「本当にかっこいい人」3


「人の値打ちは精神じゃ、心の状態で決まる」
モーリスはそう言って、三杯目の焼酎ロックを一口飲み、心の中で続けた
人は変わらない、というが、それは間違いだ
人は様々なことを機縁として、ころころ変わる
周りの環境によって、考え方すらも、良くも悪くも変わる
変わりにくいのは、その人が生来持っている、心のクセ、のようなものだ
これをどう表現すればいいのか分からないが、いわばこびりついた傾向性、というべきか
この傾向性を突き破るのは難しく、多くの人はその呪縛の中で生きている
呪縛の外側に素晴らしいものがあったとしても、理解できないのだ
いや、不思議なことに、呪縛にかかっていることさえ認識できないのだ
そしてその枠の中で生き、死んでいく
「この傾向性とやらは、なかなか変えれんのう、わしも人のことは言えんが」
そう言って、ひとり笑った
モーリスは友人、知人に恵まれてはいたが、世間を見渡すと、つまらぬ人間が多いな、と少し辟易していた
「仕事や人種がどうあれ、自分のことしか考えぬ奴はつまらん
ならず者国家の専制主義者よ、お前らが一番かっこ悪いんじゃ」
モーリスは四杯目の水割りを作ってから、煙草の煙を肺に深く吸い込んだ

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