に!)
まずはニール・ヤングがどんな人物なのか?!
大鷹さん、よろしくお願いします!
【ニール・ヤングを簡単にご紹介】
やたら生きた伝説の多いロック界、なかでもとびっきりの一人がニール・ヤングです。1945年カナダ、トロントに生まれ、これまでに40枚以上のスタジオ・アルバムと数多くのライヴ・アルバムを発表してきています。どこから聴けばいいんだよ、という方のために厳選に厳選を重ねた<とりあえずのベスト12曲>を紹介しますので、まずそこらをチェックしてみてください。
ニール・ヤングという人、とにかく全方向に向け、思いつき(としか見えなかったりする)で行動を起こしては周囲を振り回したり、怒りまくっての衝突騒ぎは日常茶飯事。ただし単なるトラブルメーカーではない。MP3の音質に<ナンだ、この音は>と怒り、ハイレゾ対応のポータブル・プレーヤー<PONO>を独自に開発したり、長年取り組んできた環境保護活動家として電気とアルコール燃料で走るハイブリッド・エコカー<LincVolt>開発に挑んだり、と音楽活動も含め、信念とスジを通して行動する人なのです(やや熱すぎですが)。
自身の活動と平行してやってる小規模農民支援のチャリティ・コンサート“ファームエイド”はもう38年にもなり、ジョン・ボン・ジョヴィやザ・ビーチ・ボーイズ、23年にはボブ・ディランがサプライズ出演するなど豪華なメンツが常に話題になりますし、重度の障害を持つ子供たちのための教育プログラム開発に取り組む”ブリッジ・スクール・ベネフィット・コンサート”も30年以上継続の歴史を重ね、エルトン・ジョンやブルース・スプリングスティーン、メタリカなどがスペシャルなライヴで協力しているのもニール・ヤングという人への信頼感からなのです。
「Heart of Gold(邦題:孤独の旅路)」を始め名曲多数で、胸に染み込む美しい曲をじっくりと聴かせるかと思えば、パンクスやグランジ連中すら引くほどの<激熱/爆音>パフォーマンスを繰り広げるのもこの人ならではで、今も走り続ける、まさにリアル・レジェンドがニール・ヤングという人です。
【入門用12曲の解説】
*各曲の参考試聴リンクはアルバム音源を中心に
曲の魅力がもっと解るライヴの名演やMusic Videoを掲載しました。
「Heart of Gold(邦題:孤独の旅路)」
ニール・ヤングの代表曲といえば、まずコレ。72年リリースのアルバム『ハーヴェスト』からのナンバーで、初の、そして唯一のシングル全米No,1となり、今でもライヴでもっとも喜ばれる曲だ。
“黄金の心”を探し求めハリウッドやレッドウッドなどを行く姿を歌うが、60年代後半のヒッピー・ムーヴメントや反戦運動など激動の時代が過ぎ、さまざまな形で社会に収まっていくしかなかった若者たちの挫折感を反映した曲でもあり、多くの聞き手たちが自分の世界を重ね合わせ共感を寄せた。基本的にはアコースティック・ギターとハープで歌われ、邦題は「孤独の旅路」と付けられた。大正解!
Neil Young - Heart of Gold (Official Audio) (字幕対応可)
Neil Young - Heart of Gold (Live) [Harvest 50th Anniversary Edition] (Official Music Video)
「Ohio」(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング名義)
ニール・ヤングがメンバーとして参加していたCSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)名義で70年に発表したナンバー。反戦デモを行っていた無防備の大学生が州兵に四人射殺された事件に激怒、すぐに曲を作ってリリースした。“ニクソン(当時の大統領)のブリキの兵隊がやってくる”と歌いだされ“知り合いの女の子が殺されてもあんたは平気なのか”と激しく訴える。
各地で反戦運動が繰り広げられ、人種差別騒動があったりの騒然とした時代を反映する曲で熱い支持を集めたが、現役大統領の名が出てくるというので放送禁止処置にもなりチャート的なリアクションはもう一つだったがこの時代ならではの名曲。
Neil Young - Ohio (Official Live Video) (字幕対応可)
「After The Gold Rush」
オリジナル・アルバムが40枚以上(数え方によって微妙に違う)となるニール・ヤングだが、メディアなどでベストに選ばれることが多いのがこの曲がタイトルとなった3rdアルバム『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』('70)だ。
「テル・ミー・ホワイ」、「オンリー・ラヴ」、「サザン・マン」など、とにかく名曲ぞろいのアルバムの中での名誉あるタイトル・トラックで、ゴールド・ラッシュに沸き立ったアメリカの歴史を踏まえつつ過去、現在、未来を描いたもの。環境汚染で地球に住めなくなる世界を思わせる光景を数十年も前にすでに描き、ここで歌った思いを今も変えることなく活動し続けるのがニールの凄さでもある。
2011年のブリッジ・スクール・コンサートでトム・ヨークがピアノ一本をバックに素敵にカヴァーしている。(下記に映像リンクあり)
Neil Young - After The Gold Rush (Audio)
Neil Young with Crazy Horse - After the Gold Rush (Live) (Official Audio) (字幕対応可)
トム・ヨークのカヴァー
Thom Yorke – After The Gold Rush(The Bridge School Concerts 2002)
「Mr. Soul」(バッファロー・スプリングフィールド名義)
ニール・ヤングがメジャー・デビューを果たしたのがスティーヴン・スティルス等とやっていたバンド、バッファロー・スプリングフィールドでのこと(スティーヴンと会ったときニールが使っていた愛車は中古の霊柩車だった)。残念ながら約2年弱と短命に終わったこのグループは、日本のはっぴいえんど等に影響を与えたことでも知られるが、アメリカでは西海岸を中心に人気を集めた。これは彼らの2ndアルバム『バッファロー・スプリングフィールド・アゲイン』('67)の冒頭を飾ったニール・ナンバーで、彼にとっても忘れられないものなのだろう、旧作を吹き込み直した最新作『ビフォア・アンド・アフター』でも取り上げられている。
Neil Young - Mr. Soul (Video) (字幕対応可)
Buffalo Springfield – Mr. Soul(2017 Remaster)(Audio)
「Down By The River」
ニール・ヤングの魅力の一つが壮絶なエレキ・ギターのプレイで、ときにチューニングも仲間も無視して暴走しまくるがそれがこんなにカッコいい人はいない。そんなプレイの一端を聞けるのが2ndソロ・アルバム『ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース(Everybody Knows This Is Nowhere)』('69)収録のこの曲だ。川のほとりで恋人を撃ち殺すという壮絶なナンバーの間奏、胸を掻きむしるかのギター・ソロは、テクニカルなものではないが聞き手を感動させるし、それを完璧にサポートするのが、今も旅を共にするクレイジー・ホースで、変わることのない魅力の原点がここに詰まっている。
Neil Young - Down by the River - Live (Official Music Video) (字幕対応可)
Neil Young - Down by the River (2009 Remaster) (Audio)
「Cinnamon Girl」
これも2ndソロ・アルバム『ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース(Everybody Knows This Is Nowhere)』('69)からの曲で、オープニングを飾っていた。大好きなシナモン・ガールと一緒に暮したい、パパがお金を送ってくれたんだし、と何だかお気楽でめちゃくちゃなことを歌っているが、それもまたニール・ヤング・ワールドの一つ。親友で当時クレイジー・ホースのメンバーだったギタリスト、ダニー・ホイットン(72年にドラッグで死亡)とのコンビネーションがみごとな名曲で、後にゴシック・メタル系バンド、タイプ・オー・ネガティヴが超ヘヴィなヴァージョンに仕立ててカヴァーした。また検索をかけるとハワイ生まれのレディース・ファッションのブランド、と出てきたりもする。
Neil Young- Cinnamon Girl (2009 Remaster) (Audio)
Neil Young - Cinnamon Girl (Live)
Neil Young and Promise of the Real - Cinnamon Girl
(Live at Farm Aid 2017)
「Southern Man」
ニール・ヤングのギター・プレイの凄さが最初に評判になった曲。『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』で発表され、CSN&Yのライヴ・アルバム『4ウェイ・ストリート』('71)でのスティーヴン・スティルスとのガチガチのギター・ソロ・バトルが人気を集めた。根強く残る南部での人種差別をテーマにした曲で、それを許している南部人(サザン・マン)をテーマにしているが、この曲や同趣旨の「アラバマ」という曲に怒ったサザン・ロック・バンド、レーナード・スキナードは74年に「スウィート・ホーム・アラバマ」という南部愛に満ちた曲をヒットさせた。とはいえ喧嘩騒ぎになったわけではなくアーティスティックで大人の交流はしている。
Neil Young – Southern Man (Audio)
Crosby, Stills, Nash & Young – Southern Man (Live)
「Like A Hurricane」
数多いニール・ヤングのハード系ナンバー中、人気1,2を争うのが77年発表のアルバム『アメリカン・スターズン・バーズ』で発表されたこの「ライク・ア・ハリケーン」で、夢想家の男が嵐のような女性に翻弄されている姿を、エモーショナルなヴォーカルと爆発的なギター・ワークで描き出す。なので基本的にはエレクトリック・セットでプレイされるが、アコースティック・ギターやオルガン、ハープだけでの演奏もありそちらも人気。79年に発表されたライヴ・アルバム『ライヴ・ラスト』に収められた荒々しいヴァージョンが有名だし、古いファンには日本初来日(76年)のときに突然プレイされたのが伝説として語り継がれている。
Neil Young - Like a Hurricane (2003 Remaster)
Neil Young & Crazy Horse - Like a Hurricane (Official Live Audio)
「Hey Hey, My My (Into the Black)」
“It's better to burn out than to fade away(消え去るより、燃え尽きるほうがいい)”、90年代グランジ・ロックで大旋風を起こしたニルヴァーナのカート・コバーンが94年に自殺したときに残した遺書にはニール・ヤングのこの曲からのこの歌詞が引用されていた。
パンクへの共感を表明した『ラスト・ネヴァー・スリープス』('79)でアコースティックとエレキの2ヴァージョンを発表した曲で、パンク否定派が多かったベテラン勢の中でもっとも早く共感を示し、グランジが盛り上がると『ライヴ・ウェルド』を出したりパール・ジャムとやったりしたニール・ヤングのそうした姿勢がカートにも通じていたのだろう。もし存命だったら絶対に共演してたはず。
Neil Young - Hey Hey, My My (Into the Black) (2016 Remaster) (Audio)
Neil Young - Hey Hey, My My (Into the Black) (Live)
Neil Young and Crazy Horse - Hey Hey, My My (Into The Black)
- Live at Farm Aid 2003
「Rockin' in the Free World」
ニール・ヤングはトランプ元大統領を裁判にかけてもいて、提訴の理由は、かってにこの「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」などを選挙キャンペーン等に使ってたからで、再三止めるように抗議しても無視していることから著作権侵害で約1600万円の損害賠償と、二度と使わないことを求める裁判を起こした。
ニール・ヤングの日頃の活動を少しでも知っていればトランプを応援するわけもないのだし、それだけに本人はたまらない気持ちだったろう(17年の『ザ・ヴィジター』ではダイレクトに批判もしている)。もともとは『フリーダム』('89)で発表した曲でこれもアコースティックとエレクトリックの2ヴァージョンがある。
Neil Young - Rockin' in the Free World(Audio)
Neil Young - Rockin' in the Free World(Video)
「Harvest Moon」
代表アルバムとなった『ハーヴェスト』から20年後の1992年に発表された『ハーヴェスト・ムーン』のタイトル曲。長年、いろいろなことがあった妻が馴染みの店で踊る姿をしみじみと歌うもので(ただし、当時の妻ペギーとはその後、離婚してしまうが)、激動としか言いようのないニールの歴史と歩みを自然と重ね合わせてしまい、緩やかなカントリー・ロック・タッチのメロディに癒やされる。『ウェルド』のようなヘヴィなサウンドものを出したりしてグランジ系バンドにもリスペクトを受けている時期に、アコースティック中心のアルバムは意外だったが、こうした気持ちの赴くままの自由な創作活動こそニール・ヤングならでは。
Neil Young - Harvest Moon [Official Music Video]
Neil Young – Harvest Moon (Audio)
Neil Young - Harvest Moon (Live In Austin) (字幕対応可)
「Mother Earth (Natural Anthem)」
現在ニール・ヤングがもっとも大事にしている曲の一つ。激しくディストーションを効かせたエレキ・ギターの爆音をバックにクレイジー・ホースのメンバーらと共に<母なる大地を讃えよ>と歌い上げる。オリジナル楽曲はスコットランド民謡の「Water Is wide」で、そのどこか懐かしいメロディを借りてニール流の歌詞を書き加え90年の『傷だらけの栄光(Ragged Glory)』で発表したもの。長く環境問題に積極的に関与してきたニールにとって、まさに聖歌のような曲であり、ライヴで数多く取り上げられてきているが、最新作の『ビフォア・アンド・アフター』でも万感の思いを込めたヴァージョンを聞くことができる。
Neil Young & Crazy Horse - Mother Earth (Natural Anthem) (Official Audio)
Neil Young - Mother Earth (Live)
Neil Young - Mother Earth (Live at Farm Aid 1990)
【入門用12曲のプレイリスト】
Amazon Music
YouTube Music
Apple Music
こちらは上記の12曲のプレイリストではありませんが、ご参考にどうぞ!
ニュー・アルバム『ビフォア・アンド・アフター』(2023年12月13日発売)
最後に現時点で最新作となるアルバムを挙げておこう。23年6月30日から7月24日にかけて西海岸で行ったソロ・ツアーで取り上げていた曲をまとめたもので、60年代に活躍しロック史に重大な貢献をしたルー・アドラーを共同プロデューサーに迎え、ライヴやスタジオでの再録が入り混じったものに仕上がっている。
本欄でも取り上げた「ミスター・ソウル」や「マザー・アース」など有名、人気曲も交じるが、多くはアルバムの中に埋もれている比較的地味な曲や、初めてライヴで演奏される曲などもあって、ニール自身は<始まりも終わりもない音楽のモンタージュを創り上げた>とメッセージしているが、現時点でニール流に自らのアーティスト人生を振り返ったものになっていて素晴らしい。
【CDのご購入・ご試聴・音楽配信サービスはこちら】
https://WarnerMusicJapan.lnk.to/ny_beforeafter
【商品の詳細はこちらをご覧ください】
【あとがき】
ちょっと長くなってしまいましたが、最初に聴いてほしい12曲をお届けしました。スタジオ・ヴァージョンとライヴ・ヴァージョンを比較して聴いてみると、やはりニール・ヤングの魅力はライヴでのパワー(静かな時も激しい時も暴走している?!)にあるのが分かりますね!
来年は第2弾にも挑戦してみたいと思いますので、是非ご意見・ご感想など頂けたら嬉しいです!
最後まで読んで頂きありがとうございました!今回ご紹介した12曲と共に、ニュー・アルバム『ビフォア・アンド・アフター』もよろしくお願いします!
【ニール・ヤングの関連リンク】
ニール・ヤング Warner Music Japan HP:https://wmg.jp/neilyoung/
Neil Young / HP:https://neilyoungarchives.com/
Neil Young / youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/@neilyoungchannel
Neil Young / Facebook:https://www.facebook.com/NeilYoungRepriseRecords/
Neil Young / official Instagram:
読んでくれておおきに!Let's rockin' in the free world!
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