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貴族のカニかまとブロッコリーのリゾット

一昨日の晩、ブロッコリーに貴族のカニかまを合わせると、凝縮された森が一個大隊喰らい尽くせそうなことに気づいた私。


かねてより「この貴族ジルを米に吸わせたらうまいんじゃないか」と思っていたので、ブロッコリーにも参戦してもらい、今度はリゾットを作ってみることにした。


今夜の晩ごはん、貴族のカニかま入り緑のリゾット。小鍋にオリーブ油を熱し、生米を洗わずに放り込んで炒める。オイルで透きとおった米が加熱によって再び白っぽくなったところで、ひたひたくらいの水、白ワイン、適当に裂いた貴族のカニかまこと『ほぼカニ』、おろしにんにく(チューブのもの)を入れる。火加減は強め中火をキープし、焦げないように時々鍋底からかき混ぜつつ、水分が減りすぎたら適宜追加。最初から水ドバーするとリゾットじゃなくておかゆが錬成されるので(体験談)、水分はこまめに少しずつ足すようにする。

途中で味を見て、コンソメごく少量とマジックソルトで薄めに調整し、さらにそこらへんの乾燥ハーブ軍団(今回はバジル、オレガノ、タイム)も投入する。あとは米の歯ごたえをちょいちょい確認しつつ、アルデンテまであとひと息、というところで、固めに茹でて粗みじんにしておいたブロッコリーを入れる。全体をざっとかき回してなじませ、米がアルデンテになったところで火から下ろしてお皿にホイ。トッピング用に少し残しておいたブロッコリーの小房をあしらい、てっぺんに貴族のカニかまを載せてできあがり。


緑のリゾットってのは、玉村豊男さんの著書『健全なる美食』に登場するメニュー。夏の風物詩・ズッキーニを使っての一皿だった。


生米からのリゾットの作り方を教わった名著。玉村さんの著作の中では、一番多く読み返しているかもしれない。

この中に「軽く炒めたズッキーニを生クリームと共にフードプロセッサーにかけ、そのペーストをリゾットに……」という一文が出てくる。色鮮やかな大皿に盛られた、なんともうつくしい淡緑色のリゾットの写真がとても印象的なページだ。一度作ってみたいなあと思いつつ、うちにはフードプロセッサーなどという玄人向け高級調理器具は存在していないので、憧れだけにとどまっていた。

それで、一昨日の晩に貴族のカニブロを肴に呑んでる時にふと、「ブロッコリーならペースト状にしなくても、結構緑みが出せるんではないか」と思いつきまして。で、「ちょうどカニ脚もある(酔っているのでほぼカニ=本物のカニ脚という認知)から、一緒に合わせてみよう」てなことで、作ってみたんであります。


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うーん、さすが「凝縮された森」として名高いブロッコリー。粗みじんでもしっかり緑みを発揮してくれている。森の中でカニ脚が……あいや、貴族のカニかまがチラ見えしてるのも、よいではないか、よいではないか。


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合わせるのはもちろん、リゾットにも入れた白ワイン。もちろん料理中から呑んでおります。


さて、さっそくいただいてみると……おおっ、ブロッコリーの独特の香りと甘さを、貴族のカニかまのジルが引き立てている。これはなかなかにおいしい!カニかまからどんな出汁が出るのか知りたかったので、今日はちょっと味つけを薄めにしたのだけれど、その甲斐あってとてもやさしく穏やかな味になっている。その平穏な世界観の中に、パンチのあるにんにく臭がほどよいアクセント。かすかに歯ごたえの残るアルデンテの米に、とろりとやわらかくなったカニかまのコントラストもいい感じだ。ブロッコリーは数多ある野菜の中でも特に好きで、自分の墓所に菩提樹として植えたいくらい愛している。それゆえに、ブロッコリーの歯ごたえに命を賭している私。ブロッコリーがぐにゃぐにゃにやわらかくなりすぎないよう、加熱する時間には細心の注意を払った。そのおかげで、シャクシャクとした小気味よい歯ごたえをきちんと残すことができた。歯を入れるとちょっと抵抗感があって、続けて広がる独特の青くささと甘み。そこにふわりと広がるカニかまの味。森と海がしっかりと視線を交わし合ったのち、力強い抱擁と熱いキッスを交わしているようだ。乾燥ハーブ連隊が、そのラヴシーンにさわやかな一陣の風を送り、さらに盛り上げてくれている。はーい、カットー!いいよいいよ、みんな最高!今年のアカデミー賞、もらったぜ!

加熱されてホロホロにやわらかくなったカニかまとは対照的に、そのままどかんとてっぺんに載せた方はぷりっぷり!甘くて口の中でふわっとほどけてジューシーで……やっぱりこいつ、本当は本当にカニの脚なんじゃないかな。名前「ほぼカニ」だしさ。もうカニってことにしちゃっていいんじゃないかな。今後もしつこく同じことを主張し続けると思う。ごちそうさまでした。


実は途中で味を見ている時、「ちょっと薄いかなァ……チーズでも入れちゃおうかな」とも思ったのだけれど、さっぱりとした軽やかな口当たりがなかなか良かった。これ、食欲ない時にもいいかもしれない。鶏がらスープで中華風味に仕立てて、クコの実やきくらげなんか散らしてみるのも面白そう。リゾットで中華味って作ったことないのだけれど、今度試してみよっと。

夜になるとぐっと冷え込む季節。雑炊やおかゆもいいけれど、あっつあつのリゾットも最高においしいですな。

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