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Crescente(クレッシェンテ)

学問の都ボローニャでは、なんと不可思議言葉を使うことか!

床に敷くタッペーティ(絨毯)のことを「パンニ(衣服)」と呼び、
ワインを入れるフィアスキ(フィアスコ瓶)、フィアスケッティ(小さめのフィアスコ瓶)を、「ズッケ(かぼちゃ)」、「ズッケッティ(小かぼちゃ)」と呼ぶ。

アニメッレ(胸腺)は「ラッティ(乳)」となる。ピアンジェレ(泣く)という代わりに「ジガーレ(キーキー声を上げる)」と言い、不健康・不細工で鬱陶しい女性を、普通ならカリア(ひ弱い人)とかスカルモア(つまらない人)というところだが、「サゴマ(変わり者)」と呼ぶ。

食堂へ行けば、タルトゥフォ(トリュフ)ならぬ「トリフォラ」、ビステカ(ビーフステーキ)ではなくフィレンツェ風「コスタータ(ロース)」などなど、犬まで錯乱するような言葉が並ぶ。


荷馬車または二輪馬車のレースの意味の「バッテリエ(バッテリー)」という言葉を発案したのもここだと思うし、市電の走る工程を指して「ゾーナ(ゾーン)」と言ったのもここである。

はじめて「クレシェンテ(三日月)」という名を聞いた時は、
月の話をしているのかと思った。ところが、
これはスキャッチャータあるいはフォカッチャのことだった。
つまりは、誰もが知る、そして誰もが作れる生地のフリットである。

唯一の違いといえば、ボローニャの人は、生地をより柔らかく消化しやすくするために、
小麦粉を冷水と塩でこねるときにラードを少々を加えるという点である。

スキャッチャータは、煮立った油脂に入れてあげるが、フライパンをひからおろして入れたほうがふくらむようである。

ボローニャ人は活動的で勤勉、しかも親切で愛想がよい。男性とも女性とも率直な会話をするのを好み、気持ちよく話す。私が考えるにmこの率直な会話こそ、一民族の真の教育であり嗜みであろう。性質がまったく異なる街の住民のする会話はこうはいかない。

ボッカッチョは、その物語の一つで、ボローニャの女性について語り、こう感嘆する。「ああ、ボローニャの血のなんたる優しさ!このような(恋愛の)出来事にあって、あなたはつねに立派だった。涙にもため息にも心を動かされない。だが、いつでも頼みには耳を傾け、愛の情熱は聞き入れてくれる。」

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