【小説】冬の魔術師と草原竜の秘宝 ①
第1話:最果て迷宮の日常
どこまでも続く雪の世界。
しんと静まりかえった、常冬の世界。
そこは、最果てと呼ばれていた。
生き物の気配さえ感じられなかった。雪を振り払うように、うなだれた木々から積もった雪が落ちていくだけ。
いまは穏やかな沈黙に満ちた世界にただひとつ、灯りのついた屋敷が建っていた。
最果ての館、最果ての迷宮、迷宮館――館はそう呼ばれていた。なにしろそこは世界の歪みが寄り集まり、次元の裂け目となったものが、見知らぬ廊下や扉となって、異世界と繋がるのだ