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バスケ「代表引退認めない」騒動から考える、コミュニケーションの大切さ

つい最近、日本バスケットボール協会の男子代表強化検討委員会が開いた会見が話題になりました。

ごく簡単にまとめると
「代表招集に対する拒否権や、代表引退という概念はない。来なかった場合には罰則が適用される」
「男子代表は飛行機のビジネスクラスを利用」
といった決定が報じられています。

選手やファンがこの記事について触れ、代表引退がX(旧Twitter)のトレンド入り。そして、コメントの多くはこの決定にネガティブな反応を示すものでした。

私は一連の流れを見ていて、決定の中身そのものはともかく、伝え方、コミュニケーションはもう少し良くできたのではないかなあ、と思っています。

そこで、どうしてネガティブな反応につながってしまったのか、真意はどこにあったのか、を振り返りつつ、どうしたらもっと良いコミュニケーションができたのかを考えてみました。

ちなみに私は会見を聞いていたわけでもなく、あくまで表に出てきた情報を受け取った1人のファンとして考えたことを書いています。私に見えていないところにもたくさん情報があると思いますし、もっと事情を知っている方が見て検討違いだということでしたら、それはごめんなさい。また、これをもって特定の誰かや団体を非難する意図はありません。


どうしてネガティブな反応につながってしまったのか

「代表招集に対する拒否権や、代表引退という概念はない。来なかった場合には罰則が適用される」

こうした決定に対しての反応は、多くは「個人の意思を尊重し、プレーヤーファーストにすべきでは?」といったものでした。こちらはシンプルで分かりやすい反応ですよね。

私も初めて報道を見た時には、同じような感想を持ちました。

「男子代表は飛行機のビジネスクラスを利用」という決定に対しての反応は「女子代表についてはどうなんだ?」といったものです。

「男子がビジネスクラスに」と報道がされたことで、女子選手やファンが「男子だけ?女子はどうなの?」と懸念の声をあげた形になります。

この背景には、男子の方が賞金や待遇面において優遇されるケースが多く(※)、女子選手やファン達は差の解消を望んできたといった歴史があります。

※ 例として、天皇杯(男子)と皇后杯(女子)の報奨金の差があげられます。2023年3月に開かれた天皇杯は優勝賞金が3000万円だったのに対して、2022年12月の皇后杯は500万円でした。

真意はどこにあったのか

こうした反応を受け、男子代表強化検討委員会の委員長を務める島田さんは下記のようなnoteを発表しています。

こちらのnoteから何か所か抜粋しながら、真意を紐解いていきましょう。

Bリーグ規約で日本代表に招集されたら、参加しなければならないということは履行義務として定められています

そもそも最初から約束していたこと、というのは大きなポイントです。約束したなら守らなきゃいけない、それはそうかなと思います。

https://www.bleague.jp/about/pdf/r-33.pdf より抜粋。マーカーはnote著者補足。

このような契約書もありました。こうした前提となる約束事があり、それが守られてこなかったので、今回あらためて罰則を設けることで強化した、ということですね。

それでも男子がバスケットボール選手としてやっていきたいのであればこの規約に約束せざるを得ないし、本来やりたくなくてもNOとは言えない状況なのでは…とも思いましたが、島田さんは

(代表引退を発表した)選手とヘッドコーチや技術委員長は会話もするでしょうし、リスペクトの上、無理やり招集することはないのではないか

括弧内はnote著者補足

と書いています。なるほど、これなら一安心ですよね。

また、選手個人ではなく、クラブ側についてはどうでしょうか。クラブとしては自チームの運営を優先するために、選手を送り出したくないといったケースは多いように思います。島田さんはこうした点について

今は、日本代表参加に対して多くの選手たちはポジティブだと思います。しかし、選手だけでなく、送り出すクラブもそうならないことが幾度とありました。だからこそ、ルール通りに運用するということ、罰則がないと公平性の観点からも難しいという判断から明確化しています

と述べています。こうしたコメントを見ても、「辞退した場合、理由の正当性にかかわらず、期間中の所属先での公式戦出場を認めない」といった罰則の内容からしても、自チームの運営を代表活動より優先するといった状況は避けたい意思が見えます。

まとめると、前提としては日本代表に招集されたら、参加しなければならないし、チームの運営よりは代表強化の観点が優先される。が、選手の意思を過度に無視した招集はない、というのが真意なのかな、と思います。ここまで聞いて「プレーヤーファーストであって欲しい」と思っていた私はかなりすっきりしました。

一方で「男子代表は飛行機のビジネスクラスを利用」としたことについては、島田さんはnoteでもまったく触れていません。なので真意は正直分からないのですが

こちらのポストを見ると、男子のビジネスクラス利用にかかる費用はBリーグから出すという話のようです。男子のリーグが稼いだお金を男子のために使うのは理にかなっているように見えます。そもそも今回の会見は「男子代表強化検討委員会」が開いたものなので、男子代表についての話のみにとどまり、女子の話に触れないのは自然なことですね。

あれ?初めからこういうことだと分かっていたら、私たちはこんなに不安になる必要はなかったし、発表した側もネガティブな反応を浴びる必要はなかったのでは?

どうすればもっと良かったか(結果論)

冒頭にも書きましたがあらためて。私は一連の流れを見ていて、決定の中身そのものはともかく、伝え方、コミュニケーションはもう少し良くできたのではないかなあ、と思っています。あくまで結果論ですが、どうすればもっと良かったのかを振り返ります。

まず委員会は、関わりの深い選手と予めコミュニケーションをとっておいた方が良かったように見えます。

代表として必ず声がかかるであろう渡邊選手や、キャプテンを務めた富樫選手からこのような反応があったということは、彼らもこの会見の内容やその真意を予め聞かされてはいなかったと思います。こうした選手と予めコンタクトをしていれば、会見の内容で驚かせることはなかったでしょうし、フォローも貰えたかもしれません。

また、事前に今回の会見がどう受け止められるかをもう少し検討できれば良かったと思います。「代表招集に対する拒否権はない」という話はかなり世間一般の注目を集めやすい内容になります。メディアがここに着目して記事を書きそう、といった予測を立てた上で会見や前後のコミュニケーションを考えておくのが大切です。また、女子代表との待遇差についてはこれまで何度も話題になってきていることなので、ここにも配慮が必要でした。

メディアの方も真意や背景を理解したうえで、それが正確に伝わるように報道する必要があります。「代表招集については、規約で定められている」「男子のビジネスクラス利用にかかる費用はBリーグから出す」ということが書かれていれば、かなり違った結果になったような気がします。

(ちなみに、記者会見の場でどういうやり取りがなされたのか正確には分からないので、私が的外れな意見を言っている可能性も大いにあります)

そしてコミュニケーションは常に双方向です。発信側だけではなく、私たち受け取り手もやるべきことがあります。

たとえば、切り取りを鵜呑みにせずに元情報をたどったり、関連情報を調べたりすることです。私も、報道を目にした時の第一印象は「選手の意思が優先されるべきでは?」「女子選手もビジネスクラスに座らせて欲しいな」というものでした。しかし追加情報が分かったことで「ああ、なるほどな」と納得した部分が大きいです。最近の私は一次情報や関連情報を調べるのを怠っていたので、たまたま追加情報を目にしていなかったら誤解したままだっただろうな、と反省しました。

最初からnoteで発表していれば良かった…のか?

この話題について「自分で文章を書く能力がある人は、もう最初から自分で書いた方が良いんじゃないの?NBA選手もあることないこと書かれたって文句言うの見かけるし…」ということを聞かれました。

たしかに、島田さんは発信も積極的に行っていますし、今回も初めの報道よりnoteの方が真意はわかりやすかったです。ですが、第三者のマスメディアが書くということと、自分が書いたものでは、意味合いが全然違います。第三者が公平性を持って書いたものの方が信頼度が高いケースが多いです。

また、マスメディアの影響力は、個人とは比べものになりません。マスメディアを通じて発信することで、島田さんやB.LEAGUEのことをまったく知らなかった人にも話を届けることができます。今回の話も島田さんがnoteで発信するのみだったら、そもそもこれほど多くの人の目に触れることも無かったかもしれません。委員会が記者に向かって会見を開いたのは、こうしたメディアの公平性や影響力の大きさを考慮してのことだと思います。

じゃあ常にマスメディアを通じての発信が良いか?というとそういうわけでもありません。今回のように、伝えたいことがうまく伝わらないケースだってたくさんあります。むしろ、こちらの伝えたいことばかりを伝えてくれるわけじゃないからこそ公平性があるわけです。

コミュニケーションは常にケースバイケース。「マスメディアを使わずに自分自身で発信する方が良い」とシンプルに結論づけることはできないものだなあ、と思います。

コミュニケーションはとっても大切、皆で頑張っていこう

ここまで振り返ってみると分かりますよね、コミュニケーションの大切さが。発信者も仲介者も受け手も、全員が丁寧に考え、臨機応変に向き合わないと、思いもよらぬ方向に話が転がってしまうこともあります。

はやくテレパシー能力が人間に備わって欲しいと願うばかりですが、そうもいかないのが現実。日々がんばってまいりましょう。最後にもう一度島田さんのnoteから引用します。

一番大切なことは、誰もが勝ち取りたい、目指したい、選手たちにとっても価値ある、クラブとしても代表選手を抱えたい日本代表であり続けることだと思います

私もそう願っています。男女関係なく、選手もクラブも皆がハッピーな状態で、日本のバスケットボールを盛り上げていけますように!

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