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<スペシャル対談>モバイル・インターネットキャピタルが語るWizWe資金調達の舞台裏

出会いは10年以上前。ベンチャーキャピタルのモバイル・インターネットキャピタル株式会社様とは、WizWeの前身であるWEIC時代からのお付き合いです。WizWeにはシード期からご出資いただいています。
 
先日発表した資金調達においても追加投資をしていただいたのですが、実はその裏には紆余曲折が……。

 モバイル・インターネットキャピタルの元木 新 氏、木村 賢蔵 氏をお迎えした今回の対談では、長いお付き合いならではの裏話が盛りだくさん。話せる範囲ギリギリまでお届けしたいと思います。

(左から)森谷 幸平、元木 新 氏、木村 賢蔵 氏

・モバイル・インターネットキャピタル株式会社
    チーフインベストメントオフィサー/マネージングパートナー 元木 新 氏
・モバイル・インターネットキャピタル株式会社
     プリンシパル 木村 賢蔵 氏
・株式会社WizWe 代表取締役CEO 森谷幸平


ピッチ登壇につながったMICさんの「適切なタイミングでの適切なご連絡」

木村氏(以下、木村):モバイル・インターネットキャピタル(以下、MIC)は、1999年にできたベンチャーキャピタルです。iモードが始まった年で、インターネットがこれから広がっていくかもしれないという中で、NTTドコモ、みずほ証券、東証マザーズで第1号銘柄として上場したインターネット総合研究所の3社でつくりました。
 
24年経ちますので、どちらかというと老舗のベンチャーキャピタルといわれています。現在、105億円のファンド規模の5号ファンドを運用しており、インターネット、ITに関わる分野で幅広く投資をしています。
 
投資方針としては、領域特化やステージ特化ということはなく、シードからレイターまで幅広く投資させていただいていますし、領域も制限せずに、基本的にはIT、テクノロジーに関わるところであれば幅広く投資しています。
 
森谷:MICさんは、すごくしっかり見ているというか、事業計画も精緻に分析されている印象があります。すごく理系なベンチャーキャピタルだと思っているのですが、結構文系なところに投資されるので、文系的な事業を理系で分析しているような、独自の見る目線を持っている感じがします。実際、MICさん理系多いですよね。
 
木村:そうですね、今のフロントは4人理系、2人文系です。ただ、24年やっているVCですし、財務的なところはどちらかというと見るほうです。他のVCさんがどうなのかは詳しくは知らないのですが、多分デューデリされている側のほうが、どういうデータを求められるとか、そういうことで分かるのかもしれないですね。
 
森谷:分かりますね。すごく丁寧に見られる感じです。
 
木村:細かく、しつこく見られて(笑)
 
森谷:細かくしつこく一個一個切り出して、言語的に定義して、QAするというような。MICさんは、いろいろな方向から見て分析をしている印象がありますね。それから、起業家をきちんとIPOやイグジットまで導いてくださいます。適切なタイミングで、適切なご連絡をいただけますね。

木村:今まで23件の投資先がIPOをしていることもあって、どういうときにどういうことが必要なのかというノウハウは比較的会社にたまっていると思います。

ですから、このタイミングでこれをやっていないとIPOに間に合わないけれどやっていますか?という話をしたり、今後必要になるのでこれをやっていきましょうというような話をさせてもらったりしていますね。

これは老舗ならではの、ゴールをいったん知っているからそこから逆算したときの、やらなくてはいけないことが分かるという、そこはうちの強みかもしれないですね。

森谷:企業からすると、ありがたいですね。インプットが適切なタイミングで来るので。
 
木村:タイミング大事ですよね。それ今やっても意味ないですよね、ちょっと言うのが早くないですか?となってしまうと、起業家さんもなんで今やらないといけないのという信頼関係の話にもなってきますので。

できるだけそこは、本業を邪魔しないように、変な影響を与えないよう、適切なタイミングで、適切なことを言うということを、すごく心掛けていますね。
 
森谷:ヘルスケアのピッチ登壇も、そもそも昨年MICさんから「かんぽ生命 - アフラック Acceleration Program」のピッチ登壇を考えてみては?というご連絡が来たところから始まっています。
 
木村:考えてみてと言っても、検討してみますで止まってしまう会社さんもあります。森谷さんが、きちんとコミットしてやったというのが、今回の資金調達に大きくつながっています。ピッチコンテストでのPR力で事業会社をたくさん引っぱってこられたというのはありますよね。
 
森谷:ICCサミットもMICさんから出たほうがいいと連絡があって。ICCから既に始まっていましたね。出てよかったですね、本当に。ICCの動画が結構見られていますし。

 木村:みんな見ていますね。期待値だけではなく、今までこういうことやってきました、これからこういうことやっていきますということを適切なタイミングで言うのが大事ですし。結果として、今の資金調達難な環境においてはそれが効いた気がします。
 
森谷:効いたと思いますね。基本的にみなさん見ていらっしゃって。1年半ぐらい前から仕込んでいましたが、あのタイミングでMICさんが出てみましょうとおっしゃってくださったのは非常にありがたかったですね。
 
木村:本選に行って結果を残されたのは森谷さんなので。それあってこそだと思います。

「森谷さんは粘り強さをもっているところがいい、諦めない」

元木氏(以下、元木):初めて会ったのは、森谷さんがWEICの取締役だった頃です。取締役会にはいたけれど、そのときは、内山社長の陰に隠れている感じでしたね。本格的に関わり始めたのはSALES BASE(インサイドセールスクラウドサービス)の頃からです。
 
森谷:そうですね。客先を紹介いただいて。
 
元木:そういうところからですね。
 
森谷:その頃はWEICの方針で、語学事業よりも営業事業のほうが主力でした。
 
元木:営業事業を伸ばそうということで、森谷さんがその管掌をしていて、語学事業のほうは片手間で見ていましたよね。
 
森谷:そうですね。語学事業はいったんストップして維持していました。
 
元木:それで、2018年に森谷さんが語学事業をカーブアウトするのですが、立場的には複雑ですよね。あの当時の基本的な考え方としては、WEICも資金繰りがそんなに楽ではなくて、売れるとしたら語学事業。買い手を探していたところ、森谷さんがお金かき集めて自分が買いますと。

それは気概があっていいじゃないかと思いましたね。買ってくれる分WEICの資金繰りがつながるわけなので私たちは助かるわけです。だから、それはそれでいいということですよね。その後すぐに、WEICは上場企業にExitしました。
 
森谷:はい。カーブアウトして1年後です。
 
元木:WEICは、カーブアウトで得たキャッシュを資金繰りに生かしてヒト・コミュニケーションズにExitしたという流れなので。私たちとしてはつなげてもらった森谷さんありがとうですよね。
 
だからと言ってWizWeにすぐ出資というのは難しいわけですよ。私たちはいらないと判断して切り離してキャッシュを得てやっているわけなので、すぐに手伝いをするのはちょっと難しいですよね。
 
そこから、1年半ぐらい経って森谷さんが話をしに来てくれました。それでもすぐには投資してないですよね。1回目来たけれど正しい理由を付けて断らせてもらって。そこからスタートですね、2019年。
 
だから、最初は助けていなくて、最初に助けているのは、オリジネーターさんや個人の買い主ですよね。その後のファイナンスでいうと、私たちではなくても、応じていただける人がいたらそれはありがたいと思ってやっていたのではないでしょうか。私たちは森谷さんに来てもらってすごくうれしいのですが、必ずしも投資できるわけではないので、そのリスクも踏まえていろんなところに当然当たられているはずです。その中でたまたまご縁があったという、そういう経緯だと思います。そんな感じですよね?
 
森谷:いや、伏線は張っていますが、本命はMICさんです。WEICのときにMICさんに投資していただいてから伸びたので。
 
元木:それはいい。それ、使ってください。私たち謙遜しているだけです(笑)

森谷:これは本当にそうで、そのときの伴走がよかったので、MICさんがいいなとずっと思っていましたね。でも最初はお断りがあって。
 
元木:でも食らい付いてきたので。
 
木村:最初が2019年の春ぐらいで、一度お断りしましたが、10月ぐらいのタイミングでもう一回森谷さんが来てくれました。
 
元木:やっぱり粘り強さを持っているなと。すごくいいところではないでしょうか。諦めない。
 
木村: それで、2019年12月に投資しました。シードラウンドの段階では、基本的にWizWeさんは語学研修中心の事業でした。他の領域も可能性はあるよねといいながらも、やはり法人研修の中でどういうふうにポジションをつくっていくのかというところが、WizWeさんの方針でしたし、私たちもそう思っていました。
 
結構大きかったのが、コロナでしたね。コロナ禍でオフラインでの法人研修が難しくなり、いったんへこんで、また戻ってはいったと思いますが、やはり他の領域をもっと開拓していかないと、大きな成長はないのかもしれないという話をしている中で、NOVAさんやレアジョブさんといったスクール型英会話教室の中での可能性というのがおおよそ見え始めたというところもあって、2021年7月に2回目の投資をしました。
 
今回は、さらに裾野を広げて、フィットネス分野やヘルスケア分野での事業成長が期待できると思って投資しましたし、実際に資金調達する中でも、エムスリーさんやサントリーさんといったヘルスケアの大企業と事業連携できる、資本提携できているというところもすごく評価しています。その部分が、私たちの追加投資の後押しにもなったと思っています。
 
シードラウンドの頃も、可能性として、行動変容が語学だけではなく、フィットネス分野やヘルスケア分野など他の領域にもいくだろうという推測はできていて、期待値はあるなとは思っていましたね。
 
元木:最初は語学事業を切り出したところから始まっているけれど、今の事業に通ずるような課題感をずっと持っているというのは、起業家として素晴らしいと思います。そういうところはやはり大切だなと。

起業家として何をなしたいのかが固まると強いですよね。みんなの応援もあってさらに事業がついてくる。そうしたら伸びていきますよね。そのクオリティーが今行こうとしているような感じではないですかね。

「こんなんじゃ駄目だ!」ガツンと喝を入れられ行動量が3倍に

元木:今回の出資に関しては、まず話がしたいということだったので、30分ぐらいICCのロビーで話しましたね。そのときに、なんか少し空気がおかしい感じがありました。森谷さんちょっと頼ってきているな、甘えているなという。もう、出資をしてもらうことが当たり前な感じで来ていたので、それは駄目だろうと。それで話し始めたものの、好転しなかったですね、前に進まない。
 
そのときは、「分かりました、検討しましょう」で終わったのですが、3週間後にオンラインミーティングをしたときには、私たちが出資する前提で話をしているという感じでしたね。
 
木村:ロビーでの会話がちょっとかみ合わなかったのか、こちらは「これから出資することを検討します」という感じだったのですが、森谷さんはどちらかというと、MICはもうリード出資だと捉えたようです。

そこの意識の齟齬で、次のミーティングをセッティングしたときに、ちょっと待ってください、まだ出資するとまでは言っていなくて、そもそも、どういうふうに資金を集めていくのかというシナリオがないと駄目な中で、まだ出資するとは決められませんよねという話をしました。
 
元木:もちろん進んでないわけで、こんなんじゃ駄目だというのをガツンと言って。そうしたら、変わりましたという(笑)

木村:そこから森谷さんすごかったですよね。あっという間にブリッジファイナンス取り付けたり、他の事業会社集めてきたり。そこは本当に森谷さんのコミット力がすごく働いているなと思いました。
 
元木:駄目だってちょっと演出したら動きましたという(笑)そんな感じでしたね。気合が入ってよかったのではないですか?
 
森谷:気合は入りましたね。行動量3倍ぐらい。
 
元木:頑張ってぐっと上がると次のステージが見えるので、そこでまた3倍頑張ってもらって、また次のステージに上がって、日本代表する会社になって。そのステージに上がったら次はグローバルでという、そういうステップ踏んでもらいたいと思っています。

事業に可能性があり過ぎるがゆえのメリット・デメリット


木村:もともと、投資したときも思っていたのですが、人間の行動変容に関わるところをよくしていく、三日坊主をなくしていくというのは、既存のサービスだと、非常にお金をかけてコミットしていくという話でした。そこを、WizWeさんのビジョンに100億人という言葉があるように、誰もが行動変容できるような環境をつくるという、そこのビジョンのところに共感して、投資しましたというのはあります。
 
より一層磨き上げて、100億人にわたるように事業をつくり上げていただきたいなっていうのが、私たちの思いでもあるし、WizWeさんのビジョンでもあるし、社会をよりよくするところ、人類の進歩につながるところなのかなと思っています。
 
改善できるところで言うと、先ほどの話とは逆になりますが、可能性があり過ぎるがゆえに、いろいろな領域に手を伸ばそうとしてしまう傾向がありますよね。特に森谷さん(笑)
 
それはすごく、想像するだけで楽しい世界が待っているなと思いますし、私たちとしても可能性を感じるところではあるのですが、実際、本当にそれでいけるのか、まずは足元でやっているところを伸ばしていかないと、そこは実装できなのではないかというフィードバックも投資家としては思っているところでです。夢見るところと、足元を固めるところ、このバランスをとるというのが、非常に難しいし、どちらも持っていないといけないと思います。
 
特に2回目の投資のときは、まだそこがはっきり見えていなかったこともありました。ですが、森谷さんが、会計士などの資格試験でもいける、他の領域でもいける。いろいろいけるいけるという感じでしたので、選択と集中というのもあるのではないかなと当時思っていましたね。経営会議では常に指摘されていると美河さんもおっしゃっていましたけれど(笑)
 
森谷:ストップザ森谷。

 木村:期待値だけで投資はできないですし、みんなも評価できませんから、期待値と今までの実績という、積み上げていくべきもののバランスが非常に大事かなと思っています。今の森谷さんは、比較的、選択と集中されているのではと思っていますけれども。
 
森谷:話がいろいろ来たりするときに、止めなくてはいけないですね。
 
木村:それだけ可能性のある事業ですし、最終的には100億人を目指していくので、このビジョンは必要だと思いますが、足元も重要ですね。難しいと思いますけれど。でも、うらやましい話だと思いますよ。領域を広げたくても広げられなかったり、ニッチなところを狙ってそこで詰まったりしたときに、次どうするかという打ち手を考えなくてはいけませんが、WizWeさんの幅広い領域に展開が可能というところは強みでもあると思いますしね。いいところでもあるし、悪いところでもあるし。森谷さんの突き進み過ぎてしまうという特性が出ているのかなという気はしていました。

株主の熱量を束ね、一緒の船に乗ってみんなで世界をつくっていってほしい


元木:先日、株主の皆さんに会う機会がありましたが、株主の皆さんの熱量をしっかり束ねて、それで世に出て行ってほしいなと思っています。応援している人たちにWizWeというビークルの中にしっかり乗ってもらって、みんなで世界をつくっていく、そういうことをやってほしいですね。結構できないことなので。
 
森谷:やります。
 
元木:売り上げを上げるのは当たり前だし、成長してほしいのも当たり前なのですが、これから上場したらいろいろな株主が増えると思うので、それでもやはり一緒に同じ船に乗ってやっていく。それを今のうちにしてほしいと思います。そうしたらいい会社になっていくのではないでしょうか。

木村:今回の資金調達は結果的にうまくいったと思いますが、これからが本当に正念場ですよね。いろいろな事業会社さんが入られるので、元木さんが言うように、それを束ねること。
 
お金を集めることができたのは素晴らしいです。ただその後の、実際にシナジー生むところまでは、結構時間かかるなという印象を持っています。現場のところで落として、そこで実際打ち合わせをして実装していくとなると、事業会社の中でのWizWeの温度感を高くしておかないとなかなか進まないですよね。これから森谷さんは、先方の温度感を高めていくという作業をしないといけないと思っています。
 
今回いろいろな事業会社さんが入ったので、それを同時並行的に進めていくということがすごく大変だと思いつつも、それが一番の可能性でもあると思うので、その部分を積極的に頑張っていかないといけないと思いますね。
 
でも、これだけ事業会社さんが集まれば、期待ばかりなので。あとはそれをどれだけ形にして、成長につなげていくかというところですね。私たちとしても陰ながらサポートしたいですし、頑張ってもらいたいと思います。
 
森谷:やっぱりMICさんいいですよね。シードからずっと一緒にやっていますけれど、非常にコミュニケーションのスタイルが好きです。必要なポイントでコミュニケーションがあって、すぐに全てを理解されて、曖昧なところを全部クリアにされてしまうのですが、そこがすごくいいなと思いますね。ですから、MICさんの伴走のもと、社会課題解決をガンとできるようなグロースを実現します。頑張ります。