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【 あちらの人のいたずら 】


  ここは大町界隈にあるカクテルバー「Reiko」です。

  いやぁ~ 大変な目にあったものですね、雅夫くんも……

 

 

光治:やっぱ普段の行いに問題があるんじゃないのか、雅夫。

 

香織:そんなこと言って、雅夫くんがかわいそうでしょ。ねぇ教授。

 

南田:ははは、そうだね。きっとおじいさんが、ちょっとイタズラしたんだろ。

 

雅夫:えっ! そんなことあるんですか?

 

南田:よくあることらしいよ、そっちの方に詳しい人の話だとね。

 

光治:オレもそんな話、聞いたことありますよ。少し懲らしめてやろうとか、ちょっと面白そうだからイタズラしてやろうとか。


香織:それだったら私も経験ありますよ。

 

  と言って話しはじめた香織さんの経験とは?

 

香織:今は無いと思うんだけど、十年くらい前だったかな~ 七夕に老舗のデパートで「お化け屋敷」やってたんですよ。

 

その頃付き合いはじめたばかりの彼氏と面白半分に行ったんですけど、思った通りの子供だましでぜんぜんつまんないんですね。

 

「これじゃ隙を作って抱きつくこともできないよ~」

 

 なんて思いながら、最後までもう少しってところで、ものすごくリアルなお婆さんが、小さな部屋に入っていたんです。そう50cmくらいの正方形の箱の中に座っていたんです……

 

 私、それだけはビックリして、彼氏の腕に思いっきりしがみついていたら、「ほらお嬢ちゃん、これあげるからそんなに驚かないで」って、昔の駄菓子の「あめ玉」くれたんです。

 

 それも私が大好物だったイチゴ味の赤いあめ玉を…… 私が恐る恐る受け取ると、お婆さんはニコッっと笑っていたんですね。

 

 怖くて怖くて、すぐに外に出た私たちは、バイトのお兄さんに今あった話をしたんですが、「そんな場所は作っていない」って言われたんですよ。

 

「そんなはずない、ここにもらったあめ玉もあります」って、私が言うと「それじゃ一緒にもう一度入りますか。どうせ他にお客さんいないから、一緒に行きましょう」って言われて、出口から逆に入ったんです。

 

光治:それでいたの?お婆さん?

 

香織:それが、いなかったんですよ…… っていうか、その場所さえなくて…… 

 

 最後のオバケさんに「ちょっとごめんね、おじゃまするね」って、そのお兄さんが声かけて、「どうしたの、なにか落とし物?」なんてオバケさんが聞いてきて、そこはちょっと面白かったけど。

 

  私たちがお婆さんに会った場所は、最後のオバケさんの前だったのに、そこには最後から一つ前のオバケさんがいて、私は彼氏と「そんなはずはない」って言ったきり、言葉もでなかったんです。

 

 しばらくしてから、霊感の鋭い友だちにこの話したら「あ、それ、香織のおばあちゃんじゃないの?時々いたずらっ子する人たちいるから」って、軽く言われたんですよ。

 

南田:ね、そんなに怖がらなくてもいい時もあるのさ。その後はなにも起きていないんだろう。

 

雅夫:まぁ、何事もなかったですし、今もなにも起きてないけど……

 

 雅夫くんは今一つ、納得してないようですね。

 

 この話はあくまでも「こういうこともある」ということですよ。あれら「得たいの知れない物たち」は、その行動も得たいが知れないものですから、決してこちらからイタズラを仕掛けるようなことはしないことです。

 


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