【小説】冬の魔術師と草原竜の秘宝 ⑰
第17話 狼煙
「お前たち、よく聞いておきなさい」
父は最後の出撃の前、二人の兄弟を前にして言った。
一家のテントの中。炉の前であぐらを掻いた姿は、いつも通りだった。出撃前とは思えないほど、まじめで穏やかだった。まだ集落の男としての訓練をはじめる前。母が腐れ谷の深部に飲み込まれて以来、二人に寝物語をしてくれたそのままの顔だった。
父は横に置いてあった杖を手にして、それぞれじっくりと二人に見せた。先端に石がはめ込まれた杖だ。代々の首領だけが受け継いできた杖。
「この