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実は危険?「無借金経営」をドヤってはいけない2つの理由

スタートアップの融資支援のINQ代表の若林(@wakaba_office)です。

私は夫婦共働きということもあり、毎日料理しています。また、美味しいものを頂くのが好きなので、プロの料理人には尊敬しかありません。
一方で、どんな職業でも、ビジネスモデルや資金繰りが気になってしまう職業病も。ですので、下記の記事、読まずにはいられませんでした。

初めて銀行に借金をしに行ったんですよ。5月まで休むなら、これはもう金が足りなくなるに決まっているから、と。
この店はずっと無借金で経営してきたんです。いままで借金をしてなかったことを誇っていたわけですけど、でもそれは逆に、銀行取り引きから言えば僕が信用がないということだった。そんなことも初めて勉強しましたよ。
「初めて銀行で借金をした」落合務シェフが語るコロナ禍の飲食店が「本当に伝えたいこと」(一志 治夫) _ 現代ビジネス _ 講談社

これは無借金経営の怖さを物語る重要な示唆だと感じました。
そこで、無借金経営がなぜ怖いのか、借入しないことがなぜ危険なのか、その理由をまとめてみました。

この記事はこれから起業する方、創業期の起業家向けに書いています。
約3〜5分で読めます。

なぜ無借金経営が怖いのか?

「無借金経営」と聞くと、借入がなく、出た利益を再投資することで事業が回っているという意味で、非常に健全な経営であり、優秀な経営者であるとという印象を受ける方も多いと思います。借入をしないことによって、その返済に苦しむこともないですし、経営の自由度は高くなります。
では、なぜ無借金経営が怖いのか?

①いざというとき借りられない

無借金経営にこだわることで、いざというときに、希望の金額を希望のタイミングで借りることが難しくなるリスクがあります。

リーマンショックや東日本大震災、そしてコロナのように、大きく市場環境が変わる出来事は、15年に3回起こっており、経営をしていれば必ず起こります。
もし市場環境の変化を大きく受けてしまい、再投資してきた利益や蓄積してきた資金が枯渇してしまうとすると事業が止まります。
そうならないための手段としては、やはり銀行等の金融機関(以下、「金融機関」)からの借入が最有力候補です。

しかし、、、

それまで銀行等の金融機関と何の取引もしていないということは、金融機関の信用がないということ。その状況で、いきなり「貸してください❗」と金融機関に交渉することは、極端に言えば、金融機関にとっては飛び込み営業に近いものかもしれません。

金融機関としては、はじめての融資取引には慎重になります。
下記のように現役銀行員の方からも同意のツイートを頂いています。

金融機関が既存取引先を優先し、はじめての取引に慎重になった結果、

✅融資金額が希望より様子見の金額になったり(低くなったり)、
✅融資実行までに時間がかかったり、
✅最悪の場合には門前払いやゼロ回答

になってしまいます。

まだ信用のない新規取引先よりも、既に返済実績のある既存取引先が優先されがちです。特にコロナのような緊急事態においてその傾向は顕著です。

②事業成長のハードルになる

いざというときのリスクヘッジができないという意味で、無借金経営の怖さがありますが、事業成長のチャンスを逃す、という意味でも無借金経営の怖さがあります。

適切な借入によって適切な事業拡大を行うことで、経営の選択肢が拡がります。しかし、無借金経営にこだわると、前述の通り、借りたいときに必要な金額を必要なタイミングで借りることができなくなり、チャンスを逃す恐れがあるのです。
たとえば、運良く優秀かつ自社に合う人に出会うことができたとします。このご時世、そのような人を採用できるチャンスはそう多くありません。
しかし、手元資金だけでは採用は難しい、、、としたらどうでしょうか?

無借金経営にこだわると、事業成長のチャンスが手元資金で可能な範囲に限定されます。
たとえば、広告業や建設業などの業種では、大きな仕事を受けようと思うと、先に出ていくキャッシュが大きくなります。ただ、その大きな仕事を受けることで事業としてステップアップできるとしたらどうでしょうか?

大きな仕事の引き合いが来たときに、借入ができる体質であればキャッシュの先出しにも対応でき、大きな仕事を受けることができ、事業成長することができます。しかし、無借金経営にこだわると、それまでよりサイズの大きな仕事を逸失する可能性があります。
貴重なチャンスを掴むためにも、借入できる体質を作っておく必要があります。借入は適切に使えば事業の成長の後押しとなりますが、無借金であることが事業成長のハードルにもなり得るのです。

目指すべきは実質無借金経営

無借金経営をオススメしない理由を2つ列挙しました。
一方で、やたらむやみに借入することをオススメしているわけではありません。あくまでも、目指すべきは実質”無借金経営です。

実質無借金経営とは、簡単にいうと、銀行借入以上の現預金を持っている状態のこと。借入の残高はあるが、それを上回る現預金があり、現預金から借入残高を差し引いて余りある状態をいいます。

実質無借金経営とはつまり、良好な財務体質を目指しつつも、いざというときや来るべきチャンスに備えて借入できるよう、借入は適切に行い、金融機関の既存取引先になっておくべきだということです。

まとめ

以下、まとめです。
無借金経営は立派なのですが、以下のようなリスクがあるという話でした。

①いざというとき借りられない
②事業成長のハードルになる

そのために、純然たる無借金経営ではなく、良好な財務体質を保ちつつ、いざというときや来るべきチャンスに備えて借入できるよう、借入は適切に行い、金融機関の既存取引先になる”実質”無借金経営を目指すべきという話でした。

実質無借金経営であれば、銀行との関係性を保ち、いざというときの資金繰りリスクや成長チャンスにも対応しつつ、財務の健全性を確保できます。
ぜひ純然たる無借金経営ではなく、実質無借金経営を目指してください。

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最後までお読み頂きありがとうございました。




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