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にこにこ手袋

木の葉が、だんだん赤や黄色になり、ちいちゃんの住んでいる町に秋風が吹き始めました。
秋が終わると冬、ちいちゃんは、おばあちゃんに、赤と水色の手袋を編んでもらいました。
右手は赤、左手は水色。

ある日の事、そんなに寒くはなかったけれど
ちいちゃんは、どうしても手袋をはめて
公園に行きたくなりました。

少し歩いて行くと、友達のゆずちゃんに会いました。
「あれ〜!ちいちゃん、その手袋、可愛いね」

ほめられたちいちゃんは嬉しくなりました。

そして
ゆずちゃんも一緒に公園に行くことになりました。

ブランコ、すべり台、鬼ごっこ

たくさん遊んでいたら夕方、帰る時間になりました。

家に帰ったちいちゃんは
靴を脱ごうとして「あれ?」と思いました。
手袋!

『走って暑くなって、上着のポケットに入れた…』

ポケットに手を入れると赤い手袋しかありません。

「ママ〜!水色の手袋ない」

「ないの!ない!な〜い!」

ちいちゃんの大声にびっくりして
ママが来ました。

「わかった、わかったよ。でも、今日はもう暗いから、明日の朝、一緒に探しに行こうね。きっとあるから。」とママが言いました。

ちいちゃんは、しばらく泣いていましたが

大好きな、お兄ちゃんのはる君が

「きっと見つかる。大丈夫」と何度も言ってくれたので泣き止みました。

その頃
暗くなった公園に、ごそごそ、もそもそ
近くの山から、動物の子ども達が、集まって来ました。

夏は、この時間も花火をする声でにぎやかだったけど
今は、とても静か、めったに人間は来ないのです。

そこで
遊びに来たのです。

「あれ!いいもの拾った。何だこれ!」

こぐまが、ちいちゃんの水色の手袋を拾いました。

鼻にくっつけて匂いをかいでます。

美味しい匂いはしないけど
何だかあたたかい。

「いいもの、拾った」と、こぐまが大きな声で言ったので

動物たちが集まって来ました。

こりすが言いました。

「それ、さっき見たよ。女の子が、にこにこして手にはめてた。」

「ふーん、そうなんだね。これはめたら
にこにこしたくなるんだ。」と
こだぬきが言った途端に

「にこにこしたくなるもの、さわりたい

さわりたーい!」と大騒ぎになりました。

すると、こぎつねが
「これ、落とした子、泣いてるかも」

と言ったので、みんなは、黙ってしまいました。

「誰のか。、わからないよ」と、こぐまが言うと、

こりすが
「たしか、ちいちゃんって呼ばれてたよ」と言いました。

こねこが、張り切って
前に出て
「ちいちゃんの家、私知ってる」と言いました。

でも、どうやって
届けたら良いのでしょう。

みんなは、困ってしまいました。

しばらくして
こぐまが言いました。
「あのさ、きつねちゃん、たぬきちゃん
この前みたく、人間になってみてくれない?」

こぎつねと、こだぬきは、顔を見合わせました。

みんなの前で一回してみた事は
あるけれど
長い時間、人間でいる事が、まだ出来ないからです。

二匹は悲しい顔になりました。
そして、それをみんなに言いました。

「困ったね」
「泣いてるかな」

みんなで、もう一度考えたけれど
思いつきません。

しばらくして

「わかった!」こぎつねと、こだぬきが
同時に言いました。

こぎつねが頭に葉っぱをのせて「エイ!」

中学生のお姉さんに

こだぬきも頭に葉っぱをのせて「エイ!」

小学生の男の子になりました。

二匹いえ
二人は、こねこと一緒にちいちゃんの家に行きました。

「ピンポーン」
ちいちゃんの家のチャイムを押すと

「はーい」
ちいちゃんのママが出て来たので

「あの、これ」と言って男の子が手袋を差し出しました。

ママは
「あ、家のちいちゃんのだわ。届けてくれてありがとう、ちいちゃーん!」
と、ちいちゃんを呼びました。

バタバタと走って赤い目のちいちゃんが来ました。

「わぁー!ちいの手袋だ。ありがとう」
ちいちゃんは、大喜びです。

上手に化けたこぎつねと
こだぬきも
にこにこしていましたが

急にお尻が、もぞもぞして来ました。

しっぽが出そうになったのです。

押さえながら

「じゃ、夕ご飯の時間になるから帰ります。さようなら」と
女の子が早口で言いました。

「僕も帰ります。さようなら」と男の子が言って

あっという間に
帰ってしまいました。

あんまり、急だったので
ちいちゃんとママは、閉まったドアに
「さようなら」と言う事になりました。

お礼に、りんごを渡したかったママは
困ってしまいました。

急いでりんごを袋に入れて外に出ました。


二人の姿は見えません。

そうです。

二人は二匹に戻りました。

動物たちは、きっと心配してるでしょう。

二匹は、にこにこしながら
しっぽをふりふり

すごい速さで走って行きました。

きれいなお月さまが
やさしく二匹を見ていました。

おしまい。

ほぼ2000文字あります。
読んで頂き、ありがとうございます。

[補足します]

実は、かなり前に
新美南吉さんの作品「てぶくろを買いに」
という物語から、イメージする創作物語
の公募がありました。

ボツになった作品です。

技術不足のため、詳しい作品紹介が出来ません。
ご理解下さい。












アレルギーっ子が主人公の絵本を出版し、それを全国の園児や低学年のお友達に読み聞かせをしたいという夢があります。頂いたサポートは、それに使わせて頂きたいと思います。よろしくお願いします。