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2022 総合ベストアルバム


こんにちは。タコペディアです。
2022でようやくセブンティーン。
音楽だけじゃなく色んな作品に触れて価値観ぶん殴られたこの一年。
自分の中にある焦燥もポップもアンビエンスも全部引きつれて音楽を聞けたのはTwitterやインスタで皆さんがまだ知らない音楽を紹介してくれたからだと思います。ほんとにありがとうございました。
高校生の頃に聞いた音楽というのは人格形成にひどく影響するらしいのでそんなことも思いながら見ていただけると面白いかもしれません。
上半期はこちらから。



20 Alvvays『Blue Rev』

ザ・スミスのキラキラしたギターポップのあの感覚であったり、Chapterhouseを初めて聞いた時の「あ、これは一目惚れする」とわかった瞬間なんかが詰まっている宝箱のようなアルバム。ペインズほどローファイチックな訳でもなく、かといって複雑すぎるわけでもない。あらゆるインディー音楽を吸収してシューゲイズ的コーティングを施して世に認められるポップな音楽を作る姿勢は邦楽だと羊文学などに通ずるのではないでしょうか?
コード感、メロディラインが衝撃的だった一曲目を再生した瞬間から虜になっちゃいました。
音楽シーン的な意味でも何かが変わる気がするアルバムです

19 JYOCHO『しあわせになるから、なろうよ』

旧譜よりはるかに「うた」としての強度が上がったJYOCHO。マスロックの幽玄さや儚さを連れてるのにJ-POPさながらのポップさがあって、それでも歌詞では「みんなが共感する」ではなくてもっと個人に注目している孤独さを表現している音楽で、その姿は今までのJYOCHOと変わらずそういうアウトサイダーにとって安心する要素もあります。音楽を聴く上でこういうキラキラ感は大切にしたいです。

18 宮内優里「Beta」

ほんとにずっと聞いてられるようなアルバムですよね...。2000年代後半あたりに台頭してたscholeレーベルあたりのあの絶妙なゆるさが宮内優里のフィルターを通したアップデートをされてさらに日常に浸透してます。何かと殺伐としたこの時代だからこそこういうアルバムもっと増えてほしいという祈りも込めてTop20に入れました。

17 kabanagu『ほぼゆめ』

kabanaguの『ほぼゆめ』には勇気が詰まってる。トラックメイカーとして一躍名を馳せたkabanaguはもはやその域を抜け出したようで、このアルバムも弾き語りのような一曲目「しくみ」から始まります。そこからはネットカルチャーの音楽とボカロルーツのような邦ロックが融合していきます。時折入る素っ頓狂な音に最初は「フフッ」となってましたが聞けば聞くほど苦し紛れのユーモアのように感じて、それと対照的な切実な歌声に普通のSSWよりも息苦しくなるほどの切実さが伝わってきます。もしボカロが台頭してて、邦ロックに憧れを抱きもがいてた、”あの頃“を思い出したければ是非このアルバムをどうぞ。

16 ドレスコーズ「戀愛大全』

このアルバムは新生ドレスコーズと言っても過言ではないのでしょうか?ロック、クラシックなどのジャンルの域を超えた2019年の「ジャズ」、メロディックでローテンポなコロナ禍への祈りのような2021年の「バイエル」
そして今作は、今までの作風と大きく変わって(ドレスコーズにおいてはアルバムを出すたびいつも大きく変わるが)ネオアコ、80sギターポップに接近したサウンドで一夏の儚い恋を描いています。MVにもなっている「聖者」ではこれまでにないほど軽快でオールドな質感で個人的にどストライクでした。そして本人も言及してる通り志磨遼平がコロナ禍から弾き始めたというシンセサイザーの煌めきがこのアルバムに彩りをもたらしています。
今までと違っていい意味で肩肘の張らないアルバムであり、バンド感のある曲やグラムロックぽさにはマリーズの頃を思い出すので多くの人に聞いてほしいです。

15 Predawn『The Gaze』

Sparklehorseやボサノヴァなど幅広い形態のポップスに影響を受けたPredawn。まさにその影響が現れていて、UKオルタナのポップ具合、そして個人的にはLily Chou-Chouを思い出したりもしました。あのディストピア感よりはもっとあったかくほのかに見せられる翳りには美しさを感じます。放課後、教室で「New Life」を聞いたという経験があるんですけどあれはもうやばかったですね。その後、pavementの「Spit on a stranger」も聞きました。

14 Absinthe Father『Moving Forward』

このアルバムはちょっと衝撃的でした。今年出たエモのアルバムは一通り聞いたんですけど、それらとはちょっと毛色が違って、エモにしては音作りがLo-fi寄りでTFCのように感じるし、はたまたSnail Mailのような新生USロックのくくりなのかと言われたらそれも違う気がするような…
アルバムもシームレスに続くような構成が主で、3曲目「Pedestal」水中に居るようなドリーミーな音響の曲、10曲目「Ender」のMommaなどに共鳴するようなカラッとしたインディーロックまで、まさにこのジャケットのように水中と陸を行き来してるようにも思えます。アルバムの長さ的にも心地いいです。

13 ムーンライダーズ『It's the moooonriders』

ムーンライダーズの過去作を聞けば聞くほどこのアルバムがどれほどポップに楽しげに作られてるかわかってきたように思います。『青空百景』の感じでは全然ないですし、『Tokyo 7』ほどメロディの良いバンド感があるわけじゃない...。「老齢ロックの夜明け」にして、今までにはないポップネスを抱えたアルバムを出すことがほんとに信じられないです。
最近は白井さんの曲にハマってて「駄々こね桜、覚醒」は80年代のアイドルソングかというくらいにメロディはキャッチーなのに(コーレスぽいのもあるし)

絶対周りは優しくない 絶対こちらをよく視てる
抜け出したい 抜け出せない 出来ればいいな それしかないよね

駄々こね桜、覚醒

こんな歌詞を歌ってて、しかもそれは前時代的でもなく、どの世代にも響くような純文学のような趣があって、ムーンライダーズが愛されてる理由がよくわかるように思います。

12 Whatever The Weather『Whatever The Whether』

今年出たエレクトロニカアルバムの中では1番です。曲のタイトルはそれぞれ「摂氏」を表していて、その順番はごちゃごちゃで曲を追うごとに様々な季節が溶け合っていき、まさにジャケットのような幻想的な世界に誘われます。コンパクトなのに没入感のある「6℃」→叩き起こされるようなビートが冒頭から響く「4℃」→シガーロスを思い出すような歌メロの「30℃」の流れが個人的には1番好きです。

11 岡田拓郎『Betsu No Jikan』

森は生きているというバンドのフロントマンでもあった岡田拓郎、そのバンドの2ndアルバム「グッドナイト」は歴史に残るような名盤で、日本ならではのはっぴいえんどの要素とホワイトアルバム的とも言えるようなオールドな質感をつぎはぎにして郷愁に似た別のものを生み出すという岡田拓郎のこれまでになかったロック観がインディー音楽界を風靡しました。
そのつぎはぎ感を追い求めていたようにも見えた岡田拓郎さんでしたが今回は一味違う… というか新しい境地を開いたように思います。ジムオルークのようでもあるんですけど、ポストロックというよりはジャズ。でもそのジャズよりも耳を惹きつけるのはアンビエント、自然音の不思議な音響。様々な要素が前述したような岡田拓郎のロック観に落とし込められ、懐かしいのにどこかわからない景色が映し出せれていて、大好物でした。初め聞いた時はちょっと戸惑いましたが今ではよくリピートしてます。

10 さよならポニーテール『夜の出来事』

さよならポニーテールの約1年ぶりの新譜。前作『銀河』で見られたさよポニ印のポップスは少し鳴りを潜めて、まさにタイトルの通りちょっとアダルティなR&Bと不思議になるくらいの青春さが上手く共存している大ポップアルバムです。(計33分というコンパクトさも最高)
何年か後に、Lampのような形でバズる形が見えるような気がします。だってさよポニほど色々吸収してテクニカルに昇華する音楽集団なんて他に居ないもの...。
あと、さよポニの作曲者の1人で、今回のアルバムの核でもある342PさんがTwitterでアルバム収録曲の解説をしているので気になった方は是非そちらも見てほしいです。

9 Mydreamfever『Rough and Beautiful Place』

Mydreamfever、それは2021年、シューゲイザー界に突如現れたノスタルジーの鬼、parannoulの別名義である。
上半期のnoteでも言ったのですがparannoulのモラトリアムなメロディ感であったり、アンビエントというには過多すぎるノスタルジーな「青さ」が目立ちます。それは今まであるようでなかった、高木正勝やHenning Schmidet、haruka  nakamuraが見せてくれた物憂げなのに躍動を感じるあの音楽のもう一つの姿と言えると思います。
彼はその暴力的なまでの「青さ」でいつだって僕らの(存在しないかもしれない)だいじで繊細な記憶を呼び覚ましてくれます。その感覚に陥ることから何度も逃げようとしますが、気づけば僕らは田園風景に、放課後の教室に、氏神さまの裏にポツンと立っているのです。そして目の先に映るのは廃墟か、少女か、それとも在りし日の自分自身か。是非聞いて確かめてください。

8 田中ヤコブ『IN NEUTRAL』


大正義、田中ヤコブさんの新譜。前作よりもっと歌モノに寄っていて、もはやTFC、Todd Rungrenなどのレジェンドたちとも肩を並べると思ってます。曽我部恵一さんがTFCを「たまに届く手紙のような音楽」と形容してましたが、まさにそんな感じなのです。虚無感、切なさは通底してるけど、文句言いながらでもちょっとだけ前を向こうという姿勢はいつでも味方してくれます。ポップスっていうのはそうあるべきなんじゃないかと田中ヤコブを聞いてると思います。

かけがえのある僕が今を生きている

今は今を生きるとき

7 Florist『Florist』

アンビエント的な要素、Big Thiefよりは幾分か土臭さのないフォーク、曲間に入る小物、19曲で58分
日常的に聞くアルバムとしての完成度が高すぎる。こういうアルバムのことを構成美のアルバムというのではないでしょうか?
雨の日なんかに一日中かけてたいです。

6 Alex G『God Save the Animals』

Alex Gは名前はよく聞いたことあるけどよくわからないアーティストというイメージで「In Love」などを聞いて奇を衒いすぎたSSWかなと思ってたのですが、まさかこんなにメロディアスだとは思ってなくてこのアルバム聞いた時びっくりしました。それでもヘンテコな部分も多いので、まさにオルタナティブ・エリオットスミスという言葉が似合うかなって思ってます。でも懐古的かと言われたらそうではなく「Cross the Sea」電子音と無機質なビートに乗せる感じはヒップホップをちらつかせ、「Immunity」のメロはオシャレ洋服屋で流れてるようないわゆる洋楽のエッセンスを感じます。現代のSSW作品の中でも間違いなくトップクラスの作品です。

5 スカート『SONGS』

スカートのポップスはとどまるところを知らない。今回のアルバムは驚異の13曲中10曲タイアップ付きでその風格は9曲中7曲シングルカットされた小沢健二の『LIFE』を思い出します。
とはいうものの『LIFE』とは違って、一曲一曲が短く、祝祭というには程遠い仄暗さの付き纏うポップス集でまさに『SONGS』と言った感じです。
でもこれまでのスカートとは一味違って、前作『トワイライト』が漫画のような音楽の極地だとすれば、今作は澤部氏の好む漫画を15分程度の映像作品に昇華させたような音楽です。強引に言い換えると、本のようにわざわざ手に取らずとも、いい意味でザッピングできるテレビのような受動的で流動的なスタイルになっていると思います。
それでも澤部氏のどこか引っかかる部分がどの曲にも存在していて、例えば「海岸線再訪」は3分しかない短い曲だが、初期の頃から続いている短いながらの複雑な曲構成であったり「打つ手はなし!」と言い切るやるせなさがあって相変わらずのスカート印があって安心するし、「十月(いちおう捨てるけどとっておく)」や「粗悪な月あかり」の間奏は今までのスカートにあまり見られなかったアプローチが施されていて、それもスカートの「うた」の切なさをより強調する良いエッセンスになっていると思います。より一層生活に馴染むようになったスカート、皆さんにも是非聞いてほしいです。

4 Laura day romance『roman candles 憧憬蝋燭』

ジャケット部門では1位です。最高

映画のような音楽、ヤングアダルト小説のような音楽。それを体現して邦楽シーンで最高峰のインディロックを作り続ける二つのバンドがHomecomingsとLaura day romanceだと思っています(最近、対バンもしてた)。2021、Homecomingsが発表した『Moving Days』はストリングスやソウルの要素を取り込んでいて、彼らがルーツとする映画音楽も取り込んだようで新境地を開拓した大傑作を生み出しました。Laura day romanceも今回のアルバムで新境地を開きました。ブラックミュージックのような要素を取り込んだというわけではないのですが、インディーロックが2022で1番極められたアルバムなのではと思います。というのもいわゆる90sのLo-fiシーンらしいコーラスワークは健在なのですが、「なんでそこでそんな音入れたの?てかその音どうやって出してるの?」という部分が随所に散りばめられているのにグッドメロディで一筋縄で行かない感じがまさにインディー音楽だなと思ってしみじみしちゃいます。
物悲しい季節、つまりこれからの季節にぴったりです。こういう音楽が1番自分に合うなと思い出させてくれた素敵なアルバムです。


3 羊文学『Our hope』

「私たちの希望」、羊文学。
その希望というものは画一化が進んでいるような邦楽シーンにシューゲイズやオルタナの要素を持った羊文学が台頭したという意味でも、メインストリームから外れた思春期の感覚、アウトサイダー感を歌っていくれてるという意味でも羊文学の音楽は勇気と希望をくれるのだと思います。
特に「OOPARTS」という曲はイントロからこれまでになかった「FUTURAMA」の頃のスーパーカーを思い出させるようなピコピコ音とドローンから始まって、これまでの羊文学に見られた独特コーラスワーク、シューゲイズ的な間奏、その上でモエカさんの歌う「今ならばまだ間に合うのに 誰か聞いて、ただ、生きたいの」という雄弁な演説とは程遠い等身大で切実な叫びは自分の中で革命でした。
このアルバムは愛を歌う歌でも生活のことを歌う歌でもどこかに「死」、「終わり」を見据えてるように思います。でもそれは決してコロナ禍だからという理由ではなさそうで、2022がどんな時代であれ必然的に歌われてると思います。羊文学の3枚目のフルアルバムだからこそ歌われたのだと信じてます。このバンドをリアルタイムで追っかけられることが最高に幸せです。

2 Big Thief『Dragon New Werm Mountain I Believe In You』

やっぱり「シングルマン」に似てますよねこのジャケ。いつぞやに「ぼっちざろっく」のパロディジャケを見たような気がするんですけどもし誰か持ってたら送って欲しいです。

このアルバムはほんと今の季節(12月)にほんとに似合いますね。上に貼ってある上半期の記事で「あー早く冬来い」って言いましたけどちゃんと冬来ました。幸い川縁を歩く機会が多く、その度にこのアルバムを聞いてました。
どの曲から再生しても、どんな景色にでもマッチしてBig Thiefのキャリアでは異色なこのアルバムが今後のインディーロックのスタンダート、クラシックになるんじゃないかと思ってワクワクしてました。「あぁ。これが伝説を垣間見るということか。」という感慨にふけながらこのアルバムを聞いてます。
今年、2019に再結成したナンバーガールが解散しましたが、彼らと同じような音楽性なのかなと時折思っていて、ライブも威風堂々としてて、レジェンドの風格があるのに、奏でる音楽はどこか切なくて無常さを感じるというところに共通点を見出したりしてます。大好きなアルバムです。

1 七尾旅人『Long Voyage』

このアルバムに関しては、丸々記事を作ってるのでそちらを...。世相を反映している音楽のはずなのに、セッションが生み出す人の温かさと七尾旅人さんの吟遊詩人のような語り方はドキュメンタリ、ノンフィクションというより小説のようなものを見ている気分になります。自分の見えない世界への想像力を掻き立てられるアルバムはこの2022に必要だったと心から感じます。




いかがでしたか?スカートやサニーデイ・サービス、LampなどポップなミュージシャンやSun Kil MoonやBon Iverのようなインディーフォークが自分の中でトレンドだったので、落ち着いてるのにポップで、でも捻くれたようなアルバムが選ばれたように思います。
何はともあれ、ここまで読んでくださりありがとうございます!!
Corneliusやカネコアヤノ、Yo La Tengoが新譜を控えてる2023がすでに楽しみです。

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