見出し画像

#3『キング』昭和三年六月号から読み解く大正末期・昭和初期ごろの語彙

古文でも現代語でもない。その特性ゆえ独特の風情と芳しさを醸し出してくれる近代語。それにかぶれるための一つの教科書として『キング』を眺めていく。

●基本事項(前回のコピペ)


・基本的に文法は近現代的な熟語に付随して古典文法に則った動詞化とその活用が行われる。

・漢字の送り仮名が少なく、漢字に対し多く読みがある場合が多い。

※現代語に相当するものは逐語訳ではなくニュアンス的に現代語に当てはまると私が考えるもの。ただの逐語訳だと実際に現代の実際の口語表現、文語表現ともにそぐわないと感じたため。なお必要なものは逐語訳を近代語の方に乗せる
※頻出かつダブるものは最初に取り上げ、それ以降は省略する
※表現を取り上げる際は「このフレーズ、近代だとどう言うのかな?」という疑問に答えるため先に現代語を載せ、後ろに近代語を載せる
※表現を取り上げる際は現代語、近代語ともに現代の漢字を用い、カッコつきで異体字verを載せる。仮名遣いは現代は現代仮名遣い、近代は歴史的仮名遣いを用いる
※異体字を取り上げる際は先に現代語のちに異体字を載せる
※表現、異体字ともに現代でも使うであろうものでも普及していないものは注目して取り扱う

追記
※動詞・形容詞を取り上げる際は終止形に適宜直してから表記する(基準は私が気持ち悪いと思うかそうでないか)
※ここまで厳格に書いてるように見えるが実際は適当に書いている。わずかな違いしかない異体字に関しては取り扱わないこともある。

・凡例    △異体字  ・表現  ★そのページを検査したときの感想、補足


写真付き

●広告欄 pp5〜6 夫人倶楽部六月号の広告

△倶楽部→倶樂部
△記→(IMEに存在しない ごんべんに巳)
△判→(IMEに存在しない へんの縦棒を左にはらう)
△説→說
△重→𫟯
△秘訣→祕訣
△産→產
△経験→經驗
△医→醫
△妊婦→姙婦
△芸→藝 今でも使っているとこもある
△電気→電氣
△立証→立證
△為→爲
△軽→輕
△娘→(IMEにない 「良」と同じタイプ)

△児→兒
△点→點 重要な異体字!
△恋→戀 これすごい
△画→畫
△巡礼→順禮

・面白い+踊り字
・こうした→斯うした
・作る→拵える(今でも使う人は使うか)
・有名人諸氏→著名数氏
・秘伝→秘傅 この「伝」の漢字はよく出てくるので覚えておきたい
・打ち明け話、独白、暴露→懺悔話
・あり合わせ→あり切れ(とくに呉服用の布のことを指しているとみられる)

★この広告でも体験のニュアンスの単語が「実験」として登場している
★広告欄では珍しく写真が使われている。
★この広告の、「面白い面白い」だとか前回の「驚いた驚いた」とか感嘆詞の繰り返しを読者の評判だと紹介するのが当時の広告のテンプレートの一つだということが立証できるかもしれない。
★この広告の講談社の『婦人倶楽部』だが1920年から戦後まで発刊されていた歴史ある雑誌となるが、残念ながら1988年に休刊してしまっている。


となりのシェークスピアは気にせず

●広告欄 p9 大日本国民中学会



△光栄→光
△二十→廿
△顕著→顯著
△安い→廉い
会費が廉い←ぱっと見読めない

・教育→教授 教授は指導、授業、教育という風に広義的に多用されていたのだろうか。
・今回→今般 重要語彙だと思う

・天皇の恩が大きい→優渥(なり)
新漢語林によると「天子の恩沢や詔勅がねんごろで手厚いこと。」らしい。天子は日本だと天皇にあたる。 こんな言葉知らなかった。

・天皇の恩→皇恩
・感涙→感泣
・「本会は会長始め職員一同この優渥なる皇恩に感泣して…」
臣民が天子に仕えるという近代日本独特の世界観を表す一文。ここから隔世の念を感じなくもない。
・〜について→に就いて
・成功が確実→成功が確い(かたい)

★帝国中学会の競合か。こちらは藍綬褒章を授かっているのでこちらのシェアの方が高いのだろうか。
★本会の特徴
一、基礎が固い  ふむ
二、信用が厚い  いいね
三、学制が正しい そうか
四、内容が新しい    ほう
五、講師が偉い  …

  講師が偉い


●終わりに

結構大変になってきた。三日坊主必至

おまけで気に入った語彙を日常生活で使ってみるとどうなるか考えてみる

・「あしたは弁当を拵えてこようかな」
・「あいつの懺悔話にはもうあきあきしたよ」
・「古本屋だと岩波文庫が廉いなぁ」






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?