日本人とオオカミ信仰

こんにちは。山犬です。皆さんは『狼』という漢字はご存知かと思いますが、この漢字に疑問を持った方は少ないと思います。

狼に対するイメージは、千差万別ですが、怖い、獰猛、危険な動物、人に危害を与える動物等、人間に害を成すイメージが多くあるでしょう。確かに、山では食物連鎖の頂点に立つ動物の一種です。しかし、『狼』という漢字は、『犭』に『良』と書いて『狼』です。 では、『オオカミ』が良い獣と書いて『狼』と呼ばれるのには理由があります。

昔から農業を中心としてきた日本ですが、畑を生業とする山あいの農村部では、猪や鹿による食害に悩まされていました。狼は、その害獣である猪や鹿を獲物として狩る動物です。その為、農村部では狼は益獣だったのです。畑の害獣を退治する良い獣、それが『狼』なのです。

こうしてオオカミは、山神様の神使・御眷属(使い)であったり『大神』として、日本各地に信仰を深めていきました。

より正確には、「大口真神（おおぐちのまかみ）」と書き、この言葉は万葉集の時代からも見られる古くからの呼び名とされています。

オオカミを信仰する人々は、「オオカミは人を襲わない」と口をそろえていいます。

オオカミは「温和」な動物であり、むしろ田畑を荒らし回る猪や鹿を取り締まってくれる頼もしい警察組織のような存在だというのです。

そうは言えど、オオカミが人を襲った実例がないわけではありません。

人間がある一線を踏み越えた時、たとえ温和なオオカミとて人間に容赦することはないのです。

我々現代人は、「オオカミは人を襲う」と常識的に思っています。

しかし、歴史を知る人から言わせると、それは西洋の常識なのだといいます。江戸の日本に黒船が現れて以降の、新しい常識だというのです。

たとえ人を襲うことがあっても、古来の日本人は一貫して、オオカミを邪視したことはなかったのだともいわれています。

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