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日本神話を元にモノノ怪-唐傘-を考える【モノノ怪考察】



「モノノ怪」というのはお馴染みの妖怪がテーマとして描かれるため、実際の妖怪の伝承を元に見ていくと、新たな発見があったりします。

今回の映画モノノ怪では、御水様への人々の信仰が描かれており、「神様」という存在を強く感じる作品となっていました。

モノノ怪-唐傘-を読み解くため「日本神話」について調べてみると、いろいろな説が浮かび上がってきたのでご紹介したいと思います。




モノノ怪を象徴する三人の神



まずはこの三人の神様を軸に、今回の映画を考えてみます。

・太陽の神、天照大神(アマテラス)
・月の神、月読尊(ツクヨミ)
・海の神、須佐之男命(スサノオ)

創作物のモデルとなることも多いので、名前は知ってるという人も多いでしょう。

今回の映画、「三柱鳥居」やら「井戸内の三本の柱」やら「三部作」やら、なにかと”3”が多いなと思いませんでしたか?

この三人の神様は「三貴子」や「三柱」と呼ばれており、確実に今回の物語のモデルとなっていることがわかりました。



エンドロールの謎



次回作を匂わせる多くの謎が残されたエンドロール

大奥の井戸内に存在する謎の祠と三本の柱が周りに並ぶ様子が映し出される怪しげなエンディング映像が流れました。

薬売りが唐傘を斬った後、エンディングで赤の柱に繋がる綱が切れている様子が映し出されました。

この描写から、赤の柱=唐傘であることがわかりますね。


また、三部作であることが発表され、三本の柱がそれぞれ三体のモノノ怪を示しているということが判明しました。


柱に描かれた神様



祠を取り囲むこの三本の柱には、それぞれ三人の神様が描かれていました。

日本神話の知識がある人は、この三人の神を見て咄嗟に「三貴子」を思い浮かべたのではないでしょうか。

アマテラス
傘を持ち、今作「唐傘」を象徴した赤い柱。
着物や髪形がアマテラスに見える。性別がどちらにも見えて難しい。

ツクヨミ
木槌と扇子を持っている。緑の柱。
身に纏った羽衣や穏やかな表情がツクヨミっぽいが、女性に見えるのが悩ましいところ。(ツクヨミは男神)

スサノオ
剣を持っている。剣は天叢雲剣?
逆立つ髪と勇ましい表情が荒々しく、かなりスサノオに近い。

こんな感じで、三本の柱がそれぞれ三人の神に見えます。

これを元に考えると、いろいろな説が思い浮かびました。


次回作はスサノオの伝承がモデル



アマテラスの柱=唐傘であるという話をしました。
つまり残る二本があとの二作と紐づいていることになりますね。

第二作目となる次回作、情報として「火鼠」が題材であることが明かされています。
では残る二人の神のうちどちらが火鼠にあたるのでしょうか。

公式Xより


火鼠はツクヨミ?スサノオ?



火鼠という妖怪について調べてもあまり有力な情報が少ないのですが、最も関連深いお話と言えばやはり「竹取物語」ではないでしょうか。

竹取物語の中に、火鼠の出てくる場面があります。

「唐土にある、火鼠の裘かはごろもを給へ。」

竹取物語(國民文庫)より


そしてこの竹取物語のかぐや姫、ツクヨミと同一人物という説があります。
ツクヨミは男神とされているので、子孫という説も。

いずれにせよツクヨミは月の神ですから、かぐや姫と関連深いのも頷けますね。


ということで次回作「火鼠」は、ツクヨミを題材に作られるのではないでしょうか。

火鼠にせよツクヨミにせよ、一般的な伝承の少ない題材だと思うのですが、どうお話が広がっていくかが楽しみです。



火鼠ツクヨミ説をここまで書き進めたところで、この説を覆す恐ろしい情報を発見いたしました。

劇場版モノノ怪の特報映像の一カットです。

公式YouTubeより

今作では唐傘が描かれていた襖には、複数の蛇の頭と二人の男女の画が。


そしてスサノオに関して有名な伝承「ヤマタノオロチ伝説」というものがあります。

スサノオが、ヤマタノオロチに食べられそうな娘(クシナダヒメ)を見つけ、その娘との結婚を条件にヤマタノオロチを退治するという物語です。


完全にスサノオの伝承を表していますね。

スサノオのヤマタノオロチ伝説が題材となることは断言できるでしょう。

スサノオらしき男の着物にはネズミの柄。
火鼠を連想させますが、「火鼠」というタイトルでありながら敵は「蛇」というのが今回の唐傘と合わないのでどうにも引っ掛かります。
あるいは三作目なのか?


映画のストーリーと神話を比較



三貴子にまつわる神話には、モノノ怪-唐傘-の物語と似ている点がいくつかありましたので解説します。

スサノオの神話とカメの櫛



三貴子の弟スサノオはたいへん暴れん坊でして、高天原(神の地)を追放されてしまう程でした。

このお話、お暇を出されて大奥を去るカメと似ていると思いませんか。

大奥に似た女の園である吉原遊郭を「桃源郷」と例えることがありますから、大奥を「高天原」に当てはめるのは感覚的にしっくりくる気がします。


また、スサノオは高天原を去る際、その行いの禊として髭を切られてしまいます。
そう、髪を切られてしまったカメと全く同じですね。


先程ご紹介したスサノオの「ヤマタノオロチ伝説」。

この物語の中でスサノオは、神の力で娘を櫛の姿に変えるという場面があります。

ヤマタノオロチ退治の前にクシナダヒメを守るため、神力で爪櫛の姿に変えて髪にさします。

日本の神様 種類と一覧 より


映画のラスト、カメの髪には櫛がささっていましたね。

アサの胸元にはカメが大切にしていた櫛があり、二人が櫛を贈り合ったことがわかるシーンでした。

カメの頭上で「大切な人、アサの代わりだと思って」と言わんばかりに美しく輝く櫛。
まるで大切な人を櫛に変えて身に着けたスサノオのようです。


アマテラスの神話と北川



そもそも北川様&同期女中とアサ&カメが境遇が似ている存在として描かれているので、
先程の「高天原を追放される」=「大奥で暇を出される」という点に関しては、カメと同様に同期女中さんにも当てはまります。


また、アマテラスとスサノオには「岩戸伝説」という有名な伝承があります。

昔、天照大神が、弟の素戔鳴尊の乱暴を怒って天の岩屋へお入りになってしまわれました。

戸隠神社HP「戸隠の神話」より

スサノオの行いに困ったアマテラスが、岩屋に閉じこもって隠れてしまったのがこの「岩戸伝説」というお話です。

このお話、同期女中の扱いに困って暇を出したのちに、自身が部屋から出られなくなってしまったという北川様の境遇を思わせますね。

上記二点を考えると、アマテラスが「北川」スサノオが「同期女中」に当てはめられています。


そして気になったのがもう一つ。

作中で出てくる北川様の大切なお人形。
左目になにか模様があるんです。

女中たちや壁画の両目に唐傘の模様が浮かぶ描写が度々ありますが、この人形だけが左目には唐傘が宿らなかったのをよく覚えています。

そして、アマテラスに関するこんな伝承。

アマテラスは紹介した通りイザナギから生まれた神ですが、この時イザナギの左目から産まれたと言われています。

これは何か関係がありそうですね…。


溝呂木は神を知っている?



出番の少なさに反して多くの謎を残していった謎の男・溝呂木。
彼は御水様の信仰の司祭であり、井戸の中に広がる謎の空間に出入りしていました。

そんな御水様や謎の祠について何か知っていそうな彼ですが、こんな台詞があります。

「水は美味いか?アマ…いや、御水様。」

どうやら神に対して語り掛けているようでしたが、「アマ…」と何かを言いかけて呼び直します。

これ「アマテラス」と言いかけたのではないでしょうか。

つまりアマテラス=御水様

作中では御水様を神様として崇めているので、ない話ではありませんが。


ですが、「三部作と三貴子が連携している」という先程の説に基づくと、次回作では御水様とはまた違う「神と崇められるもの」が出てくることになります。

そうなると御水様は大奥内での神的存在のため、別の神が出てくるなら次回作の舞台は大奥じゃない?
いやでも大奥や大奥のキャラに残る謎もまだまだ多いし…うーん…


井戸内の壁画



大奥の井戸内には、意味深な壁画も多くありました。 

その中でも目に留まったのがこちら。
どう見てもスサノオに見えてしまうんですね…。


そしてスサノオの対面に位置する壁に描かれているのはこちら。

背景に描かれた複数体の細長い生物。最初はカマスか何かの魚に見えたんですが、別カットで胴体が繋がってるのが見えまして。
じゃあヤマタノオロチじゃん…となりスサノオ説がより強固に。


そして井戸全体に大きく描かれるのは鱗が特徴的な細長い生物。
わかりやすくっぽいですよね。

井戸内の壁に他の神らしき絵はなかったので、三貴子の柱が祀られるうち、なぜその一人スサノオだけが描かれているのか…?と不思議だったのですが。

次回作スサノオ説で貼った特報映像のスサノオとヤマタノオロチが描かれた襖の絵。
あの映像自体は二年前に公開されたのですが、「動画公開当初は襖の絵が唐傘だった」という意見を目にしまして…

つまり、「次回作を匂わせる絵に差し変わる」ということがあるなれば、次回作では壁画が描き変わるという可能性もあるのではないかと思いました。


二作目がヤマタノオロチならば、二作目で三作目のモノノ怪をモチーフとした壁画に代わるとか…?

いやでも次回作火鼠じゃないのかよ…意味わかんないよ…
と、これについて考え出すと謎でがんじがらめです。




情報の少ない次回作以降はまだまだ考察の余地がありますが、今回紹介した「三貴子」を元にしているという説に関しては確信を持って断言してしまっていいのではないでしょうか。

一緒に書こうと思っていた「伊邪那岐」「伊邪那美」という二人の神様もいたのですが、長くなってしまったのでまた別の記事で書きます。

お読みいただきありがとうございました。

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