今週の一首④~毎日お題より~

こんにちは。またまた今週の一首について性懲りもなく書いていきたいと思います。今日金曜でしょ?なんでそんなギリギリなの?とお思いのあなた。あなたは正しい。もう一ミリの反論の余地なく正しい。しかし、仕方がなかったのです。月曜から急に眉毛が太くなる奇病にかかり、近所のマッドサイエンティストが一人でやっている診療所に逆AGA治療を受けに行っていたのです。これがもう筆舌に尽くしがたいほど大変で、サンプルだとか言って血液は抜かれるわ口の中の細胞は取られまくるわステロイドで筋肉増強されるわサイエンティストの娘の脳は移植されるわとにかく今ここで筆をとっている斎藤君は以前の斎藤君ではなくなってしまったのです。オ、トウ、サ、ン、、アイ、、シテ、、、ル、、、


わたくしが震えています順番を待つ飼い犬の震えを抱いて / 梅鶏

十月二十四日のお題「ふるえ」で投稿された一首。動物病院の待合室のソファーで震える犬をしっかりと抱きしめている主体が浮かびます。

この歌の魅力はその景のユニークさもさることながら「言わなくてもわかることは言わない」という所にあると思います。歌を一読した瞬間、皆さんの頭の中に動物病院の待合室が浮かんだと思います。しかし、よく見てください、どこに「動物病院」や、「待合室」なんて言葉が使われているでしょうか。この歌は「動物病院」、「待合室」という長い音数の言葉を節約することにより、別の言葉で歌を洗練させることに成功しているのです。

順番待ち、震える飼い犬、とくれば大体は予防接種でしょう。このように、共通認識がある程度皆に浸透していれば、言葉は節約できます。むしろ共通認識に言及した場合、冗長になる、と言ってしまっていいかもしれません。この「言わなくてもわかることは言わない」というのは俳句では基本の知識です。俳句は短歌よりも文字数がさらにシビアなので、短歌よりもその辺は徹底されているのです。この歌はそれをしっかりと遵守しており、歌自体のフォルム(読んだときの印象)がとてもスリムで格好いいと思います。

、、、まぁでもその共通認識の浸透具合を読み間違えると大怪我するんですが。読み手をどこまで信用するか問題ですね。これについてはまたどこかで書いてみたいと思います。

果たして主体の震えは単に飼い犬からの振動を受けているだけなのか、はたまた飼い犬の心の影響を受けて主体自身も心配で震えてしまっているのか。想像するのがとても楽しいです(私は愛犬家なので特に楽しい)。この味わいは先述した言葉の節約の結果もたらされたことは明白でしょう。

ただ、私自身もそうですが「言わなくてもわかることは言わない」というのは気をつけていてもやりがちです。状況をどうやって説明にせず、読み手に伝えるか。これはとても大事なクセに非常にデリケートで難しい課題なのです。殆どすべての歌にこの課題が課されていると言っていいでしょう(一部例外あり)。説明に堕した瞬間、歌の味わいは一気に劣化します。これが普通にできる歌人さんは本当にすごいと思います。

ちなみに冒頭に書いた内科でステロイドを勧められたのはマジな話です。でも保険適用外で月に数万するらしいので諦めました。金があったら?やるね、俺は。

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