父のくちぶり
80歳の父の花見は
赤いステッキついてて
桜の
花びら
見上げるのだけども
本当は
桜の花の
きれいな色よりも
やせっぽちの父が
風につれて行かれそうで
怖くて
心細いから
後ろ向いてても
父を
みる
チャーチルみたいにカッコよく杖をつくぞ
そう言ったけど
父さん
きっと
チャップリンと間違えてたね
それに
チャップリンは杖を
振り回しているよ
俺が杖をつくなんて
痩せっぽっちになっても
父のくちぶりは
健在だった
父の
いない
はじめての
桜の季節
うすい黄緑色の風が吹いて
父はでも
そこ
ここに
いて