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「いい子だから、大きくなんなよ」〜熊とじいちゃんの物語⑤


さて、毎日、毎日、じいちゃんは、子熊の毛のカットを続けた。

シェイバーでもやってみた。
硬い毛には、無駄だった。

どんどん大きく、熊らしくなって行く。

セントバーナードくらいになってしまった。

「どうしたもんかな〜」

考えていたある日

じいちゃんがTVをつけると、熊が立ち上がりボールをパンチしていた。

サーカス団の熊だった。

じいちゃんは、嬉しくなった。

何か特別な事が出来たら

熊は殺されない。

うちの熊も
何か出来たら良いんだな!

トイレだって覚えた。

食べ物をくれて、毎日洗ってくれる
じいちゃんを襲うことはない。

たぶん、じいちゃんを母さんだと思っている。

言葉だってわかってる。

じいちゃんの、熊、守り計画の始まりだ!

まず庭の木に
ビーチボールをぶら下げた。

一緒に外に出て、繋がってる熊に

「見とけよ〜」と言ってパンチを始めた。

パンチと言っても
ひょろひょろ

何とか形は、ボクシング。

熊は、何だかわからなかった。

じいちゃんが時々、転びそうになりながら
でも
ニコニコしながらパンチをしているのを

楽しそうで、面白いと思った。

でも
じいちゃんは、熊には
させてくれない。

自分だけ、1分くらいすると、止めた。

来る日も
来る日も

熊には、させてくれない。

じいちゃんの
ひょろひょろパンチが上手くなって行った。
ちょっとだけ、カッコいい。

熊も、したくなった。

ある日、熊は、じいちゃんと外に出ると
急いでビーチボールに近づき、立って触ってみた。

ポン

ポン

ポーンと勢いよく触ったら

顔にぶつかった。

熊は、びっくりして

座りこんだ。

じいちゃんが

「やりたいのか?そうか、そうか」と言って

靴下で作ったグローブをはめてやった。

熊は立ち上がり
じいちゃんが、やっていたように
パンチをしては
尻もちをついた。

何度も何度も
尻もちをつく。

じいちゃんの頭の中に

「成功!」が浮かんだ。

じいちゃんは
子熊を見ながら
ニコニコと笑っていた。

つづく

アレルギーっ子が主人公の絵本を出版し、それを全国の園児や低学年のお友達に読み聞かせをしたいという夢があります。頂いたサポートは、それに使わせて頂きたいと思います。よろしくお願いします。