今週の一首②~毎日お題より~

こんちには。前回に引き続きまた今週の一首について好き勝手書いていこうと思います。よろしくお願いいたします。
それよりお前最近どうなんだ、ですか?そうですね、曹洞宗の僧侶、ネルケ無方さんの姿勢があまりにも美しいので真似して背筋を伸ばして生活しています。とてもいいです。世界が違って見えます。気持ちは前向きになるし腰痛も治るし昇進するし宝くじも当たるしガールフレンドも五人できました。今日は彼女たちと札束風呂でシャンパンを傾ける予定です。丁寧な生活なんて意外と簡単ですね。ふはは。きっと私はそのうち刺されるでしょう。


黒柴が金木犀を背につけてほのかに香る小さな銀河 / 水川怜

10月13日 お題「金木犀」で投稿された一首。金木犀の特性を上手く活かし、さらに「見立てる」ことにより下句で歌に大きな広がりが生まれていると思います。

主体が飼っている黒柴が散歩の途中に金木犀で戯れたのでしょうか。背中に花弁を沢山つけて木の下からひょっこり帰ってくる。そして再び歩き出すと、金木犀の香りが主体の方に漂ってくる。黒柴の背中に目を落とすとなんだか銀河に見える(しかもほんのりいい香りさえする)。というように、当たり前の日常の中にある小さなおかしみ、発見を短歌として非常に上手く昇華していると思います。その昇華の核をなしているものは前述した「見立て」でしょう。

この歌では黒毛の柴犬の背中にオレンジ色の花弁が沢山散ったところを銀河に見立てています。なんて素敵な飛躍でしょうか。金木犀に星や暖かい灯火を重ねたことはあっても、黒柴の背中に宇宙を重ねたことが今まであったでしょうか。黒毛の背中に宇宙を重ねたことにより、歌の持つ世界観が暖かさと芳香を伴ってぐっと広がります。

黒毛の背中と宇宙、金木犀の花弁と星々、この飛躍は見立ての一つの醍醐味としてあると思います。俳句的な二物衝撃の手法でも飛躍はできますが、見立ての場合「うわ、確かに!上手い!素敵!」といった感情を読み手から引き出しやすいです。もちろんそれだけでは詩情を完成させることはできませんが、この歌の場合はそれこそ金木犀の芳香のように豊かな詩情がふわっと広がります。

見立ての上手い歌人さんは沢山いらっしゃいますが、うたの日を主戦場とする私の公式ライバルである小泉キオさんはその代表格と言っていいと思います。もうどの歌をとってもぐぬぬ、、、と呻きたくなるほど上手いです。

思い出をやさしく畳んで母がまた箪笥につくる家族の地層  /  小泉キオ

あああああ何これ上手すぎない?おやじ!ビールもう一杯!とやけ酒したくなるほどです(実際は下戸なのでコップ一杯も呑めない)。

短歌の技法の一つとしてこの見立てを修得すれば大きな飛躍ができること請け合いです。ただ、これがなかなか難しいんですよねえ、、、まぁでも姿勢を正して生活してればいつかマスターできるかもしれません。あ、彼女たちが呼んでるのでお風呂いってきます。それではまた。




グサッッ!!ぐああああ、、、(浴槽にゆっくりと血が広がりエンドロール)

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