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聖書タイム2021年2月:「箱船の中で学べること」

山形優子フットマンの執筆・翻訳
クリスチャン新聞福音版に「こころの食卓」連載中
いのちのことば社」翻訳本:
マイケル・チャン勝利の秘訣」マイク・ヨーキー著
コロナウィルス禍の世界で、神はどこにいるのか」ジョン・C・レノックス著

「7日が過ぎて、洪水が地上に起こった。ノアの生涯の第6百年、第2の月の17日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。雨が40日40夜地上に降り続いたが、まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この3人の息子の嫁たちも、箱船に入った。彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、命の霊をもつ肉あるものは、2つずつノアのもとに来て箱船に入った。神が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた」―― 創世記7章10~16節

今月の聖句は旧約聖書の創世記「ノアの箱船」のくだりです。教会の日曜学校の子供達のお気に入りの箇所であり、ここを参考にハリウッド映画も作られてきました。粗筋はこうです。神は地にはびこってしまった悪を一掃しようと大洪水を決断、その際に心の正しいノアとその家系と動物たちは救おうと、ノアに3階建ての箱船を作るよう命じました。完成後、大雨が降り出し、ノア達は動物を伴い中へ。大雨は40日40夜降り続け大洪水になったというものです。

雨季でもない2月に「ノアの箱船」なのは、大雨が降り出したのが「第2の月の17日」とあるから。加えて最後のくだり「主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた」は、イングランドで第三次ロックダウンを経験する私たちに通じるものがありそう。聖書には大雨が止んだ後、箱船は110日間も水面を漂い続けたと書かれています。水がひき出し、土地が乾くまでさらに何ヶ月もかかり、ノア達が再び地上に出たのは翌年2月27日。箱船ロックダウンは1年以上続きました。入り口が一つしかない船の中、いつ終わるかもわからないまま、それぞれの嫁も含めた家族と、動物まで一緒の軟禁状態。当然、忍耐が必要だったはずです。

聖書の中の登場人物で神から「忍耐」レッスンを受けたのはノアだけではありません。彼の子孫アブラハム、その妻サラ、その孫ヤコブ、その息子ヨセフ、それからモーセ、ヨブ、ダニエル等々。彼等は二進も三進も行かない雪隠攻めの中、忍耐を通し信仰を自分のものにしました。中には望んだものを見ることができなかった者も。それでも彼等は落胆どころか、この世の先にある希望を見つめ喜びました。神に訓練された筋金入りの忍耐、その実は揺るがない信仰です。

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創世記が書かれた時代から約840年後のイスラエル分裂時代、南ユダ王国に神が遣わした預言者ハバククは「神に従う人は信仰によって生きる(ハバクク書2章4節)」と語りました。最近、英国ではコロナ以前をBefore Corona つまり「BC」と呼びますが、「BC」時代の私たちは自分の力に頼り、どこへでも出掛け、自画自賛で暮らしていませんでしたか? 今よりもっと自分の力を信じ、思うままに振舞っていませんでしたか? ハバククはまた言います。「彼らは罪に定められる。自分の力を神としたからだ(ハバクク書1章11節)」と。手足が出ないダルマ・ロックダウン時の今こそ、先人に倣い、襟を正して神と向き合い、自分を委ねる信仰姿勢を身につけるチャンス。それは恵みの日々のはずです。

大水が引き始め、箱船が現在の東トルコ付近にあたるアララト山上に止まった際、ノアは待ちきれない気持ちで窓からカラスを放ちました。けれども、一面の水で羽を休める場がなかったカラスは箱船に舞い戻りました。ノアはまた鳩を3度放ちました。一回目は戻ってきましたが、2回目はオリーブの葉をくわえて帰ってきたそうです。ノアと家族はさぞ喜んだことでしょう。そして3回目、鳩は戻りませんでした。神は「さあ、あなたも、あなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱船から出なさい」と一家を新世界へと誘(いざな)いました。久々の柔らかい土の感触を踏み締めながらノアは簡素な祭壇を築き、神に感謝と喜びを捧げました。ロックダウンが終わった時、わたしたちは何を手にして「箱船」から羽ばたくのでしょうか。

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「わたしたちは知っているのです、苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。希望はわたしたちを欺くことがありません。わたしたちに与えられた聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているからです」―― 新約聖書ローマの信徒への手紙5章3~5節