「本当にかっこいい人」2

モーリスは一杯目の水割りを飲み終え、キッチンに行き、二杯目を作り、奥にある換気扇のスイッチを入れ、煙草に火をつけた
「そういえば、こんな話もあったのう」
それは三島由紀夫と遠藤周作の対談だった
昔のことゆえ、それを映像で見たのか本で読んだのか、今や覚えていない
ええかっこしいの三島が言う
「なぜ君は、いつもとぼけた調子なんだい?」
「いや、僕が聞きたいよ 君のようにいつもかっこつけてると、疲れないかい?」
と遠藤は言った
モーリスは煙草をふかしながら、
「わしは、遠藤タイプかのう〜」
と言った
とはいえ、モーリスは三島を否定しているわけではなかった
武士は食わねど高楊枝、ではないが、人それぞれに矜持やプライドがある
また、キムタクは大変だ
パブリックイメージを守るために、四六時中ええかっこをしなくてはならない
さぞしんどいことであろう
いや、本人はそうでもないかもしれないが、俺には無理だな、とモーリスは思った
「ジョンライドンは見事にパブリックイメージをぶち壊したのう
大したもんじゃ」
モーリスは誰もいないリビングでそう言い、人の値打ちとはなんじゃろか、と水割りを飲みつつ、ひとり思いを馳せていた

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