光る課題

カレンダーには「8/31」。壁にかかった時計は七時十五分を指していた。机の上にはワーク
シートや冊子が散らばっている。
遠山、課題中。
白波、スマホをいじっている。
黒崎、雑誌を読んでいる。

遠山「終わらねー! どうすりゃいいんだよ、この量」
白波「もう諦めたら?」
遠山「そしたら、あの先公にたっぷり絞られるじゃねぇか」

白波、ため息を吐く。
黒崎、読んでいる雑誌から目を離さずに話しかける。

黒崎「これまで何してたの?」
遠山「親戚がやってる海の家でバイト。そこで出来た金で、カラオケ、ボウリング、ツーリング、花火」
黒崎「そのツケだね。諦めよう」
遠山「だーかーらっ、諦めたら怒らんだよ。ッたく、そうじゃなかったら、こんなもんサボりまくってやったのに」

遠山、頬杖を突き外を見る。風鈴が小さく音を鳴らす。

遠山「もう夏も終わりか」
黒崎「夏の終わりにやり残したこと。プール」
白波「あー、昆虫採集」
遠山「お前ら子供かよ」
白波「じゃあ、そういうアンタは何かあんのかよ」

白波、むすっとした声で投げかける。

遠山「いいか。ウチぐらいになるとな、夏休みにしてないことの方が珍しいんだよ」
白波「はー、そりゃ流石なことで」
遠山「もっと褒めろ」

黒崎、雑誌のページをめくる。そして、思い出したように口を開ける。
黒崎「そういえば、花火もしてないな」
遠山「花火……」

遠山、黒崎に近づく。そして、雑誌を一緒に眺める。

遠山「やっべ、思い出した。そうだそうだ。手持ちの花火はこの夏、一回もやってない」
白波「アンタ、さっきバイトの金で花火やったって言ってただろ」
遠山「打ち上げる方は爺ちゃんに手伝ってもらってやったんだよ」
白波「それで満足だろ」
遠山「あれとこれは違うもんだろ。あー、体がうずく」
白波「それよりも課題やらなきゃいけないだろ」

黒崎、ここで何か思いついたような顔をする。

黒崎「もしかしたら、どうにかなるかもよ」


河川敷にて、三人が花火の準備をしている

遠山「安くなっててよかったな」
白波「ホントにいいのかよ、あんなことやって」
遠山「いいんだよ。これなら、誰にも怒られない」

遠山、ろうそくに火をつける。

遠山「それじゃあ、行くぞ」

遠山、ろうそくの火に花火を近づける。火が付いた花火を、宿題の近くに持っていく。

遠山「ホントに燃えてるぞ! ざまぁ見ろ、あの野郎!」

遠山、他の花火にも火をつける。

白波、黒崎に耳打ちする。

白波「なぁ、あんなことやって大丈夫なのかよ」
黒崎「さぁ」
白波「さぁって、アンタが言い出したことじゃないか」
黒崎「そうだね。でも、最終的に決定して決行しているのは龍星だから」
白波「タチ悪ィな」
黒崎「でも、白波も止めないんだろ」
白波「そりゃ、楽しいからな」

黒崎、白波、同時に悪い笑顔を浮かべる。

遠山「おーい、お前らもこっちで楽しもうぜ」

黒崎、白波、前を見る。

黒崎「じゃあ、私たちも楽しむとしますか」
白波「線香花火、短かったらアイス奢りな」
黒崎「いいね。ハーゲンダッツの季節限定が気になってたところなんだ」
白波「お手柔らかに頼む」



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