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浮気(サラリーマン転期12)

夜の東京タワーは想像以上に威力があった!

地上に降りた頃には、知美はもう完全に東京の虜になっていた。

写真は撮らないと言っていたのはどの口なのか、バシャバシャと撮りまくっていた。

僕:「銀座どうしよっか、結構遅くなってしもたな」

知美:「うん、でもちょっと行ってみたい」

僕:「了解、ほな、いこか!」

僕はそういうと銀座へ車を走らせた。

実は、銀座に行けば店なんていくらでもあると鷹を括って目星も何もつけていなかった。

銀座に到着し、取り敢えず適当な場所で駐車場に車を停めた。
近くのおでん屋さんを見つけ、少し気温も低く軽く食べるにはちょうどいい。

僕:「ここにしよっか」
知美:「うん」

暖簾をくぐると、4、5人掛けのカウンターと4人掛けのテーブル席が1つ。

他に、客はいない。ここも貸切か!悪くない!

不倫中の中年二人が食べる銀座のおでんの味は、どんな隠し味より僕の味覚を刺激する。

店主との会話もなんとなく弾む。

僕:「ここのおでんは、関西風ですか?」

店主:「そうなんです!親方が関西で修行していて、その時の味なんですよ」

銀座で関西風に出くわすとは思わなかったが、それもまあいいか、定番の具材からあまり馴染みのない具材まで、色々あった。

僕:「お酒、のむ?」
知美:「うん、少しのもうかな。」
知美は、梅酒のロックを頼んだ。


こんな時、男は少し酔っ払った彼女を想像し、下心を燻らせるものだが、残念ながら、彼女は、お酒がめっぽう強く、酔ったところを見たことがない。

知美:「めっちゃ美味しい!こんなおでん食べたことないわ。ねえねえ、夜景めっちゃ綺麗やったね!かなりテンション上がった。カミ君っていつもいいところ連れてってくれるよね!」「彼っていつも家でゴロゴロするか、出掛けてもイオンやで!ありえへんやろ!カミ 君と付き合ってたらいつも楽しかったんやろなー。東京タワーもめっちゃ良かったし、また行きたい。」

相変わらずの可愛らしさで、僕の心を鷲掴みする。

叶わないと分かっていても嬉しくて今にも、一線を越えそうになる自分がいる。

1時間も経っていないだろうか、僕は明日の事も考えてそろそろ出ようかと彼女に伝えた。

知美:「うん、そろそろいこか。明日もあるしね。」

お会計を済ませ駐車場へ向かうついでにせっかく銀座まで来たので少し寄り道することにした。

ネオン街を歩くと、夜のお店から高給取りな感じのサラリーマンや、何して稼いでいるんだろうと思うような派手な出立の男たちがホステスに見送られながら店を後にする。
自分には無縁の世界だ。
世界のほんの一握りの勝ち組しか味わえない世界。

僕:「そういえば、知美、何年か前にホステスになりたいって言ってなかったっけ?」
知美:「そうそう!憧れた時あったわ。でも、今思うと仕事が辛くて、ただそこから逃げたかっただけやと思う。」
知美も成長してるんだなと、感じる。親心みたいなもんか。

少しだけ夜の銀座を散歩し、駐車場に到着。
料金はやはり銀座だけあって1時間で3千円もした。
おでんも、普通の居酒屋の3倍はしただろうか。

銀座!私にはやはりハードルが高かったか。おでんでノックアウトされそうになった。
なかなか初日から財布にダメージを喰った。

ホテルは、豊洲にあるビジネスホテルを予約した。

そこまでの移動も今回の目玉、首都高速湾岸線のレインボーブリッジは港区の高層ビルが立ち並び、それは世界でも有数の夜景スポットである。

この夜景を見ながらホテルへと向かう予定であったが、23時も過ぎるとほとんど消灯しており夜景の威力はいつもより半減していた。

少し、残念ではあるが、東京タワーで満足してくれていたからよしとするか。

ホテルについて受付を済ませる。

ホテルは想像以上に綺麗で、僕の株もまた上がったなと確信した。

部屋は、残念ながら別々だ。

知美:「部屋は別々にしてね。一緒はやっぱりイヤだ。」
とのことでした。

とは、いうものの、シャワーを浴びた後には僕の部屋に来て少しの間、会話を楽しんだ。

知美の彼氏は、女性経験が少なく、真性包茎で夜の営みがほとんどできてないらしい。
しかも、実家暮らしで貯金は結構あるはずなのにケチで頑固らしい。

夜の営みなら僕が代わりにいくらでもしてあげるのに・・
夜な夜な一人、寂しく想い耽っているのだろうと思うと、少しムラムラしてしまった。

ほとんどが、知美の彼の愚痴ではあるが、そんな話ができる友達は流石に、あまりいないようだ。

女性は話をちゃんと聞いてくれる人に好意を持つと昔買った恋愛攻略本に書いてあったのだ。

知美の話は、深夜まで続いた。

僕は、コンビニで買った豚キムチとワインを呑みながら、知美の話を親身に聞き続けた。





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