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銀色のスライドプレイヤー3話


入部と再会と

JAZZ研究会へ入部を申し出た晴人。
見学に行った次の日には、校舎で遭遇した未来に入部届を渡され
後は記入して提出するだけとなった。

校舎で一人考える

今日は中山と授業を受けていたのだが、晴人は一コマ残っていたので
別れて一人講義を受けていた。
講義終わりの校舎を歩きながら考え事をしている。

(そういえば一年生って今どれだけ集まってるんだろ?この前の
に見学行った様子だとあんまりいなさそうだな・・・)

前回見学に行った時は晴人を合わせて三人。先輩たちの人数を考えると
随分寂しい人数だ。

(別に人見知りはしないけど、さすがに少ないのもな。入部するって言っても
活動に参加するのはまだまだ先になるから、まだ見学も行くし誰か誘えそう
だったら誘ってみようかな・・・。)

晴人がこう思うのにも理由がある。
入学してから中学や高校の頃の顔見知りを何人か見かけているからだ。
誰に声を掛けるか・・・。そんな事を思っていると。

「ん?あれは・・・」

クセの強い髪、穏やかそうな顔つきに晴人よりも身長が十センチ高く
体格がガッシリとした青年が視界に入ってくる。

「おーい!ハッシー!」

もしかしてと思う前に声が出た。
呼びかけられた青年はその声に気づき振り返る。

「イッチー!?てか、学校一緒だったのか!」

晴人の事をイッチーと呼んでいるこの青年の名は
橋本 雄平(はしもと ゆうへい)
晴人の高校の頃の同期だ。

再会

橋本 雄平かつて晴人と同じ高校の卒業生である。
高校一年生の頃に体育や美術などの三クラス合同授業で一緒になっていたことがきっかけで仲良くなった。
二年生まではクラスが近いこともあり、交流があったのだが、三年生の受験シーズンになるとお互い忙しくて疎遠になっていた。

「イッチー生きてたか!もう会うことないと思ったよ!」
「勝手に死んだことにしないでよ。ちゃんと生きてるって!」
「いやさ、なんか色々大変みたいだって噂で聞いてたからさ。」
「色々ね。まぁ過去の話だから気にすることでもないよ。それよりチョット話さない?授業終わりでしょ?」

晴人は雄平に提案すると、雄平も用事はないからということで、二人は一旦ゆっくり話せる場所を探しに駅前へ行く。
駅前には個人経営の喫茶店や少し歩けばカレー専門店などの学生向けの店が多い。時間が夕方ということもあり、ファーストフード店へ向かう。

「イッチーと話すのも久しぶりだよね?最後に話したのって高二の終わり頃
じゃなかったっけ?」
「そうだねぇ。高三の頃は受験でお互いに顔合わせることなかったもんね。
この時間まで授業やってるってことはもしかして、ハッシーって教育学部?」

晴人の通う大学にはいくつもの学部があるが、最終コマのまで講義は少なく大半が教育学部かスポーツ研究学部の授業だった。そうでなくても、晴人は
雄平が高校の頃から教師になりたいと言っていたのを覚えていたので予想がついたのだ。

「相変わらず鋭いね。俺が高校の頃、教師になりたいって言ってたの覚えてた?それとも遅くまで講義をやってるのってウチとスポーツ学部くらいしかないって思ったから?」
「どっちもかな。それよりどうよ?大学生活は?」

晴人と雄平は顔を合わせる事がなかった間の高校のこと、入学したばかりの大学の事について、話に花を咲かせていた。そのながれで晴人はジャズ研の事雄平に話すことに。

「なるほどね。それでJAZZ研究会に入部するんだ。で、俺を勧誘している・・・と。
「別に勧誘ってわけじゃないけどさ、ハッシー、ギターやってたし興味ないかなと思って」

雄平は高校の頃、軽音楽部に所属しておりギターをやっていた。晴人が
JAZZ研の話をしたのはそういった背景もあった。

「わかった。俺も軽音サークルとか見てたんだけどイマイチ合う感じが
しなくてさ。これも何かの縁だし、俺も見学行ってみるよ。」
「わかった。見学日が月・水・金って話だから、ハッシーの予定が合う日に
一緒に行こうか。」

二人はスケジュールを確認し見学へ行く日を決める。思ったより時間が経過していたようで外は暗くなっているので、二人は帰ることにした。

「ハッシー。ありがとね。楽しかったよ。」
「いや、こっも楽しかったよ。まさかイッチーと再開するなんて思わなかったからさ。そういえば忘れてたんだけどJAZZ研究会といえば・・・」

雄平はカバンのポケットから半分に折りたたまれたB5の紙を取り出し
晴人に見せる。

「なになに・・・。JAZZ研究会新歓ライブ。ってこれ明日の昼休みじゃん。」
「あれ?イッチー知らなかったの?まぁ俺もチラシ貰わなきゃ知らなかったけどね。なんかキャンパスプラザで配ってたよ。」
「全く気づかなかったな。というか先輩からも聞いてないや。言うの忘れてたんだろうけど・・・。」

やれやれと思いながら晴人はチラシに目を通す。
『JAZZ研究会新歓ライブ!4月28日昼休みキャンパスプラザ!』
色鉛筆で書かれた絵に大きくライブの日時が書いてある簡単な内容だ。
下の方を見ると曲目が書かれている。

『Night Flight』
『What Am I Here For』
『Strike Up The Band』
『Dinner With Friends』
『Dancing Men』

「イッチー、わかる曲ある?」
「わかんない。『Night Flight』って曲は見学で聴いたけど。」
「なるほどねぇ。まぁ明日見に行ってみりゃわるか。」
「そうだね。とりあえず明日の昼休みに行ってみるかな。」

そうしてファーストフード店を後にした二人は駅で別れた。
別れた後、晴人は未来にメールを送る。

『未来さん、明日の昼休みライブやるらしいですね』

ピロン
すぐに携帯が鳴る。未来からの返信だ。

『ゴメン!忘れてた(ToT)来てね!』

やっぱりか。
今日二回目のやれやれを感じ晴人は帰路に着くのであった。

あとがき

銀色のスライドプレイヤー3話をご拝読いただきありがとございます。
今回はビッグバンドの曲名が数曲出てきました。
ビッグバンドの曲をご存知でない方は聞き覚えのない曲名だとは思うのですが、この中で聞き覚えがある方も多いのではないかという曲があります。
『Dinner With Friends』
こちらは「人志松本のすべらない話」のオープニングで使用されていた曲です。
曲自体は1950年代〜60年代の曲なのですが、現代になってもテレビのBGMとして使われているのは感慨深いですね。
実はこうしてテレビで使われているビッグバンドの曲は他にもあります。
物語内でも登場するのでその内紹介できたらと。
今回物語に登場した曲目はJAZZもBigbandも知らない方でも聞きやすい曲なのでご興味のあるかたは聴いてみるのもお勧めです!

次回もご拝読頂ければ幸いです!
よろしくお願いいたします!





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